1 婚約破棄
婚約破棄だ。優秀なマリエ―ルに対して劣等感を持っていた王子。こんな形でしか婚約破棄が出来ないのか。
1 婚約破棄
王子は子爵令嬢を傍らに置き全学生の前で宣言する。
「私はマリエ―ル公爵令嬢との婚約を破棄する。子爵令嬢への過度ないじめ、忘れたとは言うまい。」
始めはまともに聞いていたが馬鹿らしくなってきた。親が決めた結婚。始めからあなたなど好きじゃないわ。さんざんに言われたが最後に言い返した。
「勝手にしなさい。」
私は両親に全校生徒前で婚約破棄されたので冒険者になると言って必要なものをアイテムボックスに入れると家を出て行った。私は転生者だ。運動も勉強も得意な高校教師だった。陸上部の顧問で100メートル走は11秒を切る。もう少しでオリンピック選手だった。大学は理学部で、就職は高校の物理の先生になった。学生の声に耳を傾け青春の相談に乗った。死因は地震だ。車の運転中ブロック塀が倒れてきた。マリエ―ルの死因も地震だ。7歳の彼女には本棚から本落ちてくるのが耐え切れなかったらしい。
転生後マリエ―ルはやたら元気になった。一日中走っている状態だ。同時に学習意欲も高くこの世界のことを次々吸収していく。王子の婚約者としての王妃教育は少し苦手だ。マナー、ダンス、社交は何となく興味がわかない。
10歳になって同じ学校に通うようになりあまりのギャップに同調仕様がない。勉強にもスポーツにも興味のない王子と一緒に何をすればいいか判らない。それが今日の原因なら仕様がない。冒険者として生きるしかない。
冒険者として生きることに魅力がある。魔法が使えることは判るのだが、全力の魔法を使ったことがないのだ。人の目、被害を考えると使えないのだ。しかし、令嬢人生と比べ厳しいこと確かだ。13歳の少女にとって楽な生き方ではない。命の危険もあるだろう。マリエ―ルのような気弱な美少女はカモと思われるかも知れない。その時は魔法だ。遠慮入らない。殺しても問題はない。公爵令嬢の肩書があれば無礼討ちではないものは冒険者ギルドにはいないだろう。でも大事にするのも面倒だ。ほどほどにしよう。
勢いで飛び出したが今は夜だ。冒険者ギルドは開いていない。仕方ない。草原で魔獣狩りをしよう。
大まかには地理感はある。山の方に行けば草原がある筈だ。マリエ―ルはフライで飛び立たった。
マリエ―ルの父親は王城に向かった。あまりの勢いにメイドはたじろぐ。他のメイドが国王に取り次ぐ、公爵は直ぐに国王に招かれる。
「全て息子の失態だ。廃嫡しよう。第2王子を皇太子にする。マリエ―ルは皇太子妃だ。」
その決定はいくらか公爵を冷静にさせた。王子の処遇ついて聞く。
「今は私室で謹慎させている。時期を見て廃嫡を言い渡す。男爵の養子にでもしよう。」
子爵の娘や一緒にマリエ―ルを糾弾した取り巻きの扱いについて聞いた。
「全員謹慎中だ。マリエ―ルが退学するなら、全員退学させる。調べに素直に従わないなら別の処分も考えるが。今の段階では子爵令嬢は人に好かれるタイプらしい。特別優秀ではないので息子のプライドが保てるらしい。それに美人らしい。」
これだけの情報では全員退学で王子の廃嫡が妥当か。
「第2王子との婚約は難しいかも知れません。マリエ―ルは先ほど冒険者になる旅に出ました。」
国王は悲痛な顔になった。
第1王子は廃嫡。マリエ―ルは皇太子になる第2王子に嫁がせるそうだ。冒険者になるマリエ―ルには難しいのではないか。