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29話 お見舞いと決意

 お見舞いに来てくれたのは、トリオだった。

 車椅子の私を見て一瞬固まったけれど、元気だと分かると安心したように笑ってくれる。


 ほんと、素直で可愛い子たちだ。


 クレアさんの指示で客間に通した。


「わざわざありがとう」

「いいってことよ。それより姐さん、その指輪……魔術強化アイテムだろ?」

「え、あ。よく分かったね……?」


 ただ聞かれただけなのに、また鼓動がざわつく。


 エルヴィスさんからの贈り物だと言いたい。

 でも迷惑かもしれない。変に誤解されたら困るし。


「だって右手の薬指に付けるのはそれしかねぇだろ?  師が弟子に渡すってやつ」

「じゃあ、エルヴィスから貰ったんだな」


 あっさり言い当てられ、呆気に取られる。


 この世界では、全然迷惑どころか“当然”のことらしい。

 むしろ隠す方が怪しいレベルなのね。


「うん。これで魔術が上手く使えるみたいで」

「姐さん、エルヴィスのこと好きなんだろ?」


 ……普通に答えただけなのに、マスカットにバレた。

 空気を読んでくれたのか、耳打ちだったけど――


 シャインは微笑んでる。


 あ、こっちにもバレた。


「だったら試してみろよ」

「え、ここで?」


 アーロンくんは相変わらず無邪気にリクエスト。

 そう言われると好奇心が刺激され、試してみたくなる。


 これは危険なものではない。

 むしろ自分の身ぐらいは自分で守れる……かも知れない。

 だから試して良いよね?


「いいんじゃないか。俺も見てみたい」

「エルヴィスさん!?」


 いつの間にかドア前に立っていて、口元だけ笑っていた。

 そして当然のように、私の隣に座る。


 隣に座ります?

 しかも距離、近くないですか?

 ……………

 まさかトリオ側に座るはずないから、当然と言えば当然か。

 いや、まさか私が恋してるなんて思ってないだろうし。

 魔術発動には心を落ちつかせない……あれ、意外に落ちついている?

 しかも力がわいてくる。

 これが恋の力? 片想いなのに?

 ……まぁ良いことなんだから、なんでもいいか。


 心を落ちつかせて、

 火のイメージをする。

 心の中で、小さな火が灯る。


 ここまでは今まで通り。

 問題はここからで


「イグニション」


 ピカッ。


 言葉と同時に、指輪の薄桜色の宝石がきらりと光った。

 すると身体中に暖かい何かが巡り、手のひらに小さな火がぽっと現れる。

 頼りない火が、ゆらゆら揺れた。


「成功……した?」

『姐さん、すげぇ!!』


 トリオはむしろ私より喜んでくれる。


「おめでとう。穂香」


 エルヴィスからも祝福される。


「ありがとうございます。エルヴィスさんのおかげです。これで自分の身は――」

『無理』


 全員にハモらせ、冷たく切り捨てられた。


 ですよね?

 調子乗ってすみませんでした。


「姐さん、もしかして“異世界人の脅威”を気にしてるのか?」

「え?」

「なんでもメシア様じゃねぇ異世界人が自然発生したらしいぜ。人畜無害で放置してたらしいが、新種の呪詛も出ててさ。脅威の可能性もあるから、政府が探して元の世界に強制送還させるって話だ」

「へぇ〜……そうなんだ」


 それ、完全に私ですけど?


 動揺が表に出ないよう当たり障りのない返答をする。


 私はただ呪詛をばらまく術師の対策のつもりで言っただけなのに。

 ……だからケインさんは極秘扱いしてた?

 そしてマミア様とリーサさんは真相を――


「すまない。急用ができた。夕食までには戻る」


 エルヴィスさんの表情が険しくなり、

 ほんわか空気が一気に、張り詰めた空気に変わる。

 それはもちろんトリオにも気付かれてしまい――


「まさか姐さんが異世界人?」

「だから基礎魔術を暴走を?」

「……エルヴィスは知ってたんだな」


 呆然と見られた。


 この流れ、なに?


「ああ。どうする? 政府に報告するのか? その瞬間、お前たちは――」


 教え子のはずなのに、私を庇って牙を向けようとする。


 嬉しかったけれど、悲しくもなる。

 教え子。しかも担任なんだから、私なんかのために対立したら駄目。


「そんなことしねぇよ。オレた……オレは姐さんの舎弟だ。秘密にする」

「アーロン、ずるい。俺だってそうだ」

「おいらも。姐さんが望むなら、エルヴィスと一緒に守る」

「みんな……」


 当然のように味方になってくれた。


「だめだ。政府に逆らえば、お前たちの将来を潰す」

「それはお前も同じだろう?」

「俺はいい。穂香を保護した義務がある。失職したら考古学者として世界中を旅するだけだ」


 ――あ、これ以上はダメなやつだ。


 殺伐とした空気を止めようと、必死に言葉を絞り出す。


「あ、私……元の世界に帰ります。帰れないと思っていたから、……Win-Winですよね?」


 本当はすごく嫌だったけれど、私が我慢すれば丸く収まるんだから、それが一番いいんだ。

 私だってトリオの副担任だもんね。


 その瞬間

 エルヴィスさんの表情が、一瞬だけ凍りついた。

――気がした。

 

 きっと私の願望――。

ここまで読んでいただきありがとうございます。

続きが気になりましたら、ブックマークで追っていただけると嬉しいです。

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