二朝 暁天
暫くし、私は銀杏の香りがする道を歩いていた。
そこは妙に寂しく、張り詰めていた日常に
穴を開けるが如く視線の先に道を作る。
私は、もう一度話したい。
それだけを胸に日常を闊歩する力は無い。
「はぁ…」
世界は未だに回り続けてしまっている。
ただ、それだけが頭の前側にしこりを残す。
歩くのが疲れた頃、ついに会社に着いてしまった。
昼の休みはとうに終わり、
皆は仕事を始めているだろう。
「入りたく、無いな…」
小さく出た一言だった。
それは、今までの事を肯定したような言葉の様な
そんな気がする。
じゃらじゃらと下瞼の底から砂利が押し上げる様に
私を肯定する。
それは、手で抱えきれないほど重くまで積み上がって
気がつく頃には手遅れだった。
砂利は、涙は、流転を繰り返す川の様に。
止まることを知らないように思えたが。
川はいつか停滞する。
会社のエスカレーターはゴウンゴウンと。
地獄へと詃。
身体には数多の傷痕。
手首には贖罪を抱えながら、これ以上何を抱えれば
良いのだろう?
席に戻る。
いつもの光景だ。
中央に置かれた、純白の花。
そのまわりから手が這うようにゴミと私に向けた言葉
社会に出ても、大人という折れた翼に名前を付けられた子供のような行為。
彼女らからしたらそれは自慰行為と何等、変わりない
純白の花は、今日も枯れない。
水をやるのは、
いつも傷ついていない人たちだ。
私はただ、
枯れないものの隣で
静かに息をしている。




