付き合ってると思ったのは私だけだった
前作の話しと似た感じかも・・ですが、読んで頂けたら嬉しいです。
[私たち結婚します。]
そのハガキには仲良く微笑んで写る男女の写真。
男性の名前は 河田博樹
女性の名前は・・・
「誰だ?このひと・・」
河田博樹とは高校の時の同級生で、2年3年と同じクラスだった。
私の名前が 川地美和で席も前後。
自然と良く話すようになり、仲間同士で集まる時も必ず一緒だった。
2人で映画やショッピングにも行ったし、
大学受験の時もずっと一緒に勉強し、大晦日も2人で地元の神社に合格祈願へ行ったほどだ。
そして合格発表の時、1人で確認するのが怖いと私の部屋まで来て一緒に確認し喜んだ。
残念ながら博樹は京都の大学。
私は地元と離れたが連絡は小まめに取っていたし、地元に帰って来たら必ず私の家に顔を出して、なんなら両親にも挨拶していたのに・・
(付き合ってると思ってたのは、私だけだったの?)
[ねー、みわー。あんたと河田と付き合ってたんじゃないの?]
高校の時から一緒に遊んでいたカヨが、私と同じハガキが博樹から届いたと連絡をくれた。
カヨも大学で離れてしまい、そのまま他県で就職。会うのも年に1〜2回程になってしまった。
[私も博樹と付き合ってると思ってた〜 泣]
[何それ!?あんたら付き合い長いのに、思ってたって!ちゃんと告白されたんじゃないの?]
[・・・]
[えっ?]
[ちゃんとされてないと・・思う・・]
[えー、めっちゃ痛いんですけどー笑]
笑い事じゃねー!
って言いたかったけど、電話を切った後もよくよく考えたら博樹から告白された覚えも無い。
(えー、私カヨちゃんが言うようにマジ痛い女じゃーん)
なんか自分がすごい恥ずかしい。
でもでも、私は博樹に態度で伝えてたと思うのに・・博樹は気付いて無かったって事?
そもそも私もちゃんと言った?言ったつもりでいただけ?
「あー、なんだそりゃー」
1人で勝手に盛り上がってたんだと思うと、急に恥ずかしさと落胆と何とも言えない感情が胸の中でざわつき、悲しいのに涙も出なく
「彼女さん、可愛いじゃん」
と、送られたハガキを手にしていた。
その後も博樹に連絡する気にもならず、そのままにしていたら
[久しぶりー。ハガキ届いた?再来週の金曜日そっちに帰るからみんなで集まろーぜ。美和、声掛けといて!]
とメールが届いた。
今までは自分は博樹の彼女だから、そう言われれば仲間に連絡して場所も探して予約してと動いていたが、博樹にとっては何でも頼める友達!としか見えてなかったのかな?
それでも博樹への気持ちが無くなる訳でもなく、言われるように仲間へ連絡し、場所も探して予約した。
仲間たちには[◯月◯日土曜日18時〜 居酒屋◯屋]と連絡した。
博樹は金曜日の21時に最寄りの駅に着くため、私は駅まで迎えに行き話しを聞こうと思っていた。
カヨも金曜日の仕事終わりに直接地元へ帰って来ると連絡があった。
なのでカヨとは土曜日の昼に会う約束をした。
金曜日の夜
私は博樹から[21時45分ころ駅に着く]とメールが来たため車で駅のロータリーで待つ。
博樹が来たらどうやって話しを切り出そうか。
私の気持ちはちゃんと伝えた方が良いのか?
でも結婚する相手がいるのに迷惑か?でも私との関係は知りたい・・でも・・
と、でもでも考えていると
「悪いな、こんな時間に。」
いつの間にか博樹が車に乗り込んで来た。
「いいよ、仕事終わりに直接来たの?大変だったね。」
お疲れ様。と車を発進させた。
駅から家まで車で15分かかる。その間に何とか聞き出そうと思っていると
「ハガキ、届いた?」
「うん、ビックリしちゃった!!」
博樹の方から言ってきた。
少し話そうか。
そう言われ自宅近くの神社の駐車場に車を停める。
博樹は車を降り自販機で珈琲とコーンスープの缶を持って戻って来て
「これ、好きだったでしょ?」
とコーンスープを渡してきた。
「ありがとう、どっちかと言えばお汁粉だけどね。」
笑いながら受け取ると
あれっ?!ごめん。
と謝ってきた。謝られるほどの事ではないのにと思いながら口にする。
「いつから付き合ってたの?」
なかなか話出さないので私から聞く。
博樹は少し話しずらそうに話し始めた。
出会ったのは大学の時、同じバイト先で。1年後に彼女が辞めるまでは本当にただのバイト仲間だった。
自分も就職が決まりそのバイトは辞めたが、バイト先が立ち退きで最後にOB会がしたいと店長から連絡があり、その時に再会した。
その時に話しが合い連絡先を交換してからは、休みが合えば2人で会っていた。
結婚を意識したのは、自分がいつかは地元へ帰る事を話した時、「その時は地元に系列病院があるから、そっちへ移動するよ。」って言われた時。
博樹は彼女との事をペラペラと話していた。
まるで私に口を挟ませないように・・
「今回こっちの営業所に空きが出たから、希望を出していたんだ。そしたら選ばれて彼女にプロポーズした!」
GWに式挙げるから出席してな!
そう言われた瞬間、抑えていた気持ちがフツフツと湧き上がってしまい
「私と博樹、付き合ってると思ってたのは私だけだったの?」
と聞いてしまった。
「・・・。」
「確かにお互い口に出して無かったと思う。でも、いつも一緒にいたよね?2人で出掛けたりもしたよね?私の家にだって!」
博樹の顔がどんどん曇っていくのが分かる。
その顔を見れば博樹の気持ちなんて聞かなくても分かる。でも、感情を止めることができない・・
「あの時!大晦日、2人でお詣りに行ったとき、博樹、私に、私にキス・・したじゃない・・」
もう顔も心もグチャグチャだ。
それでも今、博樹の気持ちを聞かなきゃ!と、
「博樹は、私のことどう思ってたの?」
「美和の事は・・####。」
迎えに来てくれてありがとう。家近いから歩いて行くわ。気をつけて帰れよ。また明日な。
そう言って車を降りて自宅へと歩いて行った。
私はハンドルに頭を乗せグズグズに泣いた。
あんな事を聞くつもり無かった。
でも自分が彼女だと思ってたとき、博樹は違う人と付き合っていて、結婚まで考えていた!
そう思うと悲しくて悲しくて辛くて情けなくて、どうしても涙を止める事が出来なかった。
ピロン!
メールが届く。
鼻を啜りながら開くとカヨからだった。
[明日、何時から会うー?]
[カヨ、カヨ、カヨー 泣]
カヨは電話での私の様子に何かを察して、家においで!と言ってくれた。
ものすごい顔で行った私を笑う事なく
「とりあえずシャワー浴びておいで。服と新品の下着用意しておくから。」
と勧めてくれた。出るとカヨの部屋に布団も敷いてあり、枕元には暖かいお汁粉も用意されていた。
「お母さんのレトルトがあったから。美和好きだったよね?」
私は手渡されたお汁粉を飲みながら、博樹との事を話した。
カヨは黙って聞いてくれた。
「この前も言ったけど、仲間内はみんな2人が付き合ってると思ってるよ。2人で出掛けてるのも知ってたし。てか、博樹がみんなに話してたしね!」
知らなかった。
博樹は2人の秘密にしような!って言ったから。
親友のカヨにも黙っていた。
なのに・・
「あー、泣くな!泣くな!」
箱ティッシュを渡してくる。
「・・・私、痛い女だね・・」
「どこが!?」
「だって、告白もしてないのに彼女気取りで・・
何なら結婚も出来ると思って・・ずっと待ってて、重い女だなぁ・・。」
もうどうしたら良いのか、明日どんな顔で仲間達に会えば良いのかわからない。
グズグズと鼻を鳴らしていると
「来なくていいよ!博樹だって気まずいでしょ。話しは私が聞いてくるから、美和は寝てな!ここに居ても良いし、自分の家に帰っても良いし。」
時間はもう朝の6時だ。
このままカヨの部屋に居ても良かったけど、カヨにもちゃんと寝て欲しかったので自分の家に帰る事にした。
日曜日、カヨがアパートへ帰る前に少し会い飲み会での話しを聞いた。
彼女との馴れ初めと式への招待。
3月に引っ越すから手伝いに来て欲しい。
だった。
誰も美和が参加してない事には触れなかったと・・
その後、私は以前から会社よりお願いされていた、新会社設立の部署立ち上げの話しを正式に受けた。
博樹との事を1番に考えていたため断っていたが、ダメ元で上司に聞くとまだ誰を行かせるか悩んでいると言われた。
立ち上げからそのままそちらでの勤務になるけど?
と聞かれ二つ返事でOKした。
両親も博樹が結婚する話しを誰かから聞き、淋しいけど頑張れ!と背中を押してくれた。
カヨに話すと逆に自分とは近くなるから嬉しい!と言って貰えて良かった。
引越しは3月。
博樹とは入れ違いになる。
GWにも帰って来る予定は無い。
[博樹とは入れ違いで地元から出て行きます。
有難い事に新しい会社設立の、部署の立ち上げに参加させてもらう事となりました。
立ち上げに忙しいため、残念だけど式は欠席させて頂きます。
お互い新しい道へ進むけど頑張ろうね。
結婚おめでとう!]
[連絡ありがとう。
新しい職場で活躍する事を祈ってる。
いろいろとごめん。]
このメールを最後に私と博樹は連絡を絶った。
私も盆と正月以外は地元へ帰る事も無くなり、忙しい間もカヨと時々旅行へ行ったり、食事に行ったりと楽しい時間を過ごした。
あれから5年。
カヨは3年前に付き合っていた彼と結婚し、今は2人目を妊娠中。
博樹も双子の男の子に恵まれたと、カヨから聞いた。
そして今日私は、
会社設立の時一緒に移動となった、他部署の2歳上の彼と結婚する。
美和抜きでの食事会にて
男1 「俺絶対、博樹は美和と結婚すると思ったわ!」
男2 「高校の時の美和、モテモテだったしな!何人かの
男子に告られてたの俺見たし!」
男1 「博樹メチャ意識してただろー。」
カヨ 「で?博樹は正直美和の気持ちに気付いてたの?」
博樹 「・・・」頷く
3人 「クソだろ!この男!女の敵だわ!」
美和とカヨの会話
カヨ 「博樹、美和の気持ちに気付いてたってさ。クソだな!」
美和 「気付いてたのかは知らないけど、私とは幼馴染だって言われたよ。」
カヨ 「マジクソだな!!!」