48話 新たな生活拠点
「ここか……」
ようやく辿り着いたのは、メシアたちが公私ともに過ごしている建物だった。
要塞のように立派な造りで、三階建て……くらいかな。
学園都市の中にあるというのに、門構えは厳重で、門番まで配置されている。
今日から、ここでお世話になる。
――そう思った途端、じわりと緊張してきた。
小説によれば残りの護りし戦士は、
術式に詳しい“第二王子”
心優しい植物を愛する“貴族の少年”
冷血最強の護りし戦士の唯一の理解者“魔王の息子”。
仲良く……というか、ちゃんとやっていけるか心配。
以前は、完全に彼に護られていた。
でも今回は違う。
ちゃんと自立しないと。
そうすれば、きっと――少しは認めてもらえるはず。
「藤原穂香さんですね。学園長より連絡を受けております。どうぞお入りください」
兵士はきびきびと敬礼し、門を開けてくれた。
「はい。ありがとうございます」
正直、兵士にはあまり良い印象がなかったから、これは拍子抜けだ。
学園長、ナイスアシスト。
「穂香さん、お久しぶりです」
「……クレアさん? どうしてここに?」
玄関で出迎えてくれたのは、懐かしい顔だった。
思わず目を瞬かせる。
「旦那様のお世話をするのが、私の役目ですから。今はこちらのメイド長を務めております」
胸を張って、当然とばかりに言い切るクレアさん。
その姿に、張りつめていた緊張がすっとほどけた。
「そうでしたね……。またお世話になります」
「はい、喜んで。では、お部屋へご案内しますね」
「お願いします」
嫌な顔ひとつせず引き受けてくれる、その変わらない温かさに、胸がじんわりする。
「今夜はマミア様とリーサ様も会いに来られるそうですよ。とても喜んでおられました。もちろん、私もです」
「ありがとうございます。私も嬉しいです。……待ち遠しいな」
このご時世で二人の立場的に、すぐには会えないと思っていたから、余計に嬉しい。
話したいこと、たくさんある。
「やっぱり姐さんには、そういう笑顔が一番似合うぜ?」
いつの間にかアーロンがいて、懐かしむようにそう言った。
「ですよね?」
クレアさんまで同意して、二人で笑い合う。
「え、なに急に?」
「姐さんには、いつでも笑っててほしいってことだよ。でもな……」
アーロンの表情が、少しだけ曇る。
「これから、残酷なお願いをする」
「なに?」
身構えた私に、彼はまっすぐ言った。
「あの馬鹿教師を、元のエルヴィスに戻してくれ。もう頼めるのは、姐さんしかいねぇ」
そんな無理難題を押しつけてくるかと思っていると、ずっと真っ当なお願いだった。
……やっぱり、アーロンは可愛い。
「うん。最初からそのつもりだよ。でも私、笑っちゃうほど弱くて泣き虫だったりするから、辛くなったら助けを求めてもいい?」
「そんなの、お安い御用だ。な、クレア?」
「はい。いつでも捌け口になりますよ。それにマミア様達だって」
心強い味方は、ここにも沢山いた。
「それ、我々も混ぜてください」
「ぜひお願いします。あんな叔父上、もう見たくありません」
「あ……」
いつの間にか、さらに二人増える。
一人は、強制送還のときにいた彼の後輩。
もう一人は初対面だけれど、どこかエルヴィスさんに似た、アーロンくらいの少年。
……叔父上?
「穂香さん、お久しぶりです。テキサス・ラークです。あの時は父たちが早とちりをして、申し訳ありませんでした」
「ラーク……親父たち? もしかして第二王子?」
「はい。私も護りし戦士の一人です。よろしくお願いします」
まさかの正体に、内心ひっくり返る。
「初めまして。リチャード・ウォーカーです。マミアの息子で、エルヴィスの甥にあたります。私も護りし戦士です」
――すごいの来た。
心の中で大絶叫する。
小説で知ってはいたものの、実際に会ってみると、破壊力が違いすぎる。
しかもリチャードくん、彼の優しい目元版だから、テキサス様同様イケメン上位。
メシアは美人。
護りし戦士はイケメン揃い。
……その中に凡人の私が入っていいんだろうか?
完全に場違いなんじゃ……。
私的には目の保養になるから、大万歳ではあるけれど。
本来の目的をすっかり忘れ、オタクの血が騒ぎ出しテンションMAXの私だった。




