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第6話:『転移ゲート』起動! 王都への帰還と、両親が残した『帰る場所』

――「私の『雑用』は、マスターの聖域を世界一快適な要塞に変えますわ」


クロノが古代遺跡で手に入れた「転移ゲートの鍵」が魔術陣を刻み、光が収束した。クロノたち五人の姿は、奈落の深淵から消え去った。


次にクロノが目を開けたのは、王都の北外壁、職人街の裏手に位置する、クロノが幼い頃から住んでいた、両親が残した家の中だった。


「成功です、マスター!地上です!……そして、ここがマスターの『帰る場所』」

シヅクが感動したように言った。家は手入れが行き届かず、埃っぽく古びていたが、クロノにとっては心の拠り所だった。


クロノは壁の傷や、テーブルの跡を見つめ、両親との日々を思い出した。

「ここが、僕の家だ。誰も侵すことのできない、僕たちの場所だ……」


その夜、クロノは久しぶりに、心穏やかに眠りについた。だが、彼が眠りについた直後、四人の英霊たちの間で、静かな、しかし熱狂的な秘密会議が始まっていた。


「いけません。この家はマスターの聖域ですが、外見がこれでは『雑用』が不足しております」

シヅクが、夜の闇の中で囁いた。


「同感です。マスターの聖域を守る私の『盾の役割』から見ても、防御力が低すぎます。王都の魔力干渉からマスターを守るには、絶対的な要塞化が必須」イージスが、重装甲を軋ませる。


「ふむ。我の『剣』を振るう訓練場も必要。王都で一番強く、快適な訓練場を用意することこそ、我の献身」アステラが剣の柄を叩いた。


リリは眼鏡の奥の瞳を輝かせた。

「解析結果。マスターの御身は、現在、『心身の安寧』を求めています。ならば、私たちの愛を、マスターの安眠中にサプライズとして献上しましょう!王都のどの貴族も持たない、完璧な秘密要塞を、一夜で構築します!」


四人の英霊は、クロノの安眠を邪魔しないよう、音もなく魔改造に取り掛かった。


リリ(知識の役割): 空間拡張魔法の古代理論と、この家に残る隠蔽結界の魔力パターンを瞬時に解析。魔法陣の設計と、魔力の演算を一手に担う。


シヅク(雑用の役割): リリの設計図に基づき、無音で空間拡張と内装の最適化を魔力で実行。壁材、床材、家具の全てを、最高の品質へと『雑用』で変換する。


イージス(盾の役割): 要塞全体を、王都中の魔力探知から隠蔽する多層防御結界を展開。外見が古びた家のままであるよう、結界の『擬態』を緻密に調整する。


アステラ(剣の役割): 魔力の流れを乱す不純な魔物や、隠れていた王都の害虫などの『ゴミ』を、無音の一閃で全て処理し、英霊たちの作業環境を完璧に整える。


四人の最強の英霊による、愛と役割に基づいた完璧な連携は、文字通り神業だった。古びた家は、外見を一切変えることなく、その内部で次元を拡張し、完璧な要塞へと変貌していった。


翌朝。クロノが目を覚まし、水でも飲もうと立ち上がった瞬間――彼の思考は完全に停止した。


目の前に広がる光景は、昨夜までの古びた家ではない。


「な……んだ、これ……!?」


扉を開けた瞬間、天井は遥か高く、奈落の深淵に匹敵するほどの広大な空間が広がる。壁面には、古代の魔術式が複雑に刻まれ、床は磨き上げられた大理石のように輝いている。中央には、豪華なソファセットが置かれ、隅には最新式の錬金術の設備まで整っている。


「おはようございます、マスター!」

シヅクが、完璧なメイド服姿で、恭しくお辞儀をした。


「私の『雑用』として、マスターの『帰る場所』を、王都一、いえ、世界一快適な要塞へと変えておきました。外見は、マスターの『思い出の家』のまま、中は『英霊たちの愛の聖域』です」


クロノは呆然と立ち尽くす。

「一体、いつの間に……!?」


「ふふ、マスターの安眠を邪魔するわけにはいきませんからね。私の知識と、他の英霊たちの献身の結晶です」リリが、クロノの手に、出来立ての暖かい紅茶のカップを握らせた。


アステラは広大な訓練場を見せつけるように、剣を一閃する。

「マスター!これで、誰にも邪魔されない最強の訓練場が確保された!さあ、早速剣の訓練を!」


イージスは、家全体の守護結界が完璧であることを誇示するように、胸を張った。

「マスター。この要塞は、私の『盾の役割』が、永遠に守ります。マスターの聖域に、一匹の蟻も侵入させません」


クロノは、目の前にある、規格外の魔改造要塞と、それを成し遂げた四人の英霊たちの、想像を絶する愛と能力に、改めて圧倒された。


「……ありがとう、みんな。この家が、僕たちの伝説の始まりだ」


リリは、魔改造された拠点内で、その知識と魔力を用いて、地上の情報を瞬時に集め始めた。


「マスター。一晩で、王都の情報網を全て把握いたしました。レオン、セレス、リアの三人組は、マスターを追放した直後から、その栄光の道が完全に閉ざされました」


四人の英霊の熱狂的な愛と復讐の誓いに包まれ、クロノは静かに頷いた。


「復讐はする。でも、僕たちの目標は、あいつらを打ち負かすだけじゃない。この要塞と、僕たち五人の本当の価値を、世界に証明することだ」


クロノは、英霊たちを見つめた。

「リリ、僕たちの活動に必要な資金調達の最短ルートと、彼らのパーティへの接触の機会を特定してくれ。この家から、僕たちの伝説を始める」


「御意に、マスター。最高の舞台を用意いたしましょう」リリは、クロノの手を両手で包み込み、その賢明な瞳で、彼を熱烈に崇拝した。


こうして、最強の美少女英霊ハーレムを率いたクロノ・アークライトの、王都を舞台にした華麗なざまぁと成り上がりの物語が、いよいよ始まるのだった。

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