14話 冷血鬼教師の親衛隊
今日も今日とて、変わらぬ“痛い視線”に悩まされていた。
「ねぇ、エルヴィスさんの親衛隊ってどんな人たちか知っている?」
「どうせドMの集団だろ? あいつに罵られたいと思ってんじゃねぇの?」
「だけどよ悔しいが、あいつは実力あるし、なんだかんだで面倒見がいい。それが理由じゃないのか?」
「だよな。おいらたちを未だに見捨てねぇで、ちゃんと叱ってくれる。今までの奴らと違って、いいセンコウだと思うぜ」
ランチを一緒にしていたトリオに、親衛隊のことを探りを入れる。
ちなみにエルヴィスさんは「用事がある」と言ってどこかへ行ってしまった。
すると、意外にも「慕われている」という事実が発覚。
アーロンも嫌そうにしながらも頷いていたから、双子と同じ意見らしい。
……ちゃんと伝わってるんだ。エルヴィスさんの思い。
なんだか自分のことのように嬉しくて、思わず微笑んでしまう。
「エルヴィスに絶対チクるなよな!!」
「チクったら絶……いや、されて困るのは俺らか」
「姐さん、どうか言わないでください!」
ムッとした顔で強く口止めされるけれど、効果なしだと気づいたのか今度は拝み倒してくる。
ほんと、こういうとこ可愛いんだから。
「大丈夫だよ。ここだけの話にしとくから」
「さすが姐さん。あ、そうだ──親衛隊の話だったよな? 俺の彼女がよく知ってるから、紹介してやるよ」
「アハハ、彼女ね……ありがとう」
余裕ある大人の女性を演じようとしたその瞬間、シャインの何気ないひと言が、心にグサッと刺さる。
……そうだった。こいつ、年上の彼女がいるんだった。
三人の中で一番大人びてて、問題児なのに女生徒には紳士的。だからモテる。
しかもマスカットにも故郷に幼馴染みの彼女がいるらしい。
いないのは──アーロンと、私だけ。
……なんか悔しい。
「姐さん、ドンマイ。きっといい人見つかるって」
上から目線で励まされた気がする。
ムカッ。
「いつもシャインくんがお世話になってます。私はリリィと言います」
「あ、どうも。穂香です。こいじゃなかったシャインくんの副担任……をしてます」
美人ではないけど、清楚で礼儀正しそう。眼鏡の奥の笑顔が柔らかくて、まさに“図書委員”って感じ。
なるほど、シャインの好みはこういう子か。
「リリィさん、エルヴィスの親衛隊について教えてくれませんか?」
私たちには使ったことのない丁寧語。いつもと違うシャインに、ちょっと驚く。
こいつが、一番最初に更生するかも……?
「もちろん。エルヴィス先生の親衛隊は八人。過激な信者は会長と副会長だけで、それ以外は“見守りたいファン”です。私の親友も入ってますけど、最近『全体的に柔らかくなった』って喜んでました」
「やわらかく? 相変わらず“冷血鬼教師”で変わらねぇと思うが」
『確かに!!』
三人とも心当たりがないようで、同時に首をひねる。
そりゃ、あんたたちが問題児だからでしょ!!
これにはリリィさんも苦笑している。
信者は二人。
思ったより少なくてホッとした。……けど、その二人がヤバいやつだったら最悪だな。
「あ、リリィいた!」
「ミサンガ、静かに!」
ツインテールの少女がリリィさんを見つけるなり、図書室だというのに駆け足でこちらへ突っ込んでくる。
当然、周囲の視線が集中。リリィさんにお叱りを受けている。
まさに“元気娘”。
「ごめんごめん。っていうか──あなた様は穂香様!?」
「穂香様!?」
目が合った瞬間、彼女の目の色が変わった。
勢いよくスライディングして、まさかの拝まれる。
しかも“様”呼び。
客の立場以外にそんな呼ばれ方されたの初めてで、思わず目が点になる。
なにこの子!?
「あなた様が現れてからというもの、あの冷血でクールなエルヴィス様が柔らかくなってきているんです!」
「ミサンガ、穂香さんが困ってるでしょ? 穂香さん、彼女が私の親友で親衛隊の子です」
「アハハ……元気娘でオタク気質なんですね」
まるで女神様扱い。もう笑うしかなかった。
三人はドン引きして後ろに下がり、小声でボソボソ言い合っている。
キンコーンカンコーン。
予鈴が鳴る。




