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ドアを開けたら異世界でした?~モブの私と彼の秘密の記録  作者: 桜井吏南
第3章 二人の距離は急激に近づく
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34話 指輪の効力

「まさかここまでとはな。もうワシが手を加える必要がない」

「え、そんなにすごいものなんですか?」

「ああ。これをつけてるだけで全ステータスが50。幸運はさらに20上がる。加護と治癒効果もつく。売れば一生遊んで暮らせる大金が手に入るぞ」

「そ、そんなに」


 完成した指輪を学園長に見てもらったら、とんでもないSSSレアアイテムに化けていた。

 ちなみに球体だったガラス玉は、薔薇の形で中央は深紅に変わっていた。リングの色も漆黒。

 これを初めて見た時はエルヴィスさんに似合いそうだと思ってしまった。


 半年暮らせるどころか、一生遊んで暮らせる……?


 こんなものを作れる私は天才?

 それともたまたま?

 うん、たまたまだな。


「お主は脅威ではなく、メシアに匹敵する希望だとワシは思うのだがな」

「それは買い被りですよ。ただ運がいいだけの一般人です。でも……ありがとうございます」


 学園長は本気でそう言ってくれる。


 そう思ってくれるのはありがたいんだけれど、さすがにそれは買いかぶり過ぎで恥ずかしい。私はそんな人間じゃない。


 頬を少し赤く染めつつ、マカロンを頬張り紅茶を飲む。


 街の景色を眺めながら、学園長とアフタヌーンティーを楽しむ。

 ――これも今日で最後だと思うと、胸がきゅっとなる。


 ピンポンパンポン


『穂香。どこで遊んでる? さっさと教室に戻ってこい!!』


 授業中にもかかわらず放送が流れ、アーロンの怒鳴り声が響く。

 事件のせいで学園中に名前と顔が割れたため、また何かやらかしたと思われたら恥ずかしい。

 ホームルームで最後の挨拶をする予定だったのに……一体何の用だろう?


「なんか呼び出しがかかったので、行ってきます」

「気をつけていってらっしゃい。明日の送還の儀には立ち会うからな。別れはその時に」

「はい。ありがとうございます。ではまた」


 別れは後回しにして、私は足早に教室へ向かった。




 パンッ、パンパン!


「え?」


 扉を開けた瞬間、クラッカー(多分)が一斉に鳴り響き、紙吹雪が舞った。テープまみれの私は思わず固まる。


『穂香、今までありがとう!!』


 満面の笑顔の生徒たちが声をハモらせる。

 教室はきれいに飾り付けられ、オードブルやケーキ、ジュースまで用意されていた。

 立派なパーティー会場だ。


「今から姐さんのお別れ会だ!」


 たんこぶをつけたアーロンが駆け寄り、私の手を取って椅子までエスコートしてくれる。

 エルヴィスさんは明らかに不機嫌……すべてを察した。


 放送室を無断使用したから、雷が落ちたやつだ。


「私のために、ありがとう」

「どういたしまして。でも女神さまの次は脅威って……穂香、いい迷惑よね?」

「アハハ……そうだね」


 笑って誤魔化すしかない。


 そもそも“女神”なんて一部が暴走した称号。

 だいたいエルヴィスさんの表情が柔らかくなったのかは、検証も中途半端で今も謎のままである。


「なぁ穂香、本当に帰らないとダメなのか?」

「脅威じゃないって、証明すればいいんだろ?」

「僕たちが証明してみせましょうか?」

「ありがとう!! でも元の世界が恋しくなっているから。自ら望んで帰るんだ」


 まさかこの生徒たちに引き止められるなど、夢にも思わなかったから……ジーンときてしまう。

 涙をこらえて、半分は本心だと思いたい答えを笑顔で返す。


 だから納得して。


「ほら言っただろ? 姐さんが自分で決めたことなんだ。だから笑顔で見送ろうって」

「そうだぞ。始まってすぐこれとか、お別れ会が台無しだよ」


 今にも泣き出しそうな双子が、懸命に空気を変えようとする。

 でも逆効果で生徒全員が泣きだし、私に抱きついてきた。

 こんなことされたら私も泣いてしまう。


 問題児だらけのクラスだけれど、私はみんなが大好きだ。


「これからはエルヴィスさんの言うことを聞くんだよ?」

『それは、無理』


 そこは即否定なのですね?

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