31話 リハビリ中
「あ~、疲れた。一旦休憩……」
誰もいない中庭で一人、寂しくリハビリを開始して早五分。
あっさり根を上げて、近くのベンチに座り込む。
そうなると思ったから、あえて一人を選んだ。
根性なしの自分を見られたくない――いや、もう私の本性なんかすべてバレているだろうけど。
それでも少しでもカッコつけたいのだ。アラサーの意地。
にしても、たった三日歩いてないだけなのに。
骨折してたせいか、杖を使っても足が重りように重い。一歩歩くだけでも、一苦労。
完全にロボット歩行。
……こんなんで、本当に大丈夫なんだろうか?
いつもなら「もういいや」って、ギブアップしているところだけれど、今回はそう言う訳にもいかない。
――デート?のため。
――デート?のため。
自分に強くそう言い聞かせて、再び立ち上がる。
ゆっくり少しずつ。
美味しい人参がぶら下がっているから、私はいくらでも頑張れる。
「穂香さん、すまなかった」
「えっ、学園長??」
授業中だから誰もいないと思っていたのに、まさかの学園長が登場。
私と目が合うなり、老人なのに一目散に走り寄ってきて――土下座。
ちょ、周りに誰も……いないよね?
老人に外で土下座させるって、私は悪女か?
なんて冗談はさておき、学園長はここの責任者。学園で起きた不祥事はすべて学園長の責任。
それは世界が違うとは言え、それが社会の常識。だからこうなるだろうなって、思っていたんだよね?
「すべてはワシの管理不行き届きじゃ。ワシにできることならなんでもしよう」
「じゃあ……エルヴィスさんに、お礼がしたいんです。何かいい案ありますか?」
学園長の覚悟を受け取りつつ、無茶苦茶な要求じゃなくアイデアのお願いをしてみる。
学園長はエルヴィスさんの恩師で、博識だからね?
「お礼か。ならばピッタリなものがある。ついてくるといい。お主のペースに合わせよう」
「ありがとうございます……助かります」
すぐに心当たりはあるようで、学園長は言葉通り私のペースに合わせてくれて学園内へ。
かなりの時間と階段は学園長の魔術のおかげで、なんとか学園長室にたどり着いた。
ヘトヘトになりぐったりとソファーに沈んだ私を、まずはアフタヌーンティーでもてなしてくれた。
そして学園長は何かを探し始め、待つことしばらく。
「おお、あったあった!」
ようやく見つかったらしく、引き出しの奥から包みを取り出す。
「これをお主にあげよう。幸運増加の魔術アイテムキットじゃ。ラッキーガールのお主が丹精込めて作れば、ひょっとしたらなんかしらの特殊効果がつくかもしれん」
それってお守りじゃねぇ?
なんて突っ込みたくなるような内容に疑いながらも、包みを受け取り恐る恐る中身を確認。
説明書、ガラス玉、シルバーリング、ピンクの粉の袋。
疑わしさ満点である。
「……喜びますかね?」
「もちろんじゃ。わしの勘が言っておる」
思わず疑いの目をもらすと、自信ありげにそう断言される。
何を根拠に?
と聞きかけて――思い出す。
この人、千里眼の加護持ちだった。
なら、本当に喜んでくれるかも……。
「ありがとうございます。家で作ってみます」
「良い判断じゃ。仕上がったらわしに見せなさい。とっておきの補助魔術をかけてやろう」
「はいっ!!」
ちょっとだけ、信じてみる。
笑顔で礼を言うと、学園長も微笑む。
大魔術師のとっておき――それ絶対そっちがメインですよね?
それなら、きっとエルヴィスさんも。
「おや、迎えに来たようじゃ」
「えっ、迎え? でもここに私がいるって――知らない」
言いながら、悪寒が走る。
中庭にいるって約束した。
「さっき知らせておいた。心配すると思ってな。……あいつの慌てぶりも見たいところじゃが、仕返しが怖いからの」
いたずらな笑み。
そして、まだノックもされていない扉を開ける。
そこには、エルヴィスさんがいた。
自然と私の笑顔には、更なる大輪の花が咲く。
――強制送還まで、あと四日




