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第7話:『資金調達』の役割と、王都冒険者ギルドへの凱旋

王都の外れにある、クロノの両親が残した家――内部は広大な魔改造要塞。その豪華なソファに、クロノは腰掛けていた。


リリは、王都中の経済情報を解析し終え、興奮気味に報告する。


「マスター。私たちの当面の課題は、活動資金です。奈落で得た魔石は膨大ですが、換金すればすぐに足が付きます。そこで、私が用意した『資金調達の最短ルート』は――『王都ギルドの裏依頼の独占』です」


リリは空間に立体的な魔術映像を投影し、王都のギルド裏側で秘匿されている依頼の一覧をクロノに見せた。


「この依頼は、『王立図書館の古代魔導書に仕掛けられた、魂を侵食する呪いの解除』。依頼主は王族直属。通常の魔導士では、呪いの解析と対抗魔術の構築は不可能。しかし、私、『知識』の役割の英霊が解析すれば、瞬時に解決可能ですわ。報酬は、Sランク冒険者の一年分の活動費に匹敵します」


シヅクが、優雅に口元を抑え、冷たく笑った。

「流石はリリ。王都の核心に、いきなり踏み込む作戦ですね。この依頼を成功させれば、マスターの噂は瞬く間に王都の裏社会に広がるでしょう。あの愚か者たちを、地獄から見上げる立場に突き落とすには最適です」


クロノは、英霊たちの能力と、リリの知性に改めて感嘆した。

「よし、この依頼を受けよう。資金と共に、僕たちの名声も手に入れる。その方が、あいつらへのざまぁも効果的だ」


作戦は決行された。クロノは目立たないフード付きのマントを着用し、英霊たちを従えて王都冒険者ギルドの扉を開けた。ギルド内の喧騒は、まるで時が止まったかのように静まり返った。


誰もが、クロノを囲む四人の少女たちに目を奪われた。


(リリ:「マスター。ギルド内ではマスターの元パーティの話題が40%。彼らの惨めな募集要項は30%。残りの30%が、マスターを注視する視線です。周囲の視線を私の知識で支配します」)


クロノは受付で、リリが用意した古代魔導書の依頼書を差し出した。受付の女性は、その最高難度依頼に驚愕し、すぐにギルドマスターへと取り次いだ。


その時、ギルドの奥の扉が開き、三人の疲弊した冒険者、レオン、セレス、リアが現れた。


レオンは、ギルドマスターに呼ばれ、渋々歩み寄る途中で、クロノを囲む四人の少女たちに目を奪われた。


「なんだ、その集団は。見たことのないパーティだが、やけに目障りな女どもを連れているな。特にあのメイド、無駄に魔力がある」


レオンの傲慢な言葉に、四人の英霊たちの魔力が、一斉に高まった。


「……マスターの尊厳を、未だに踏みにじる。許しがたいゴミですわ」シヅクが、静かに殺意を滲ませた。


クロノは、静かに首を横に振った。

「今はまだだ。彼らの惨めさを、もっと深めてやろう」


ギルドマスターは、クロノたちの強烈なオーラに気圧されながらも、古代魔導書の依頼を承認した。


「そ、その依頼……貴族直属の、最高難度だ。本当に、君たちのような……新しいパーティに務まるのかね?」


クロノは、静かに答えた。

「この王都で、この依頼を完璧にこなせるのは、僕たちだけです」


その言葉を聞いたレオンが、ついに我慢できずにクロノに近づいてきた。


「おい、そこのフード!その女どもを連れて、最高難度だと?身の程を知れ!このギルドで最高難度を扱えるのは、勇者候補である俺たち【神銀の誓い】だけだ!」


レオンは、クロノの顔を覗き込もうと、フードに手を伸ばした。


その瞬間、リリが動いた。


「データ不足の行動は、無価値です」

リリは、おっとりとした笑顔を浮かべたまま、レオンの腕を掴んだ。その指先は、骨の構造と筋肉の動きを解析した完璧な角度で、レオンの神経を締め付けた。


バキリッ


骨が軋む、嫌な音がギルド内に響いた。レオンは、激痛に顔を歪め、その場に崩れ落ちた。


「な、レオン!?」セレスとリアが絶叫する。


「貴方の行動は、マスターへの情報的侵略と見なします。マスターの肉体に触れるなど、言語道断の不手際です」リリは、何事もなかったかのように、クロノに顔を向けた。

「マスター。依頼の場所は、王立図書館の最奥。雑用係だった頃の知識が活かせます」


クロノは、倒れるレオンを、冷たい視線で見下ろした。そして、フードを深く被り直す。


「また会おう、レオン。今度は、僕の価値を、思い知らせるためにね」


クロノは、四人の英霊に囲まれながら、ギルドを後にした。彼の背中は、もはやかつての『荷物持ちの雑用』ではない。世界を変える力を秘めた、『英霊の支配者ロード』のそれだった。

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