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教室



「悲しみって 日替りだね」


少し軽めの『君』の声が聴こえた

春の陽気がぬるく感じられる部屋


懈怠たゆたう教室の机のうえに

新しい傷をみつけた

無人の机は古びた傷でいっぱいなのに


「ときが過ぎたぶんだけね」

と『君』の声が聴こえた


悲しみの悲しさから

この部屋の時間は逃げきれないだろう


それを癒せる魔法はどこにもなく

だから傷ばかり増えてゆくのだろうか


傷口にすり込んだ

『君』の凍えた時間や結末に

不器用な悲しみが

また積もる

またまた積もりつづける

いつまでも忘れられない蝶々の

命を召された瞬間の

鮮やかな亡骸のように


その諦めの羽は

はるかにむかしから積もり積もり

積もり

積もりつづけ

一万羽の亡骸と化し

かつてない眺めを


花冷えの朝に現出させる


濃いめの筆力で

鉛筆の芯をぐんぐん削るように書き込む


けっして目覚めることのないように

純粋な夢を書き込む



窓の外のあすなろの木にとまった

一匹の鴉の鳴き声が

すこしだけ誰かの声に似てる気がして



教室の窓ガラスは

キラキラに散りばめられたダイヤモンド


脆弱な者だけが夢をみられる

真綿のようなしあわせが降りそそぐ時間



「悲しみって耳障りだね」


いったい

空気凍てつく無言を

突然突き崩させることがないよう守っている

『君』の言葉のなかの最後の光のカケラは


いまもまだ無風で安楽な癒しなど

こいねがっているということなのか?








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