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8話 王都学園一の問題児

 王都学園


 ステータスの一つが最大値500以上で入試資格が与えられる、超エリート校。

 宮殿のような造りは品よくきらびやかで、生徒の多くは貴族や有名ハンターの血筋だという。だが合格すれば民衆出身の者もおり、意外にも成績が良く生徒会に多いらしい。

 入学と時はランダムでクラス分けをされ、三年生で主に成績と素行中心。八年になると専攻。のクラス替えがあるそうだ。

 12歳から20歳までが通う九年制の全寮制。将来がほぼ約束されている。

 エルヴィスさんとケインさんの母校でもあり、敷地内に他の学園まで併設された“学園都市”そのものだった。



「それじゃ、エルヴィスさんは三年の担任なんですね?」

「ああ。厄介な特殊児を任されてる。優秀だが問題児ばかり、俺にしか太刀打ちできないと言われ、仕方がなく」


 めっちゃめんどくさそうだ。それでも引き受けるのが彼らしい。

 私は助手として、本当にやっていけるのか不安になる。


「――あいつら、まさか?」


 とエルヴィスさんが急に目の色を変え、私を置いて駆け出した。突き当たりの明るい部屋の扉をガラリと開ける。



「げっ、エルヴィス?」

「なんでいる? 今日は休日だぞ」


 油断していたのか、部屋にいたのはまだ幼さの残る少年たち。慌てふためく声が弾む。


「貴様ら、あれほどここは立ち入り禁止だと言っているだろう! なぜ当然のように居座っている?」

「しょうがないだろ? 家具も食器も食品も全部一級品だし、書斎の本も貴重なんだぞ!」

「おまけに教育上よろしくない“隠し物”まで置いてある、間違いなくここは男のパラダイス!」


 屁理屈ばかりで火に油を注ぐ少年たちを見て、これは想像以上の“問題児”だと納得する。


 教育上よろしくない=エロ本系だよね?

 ケインさん、あなた一体なんつうもんを、こんなとこで渡してるんですか? エルヴィスさんも家にさっさと持って帰ってよ。


 そう思いながら扉の前でオロオロしていると、赤毛の少年の一人がニヤッと笑い私の元にやって来る。


「おばさん、誰?」

「おばっ、おばさんだって?」


 おばさん呼ばわりにムッとして何か言い返そうとした瞬間、少年の姿はなく首筋に何かひんやりしたものが当たる。


 これ、マズくない?

 私、死ぬの?

 なんで?


「エルヴィス、このおばさんの命がほしければ、大人しくオレらの子分になれ」


 私を盾にして少年たちは形勢逆転を狙おうと要求するのだが、エルヴィスさんは――般若化した。


「いい加減にしろ!!」


 バリバリ


 本物雷が落ち、一喝が響く。

 少年たちの顔から血の気が引き退散しようとするが、扉は勝手ににビシャと締まる。

 まるで赤子のように簡単に彼らを捕まえ、天井から逆さ吊りにされていた。


 ……彼がぶち切れしたら、殺される。


「怪我はないか?」


 なのに私には優しく、お姫様抱っこでソファーに運んでくれる。

 男の人にお姫様抱っこしてもらうのは初めて。見た目とは違い結構引き締まっていて、体幹がしっかりしているのかぶれない。


 それになんだろう?

 今までかいだことのないすごく良い匂いが仄かに薫ってくる。人工的な薫りじゃなくって、――エルヴィスさんの匂い?


「え、たたぶん大丈夫です……あの子たちが生徒?」


 ぼーっと訊くと、彼は苦笑混じりに答えた。


「ああ、一番手を焼いている三バカだ。相手にしなくていい。すまなかった。お前が望めば、お前を襲ったアーロンを串刺しにしてやるが?」

「ひぃー……」


しかし少年たちの怒りは収まらず。ギロッと睨み付ける。赤毛の少年は悲鳴を上げた。


「んなことしたらダメです。あなたの大切な生徒なんですよね?」

「大切? 何かある度問題を起こし、俺の嫌がることばかりしてるこいつらが?」


 相当苦労していることが良く分かる。

 きっとこれからも彼らは同じ過ちを犯し続けるのだろう。優秀なのに何にも学ばない三バカ……。

 

「では後一年間、温かく見守りましょう。それでダメなら見放せば良いですよ」


 とにかく私の目の前で血祭りなんかしてほしくなく、偽善者っぽい台詞でこの場を納めようとする。


 まぁ私がもしエルヴィスさんのように実力があるなら、そんな悪がきには間違いを気づくまで怖ろしい目に合わせるけどね。


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