69話 覚醒者のすごさ
「本当に覚醒すると、すごいんですね?」
ケインさんに再測定してもらった結果を見て、思わずテンションが爆上がりする。
知能:125
根性:150
知識:325/430
運動:300/400
魔力:550/617
技量:404/505
幸運:609/662
加護:言語翻訳α/ラッキーガールSS/祝福の鐘/覚醒
知能は平均的。知識と運動は中の上といったところだけれど、それ以外は明らかに跳ね上がっている。
加護も強化され、新しいものが二つ追加されていた。カードの色も、以前のものとは違い、輝く緑に変化している。
ケインさんは「この件も内密に処理する」と言ってくれたので、ひとまず胸を撫で下ろした。
覚醒がすごいことは理解できた。
でも――彼のステータスを見てしまうと、どうしても私はまだまだなんだな錯覚してしまう。だから周囲から私は過小評価していると思われてしまう。
彼もまた覚醒者だった。
しかも二回目だという。
以前は見せることに躊躇していたのに、今は当然のようにステータスカードを交換してくれる。
それが「信頼し合う恋人同士」なんだと思うと、少しだけ胸が温かくなった。
それはさておき、彼の数値は――
知能:150
根性:150
最大値は幸運が600、それ以外は800近い。
加護は、護りし戦士 メシアの加護 呪い吸収 幸運の女神付与 采配SS
などが追加されており、もはやどれを取っても超人の領域だった。
「俺が再覚醒したのは、穂香のおかげだ。加護の“幸運の女神”は、穂香のことだろう」
「……!!」
これ以上ないほど嬉しい言葉をもらい、思わずさっきの続きをしそうになる。
けれど――
冷たい視線が飛んできて、現実に引き戻された。
彼も小さく咳払いをし、私との距離をわずかに取る。
それでも、繋いだ手は恋人繋ぎのままだ。
そういえば私たちは今、温泉旅館へ向かうバスの中だった。
なんでも近隣の村を凶悪な魔物が荒らしており、メシア一行に出動要請が出たらしい。
私と彼は療養目的で同行しているだけで、他の人たちにとっては“楽しい旅行”ではない。
……なのに、私たちは何を浮かれているんだろう。
昨日マミア様たちに見られて、学んだはずじゃなかったっけ?
「二人とも、そういうことは弁えろ」
『はい、分かりました』
呆れ果て釘を刺すクロさんに、二人同時に背筋を伸ばして答える。
これを機に気を引き締めよう、と心に決めた。
メシアと護りし戦士たちの戦いは、これからも続く。なのに彼を腑抜けにしてどうする。
恋人の時間は、夜だけにしよう。
……それくらいは、許されるよね?
「やはり俺も同行する」
彼の声色が変わった。
空気が一瞬で張り詰める。
あ、護りし戦士の彼だ。
甘い時間が終わってしまうのは少し残念だけれど、不安や悲しさはなかった。そうなったとしても帰る場所は、私のところだと自信がある。
それにそういう彼の姿も、私は好きだから。
「駄目だ。旦那はまだ病み上がりだ。穂香さんと大人しく療養していろ」
「そうです。それに旅館が必ずしも安全とは限りません。もしもの時は、エルヴィスさんが対応してください」
クロさんと撫子さんに、無情にも却下される。けれどその言葉には、確かな優しさが含まれていた。
そうだった。
ここはラークの外。危険が伴う場所だ。
ラーク内が平和すぎて、すっかり忘れていた。
下心だけで温泉での療養を選んでしまったけれど……大丈夫だったのかな?
「分かった。帰るまでに体調を万全に整える」
彼はすっかり鍛錬モードに入り、私との温度差が一気に広がる。
私の下心、さようなら。
絶対安静がなくなる明日から、私も鍛錬をまた頑張ろう。
「先輩、張りきるのは良いですが、彼女のこともちゃんと考えてくださいよ」
「そうだな。あんまり素っ気ない態度をとり続けたら、姐さんがいじけて泣き出すぜ」
「そ、そんなわけないでしょ? ……少しぐらいは甘えたいけど、が、我慢できるもん……」
テキサス様とアーロンが私の肩を持ってくれるけれど、否定しつつも本音はダダ漏れ。
すると、繋がれていた手がきゅっと握り返され、耳元でそっと甘く囁く。
「安心しろ。恋人との時間はちゃんと作る。俺の帰る場所は、穂香の元と言っただろう?」
と。
体中がカッと熱くなり、とろけてしまう。




