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13話 爽やかな朝

 またやっちまった。


 朝目を覚ますと、私はエルヴィスさんのベッドにいた。


 二日酔いがそれなりにあるけれど、まぁこの程度ならなんとかなるでしょう?

 エルヴィスさんの部屋で酒盛りをすると、だいたい毎回こうなる。

 二人で呑むお酒はつい美味しくて、やめられないんだよね。


 少しだけエルヴィスさんの匂いに癒されながら、辺りを見回す。

 エルヴィスさんはすでに着替えを終え、読書中だった。

 ……こういうのも、慣れって怖い。

 何もなかったと分かっている分、気恥ずかしさはほんの少しだけ。


 だって私はエルヴィスさんの好み(どんなタイプか知らないけど)じゃないし、私の魅力なんてゼロ。

 だから、ムッツリスケベでも何もされない。


 ――シクシク。

 

 私だって別に、エルヴィスさんのことなんて……師匠か目の保養くらいにしか思ってないもん。


「穂香、おはよう」

「おはようございます。朝から勉強熱心ですね?」


 私が起きたことに気づいたエルヴィスさんが、いつも通りに挨拶をくれる。

 ベッドから起き上がりながら、彼の背後から覗き込む。

 小さな文字がびっしり詰まった本。……目眩がしそう。


「古代魔術アイテム製法が書かれた古文書がようやく手に入ってな。読んでみるか?」

「面白そうですけど、遠慮しておきます。自分の部屋に戻って支度してきますね。それではまた」


 私には無理そうなのでやんわり断り、ごみとビンをまとめて部屋を出る。


 そして自分の部屋の前で――絶対零度の視線と交わった。


 ヤバい。クレアさんに見つかった。


「あなたはどうして毎回毎回、警戒心がないのですか? 旦那様に襲われるのを待っているんですか?」

「ま、まさか! エルヴィスさんにとって私はただの弟子。異性として見られてません!」


 もう耳にタコができるほど聞いた小言。

 でも私も慣れたもので、笑って軽く受け流す。


 クレアさんが心配してくれてるのは、よく分かるんだけど……

 そろそろ私たちの関係をちゃんと理解してほしいんだよね。

 何があっても何も起こらない、って。


「分かりました。ではこれだけは約束してください。深夜に異性と二人でお酒を呑むのは、旦那様とだけにしてください」

「安心してください。私にエルヴィスさん以外と二人で呑む相手なんかいませんよ。そもそも一人外出は禁止ですし」


 新しい約束を言われるけれど、これなら大丈夫だと胸を張って頷く。


 ラークは安全と言え治安があまり良くないらしく、魔術が使えない私一人では危険だから、未だに許してもらえない。

 唯一許されている一人外出範囲は、学園都市でも王都学園の敷地内だけ。


「はぁ……。それで穂香さんは本当に納得してるんですか?」


 信じられないという顔。どうやら新たなる悩みの種をみつけたみたい?


「はい。お願いすれば一緒に行ってくれます。エルヴィスさんは優しいですから」

「穂香さんは本当に素直な人ですね。だからこそ、私は余計に心配なんです。……旦那様にも忠告してきます」

「え、あ、はい。ほどほどにお願いします……」


 クレアさんは満足そうに笑い、今度は矛先をエルヴィスさんへ。

 廊下を颯爽と歩き、扉の前で声を張る。


「旦那様、クレアです。話があるので入りますよ」


 返事を待たずに入っていった。


 ……エルヴィスさん、ご愁傷さまです。



 朝食前


「穂香、日中で近場の商店街なら一人で出かけても構わない。ただし、路地裏を通るのは絶対に駄目だ」

「あ、はい。ありがとうございます」


 きっとクレアさんにきつく言われたんだろう。

 エルヴィスさんは嫌そうな顔で、渋々許可を出す。


 嬉しいはずなのに、なぜか少しだけ胸が痛む。

 でもそんなこと言えないから、私はいつものように笑って――感謝を伝えた。



ここまで読んでいただきありがとうございます。

続きが気になりましたら、ブックマークで追っていただけると嬉しいです。

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