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9話ー『死亡フラグ』

 ーー記述式魔法。

 人読んで“保存魔法”とも呼ばれるルーン文字を宿した魔術刻印は、よく魔道具に使われている魔法のことを言う。

 魔道具とは、魔法の力を封じ込めた道具のことで。

 その力を封じ込める為に使うのが、この記述式魔法と言うことになる。


「魔石って本当に便利だよなぁ」


 その利便性について、この世界において知らない者など居ないだろう。

 魔力伝導率100%を誇る、半魔導体物質。

 日本で言うなら、半導体素子のような性質を持ち合わせた魔力鉱石となっている。


「まぁ、竜宮王国ウェブレディオは、主にこの魔石産業で発展を遂げて来た国の代表ですからね。

 あの魔導戦機にしたって、今やその骨格の大部分に魔石が使われていることは知られています」


「魔力伝導装甲 《マジック・フレーム・カーボンアーマー》、か……。

 確かにあの機能は、画期的だった」


 俺がそう答えると、ぴえんは誇らしげに胸を張る。

 浮かべたどや顔を軽く眺めて、


「俺もいつか欲しいよなぁ〜」


 ーー自分だけのオリジナル魔導戦機。

 そんな思いを胸に抱かせる。

 国家王国騎士になって魔導戦機に乗る。

 それは生前の俺の夢だった。

 その中でも特筆して優れた魔導戦機乗りは、ユニーク魔導戦機と呼ばれる自分だけの機体が与えられる。

 そんな期待感にワクワクしていたところ、ふいにぴえんはその左目に巻かれた眼帯に手をかける。

 紫色のボブカットが揺れて、隠れていた左目が顕になる。

 その瞬間、俺はゾクリと肩を震わせて立ち上がる。


「あ、赤い籠の目ーーッ!!」


 ぴえんの左目の色に見覚えがあった。

 それは見紛うことなき赤い瞳、籠の目と呼ばれる真紅の瞳だった。

 まさかとは思うが、籠の目の冒険者と言うのは“ぴえん”のことか?

 ゴクリと生唾を飲み下して、俺はぴえんの顔を青ざめた表情で見下ろす。


「あぁ、これはカラーコンタクトでちよ。

 鑑定用の魔法が込められた魔道具になるんで、記述式魔法を使う際に便利なんでち……」


「な、なるほど……!! ははっ、なんだそうか!!

 てっきり俺は、勘違いして……!!」


 なんだ、カラーコンタクト型の魔道具か……。

 ーー脅かしやがって!!


「けどま、いつか絶対に捕まえてやるさ……」


 ふぅっ、と安心して着席しようとしたところ。

 ぴえんの顔色が、その瞬間に凍り付いたのが分かった。

 冷めた視線が俺へと突き刺さり、


「誰を捕まえるんでちか?」


 座ろうとした俺の身体が、屈もうとするその途中で石のように硬直してしまう。


「誰って言うか、その……ごめん、別になんでも無いんだ

 ただ、すこし昔の話を思い出していて、それで……」


 わざとらしい言い訳の言葉を並べて、俺はその話題を逸らそうとした。

 まさかそこに食い付かれると思ってもみなかった俺は、冷や汗ダラダラでぴえんの冷めた瞳を見つめていた。


「そうなんでちか?

 でも、私はあなたには、捕まえられないと思いまちよ……?」


「はっ? それって……どういう……?」


 告げられた言葉の意味が分からない。

 だけど、その言葉の一言でハッキリとした。


(間違いない。ぴえんは、あの7年前の事件について何かを知っているんだ……)


 そんな相手を前に、迂闊に鑑定用の魔道具を使わせてしまった。


(ーー失態だッ!! やらかしたッ!!)


 この場をどうやり過ごすべきかを、必死に考える。

 その思考に追い打ちをかけるように。


「どうかちまちたか?」


 わざとらしく赤ちゃん言葉を使って微笑むぴえん。

 俺はそのまま歯軋りをして着席した。


「何でもないんだ。続けてくれ……」


 どの道、今のぴえんには証拠がない。

 問い詰めたくても、疑わしきをそこで罰したら、俺はあの憲兵兄弟に取り押さえられることになるのは目に見えている。

 ちらりと背後を一瞥する。

 ドゥクスとレイズの様子を伺いつつ、俺は顔を真っ直ぐに戻してぴえんを眺めた。


「クールなんですね? ニシジマさん(・・・・・・)は?

 キスしてあげたくなっちゃうなぁ〜」


 そう言ってぴえんは、舌を出してちゅろりと舐めるような仕草を取る。

 ツヤのある艶かしい唇が、真っ赤な口紅をチュパチュパと舐めて音を立てる。


「クソッ!! テメエ中々思ったよりエッチいじゃねえかよッ!!」


 そんな仕草と共に、キャラメルの焦げたような甘ったるい声で囁かれては、俺も男として反応しない訳には無作法と言うもの。

 だが、ここは理性を働かせて抑えるしかないシチュエーション。

 たまらなく違った意味でも怒りを覚える。

 ーーおあずけだッ!!



 施術が終わり席を外すと、俺は再び憲兵兄弟の前に立っていた。


「おっ、シスター。無事に施術は終わったみたいだな?」


「よぉ、ブラザー。ようこそ竜宮王国ウェブレディオへ」


 ドゥクスとレイズの二人に見送られながら、俺はその鉄柵で出来た城門を潜り抜ける。


「はぁ……なんとか入国できたは良いけど……」


 正直に言って先が思いやられる。

 深いため息をしんみりと吐き捨てながら、俺は王都の街並みをぐるりと見上げた。

 青空の下に幾重にも繋がる、煉瓦造で出来た無数の家屋。

 その街並みの最奥には、二棟の屋根を有したタージマハルのような宮殿がそびえている。


「あそこに行けばカイトに会える……」


 それは間違いないけど、幸先はハッキリ言って最悪のスタートだ。

 ぴえんに鑑定魔法を使われてしまい、俺の元の名前があちらサイドにバレてしまっている。

 ぴえんがその情報を言いふらすような羽目になれば、俺の身の危険はすぐそこまで迫ることだろう。


「今はまだ、ぴえんはその情報共有を怠っている状態だ……」


 こうして俺が入国できたのが、その証拠と言っても過言ではないだろう。


「先に俺がするべきことは、鑑定魔法対策か……」


 早いところを手を打たなくては、俺は間違いなく殺されて三度目の死を遂げる。

 そうなったらせっかく始まった第三の人生が、すべて水の泡に帰す。

 一度殺してきた相手に自分の名前や身分がバレる。

 そんなことをあの7年前の事件の犯人たちに知られては、真っ先に俺を始末しようとするに決まっている。


「真っ先に目指すべきは、ひとまず魔道具屋か……」


 そこならば鑑定対策用の魔道具が、もしかしたら手に入る可能性はあるかも知れない。

 東門の入国口から正面の商店街をぶらぶらと歩いていた俺は、一通り歩くと逃げるように脇道の路地へと逸れて行く。


(俺の記憶が確かなら、魔道具店は南門に面した歓楽街の通りにある……)


 7年の歳月が過ぎた未来の世界線だろうと、全く異なるパラレルワールドの世界線だろうと。

 元あった記憶を頼りに歓楽街へと向けて早歩きをする。

 真っ直ぐにコンクリートで舗装された路地を抜けようとするその途中、


「貴様がニシジマ・ノボルだな?

 では、早速で悪いが、ちょっと死んで貰うとする」


 そう言って俺の眼の前に立ち塞がったのは、緑色の流し髪を有した蛇目の男だった。

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