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24話ー『恋するアイズの悪巧み』

「ところでターニャ、一つだけ聞いても良いか?」


 俺がアランと出会う決心を固めた頃、ふいに横からグレゴリオが話しかけて来た。

 穴から這い上がることに成功したグレゴリオは、俺の隣に立ちながらその背中を向けて来ている。


「ん? なに?」


「どうしてお前は、あの魔道具店を庇ったりなんかしたんだ?」


「どうしてって言われても、俺が単純にそうしてやりたかったからだけど……」


「そうじゃなくて……その理由を訪ねている。

 他に……何か理由があったんじゃないのか?」


 そう言ってグレゴリオは、真剣なトーンで俺の魔導戦機のメインカメラに向かって機体のモノアイを向けて来る。


「ん~~、まぁ別に……無くはないけど。

 強いて言うなら、俺も単純に貧乏だったから……」


 7年前のあの日、俺も貧乏で金がなくて、それが理由でアランの仕事を引き受けた。

 結果としては、それがあの災難を引き寄せることになってしまった訳だが、金に困ってるヤツらは放ってはおけない。

 その気持ちは、俺にも痛いほどよく分かるから……。

 だから、


「少しでも自分の近くに居てくれそうなヤツらを、ちゃんと自分の手で裕福にしてやりたかったってのが、俺の元々の夢なんだ……」


「本当にそれだけのことが理由なのか……?」


「あぁ、本当にそんなことの為だけに、俺はお前との決闘を受け入れたよ。

 ……なんか不服か?」


「いや、ただ世の中には俺の知らない、バカなヤツらがまだ居たのだと思ってな……」


 そう言って自嘲気味に鼻息をこぼしたグレゴリオの真意は、俺にもハッキリとはよく分からない。


「この王都は……いや、この国家王国騎士と言う地位と職業は、お前が思っているほど良い物ではないと知れた時、お前はこの国をどうするつもりだ?」


「その時は、俺が頑張ってこの国を変えられるように務めるよ」


 無言で沈黙したグレゴリオは、それ以上その話をする気は失せたようだ。


「……2週間後の転入、楽しみにしているぞ。

 ようこそ、我らが国立オードリーレイクス魔導戦機学園へ。

 俺も……お前の転入を心より歓迎する」


 そう言ってグレゴリオは、機体を走らせる。

 砂埃を巻き上げながら外壁を蹴り上げ、青空に向かってめいいっぱい羽ばたくように飛び上がる。

 ワイヤーを射出して近くのビル街にフックをかけると、スパイダーマンのような要領で闘技場内を後にする。

 その様子は、


「まるで今からこうやって出てこいって、そう言わんばかりに綺麗なフォームだよなぁ……」


 ニッとコックピット内で笑みを零して、俺も同じように闘技場内を後にする。



 格納庫に戻ると、借りていた魔導戦機を元あった定位置に収める。

 ナーブギアとリストバンドを外すと、メイン電源を落として、次にコックピットから降りるべく床下の扉を開かせる。

 登って来る時に掴んだ取っ手に、降りる時は足をかけ、自動的に下がって行く途中で出てきたワイヤーをその手に掴んで降って行く。


「ええ勝負やったでえ~ッ!! ターニャたん~ッ!!

 流石は、うちの見込んだ冒険者やぁ~ッ!!」


 魔導戦機ネオから降りて早々のこと、興奮した様子でナズナが俺の腕に抱きついてくる。

 むっちりとした胸がぎゅうっと腕に押しつけられ、悪くない感触に思わずどぎまぎとしてしまう。


「ありがとうナズナ、おかげで助かったよ」


 身体は汗でビッショリだ。

 そんな俺を嫌がることなく抱きつかれてしまうと、なんだか自分の汚れが許されたかのような気分になる。

 そこへさらに一人の少女が駆け寄って来る。


「お帰りなさいターニャさん!!

 本当に凄かったですよっ!!」


 そう言って明るい声を発したのは、こげ茶色の跳ねっ毛を三つ編みで結んだ少女。

 言うまでもなく今回の影の主役の一人である、ミント・ボンハーネットだ。


「なに、これもミントの魔道具の賜物さ……」


 本人は、まだそのことには気が付いてないのかも知れないが、この“変わるくん1号”と言う魔道具に、一体俺がどれだけ救われているか。

 彼女は、そのことを理解するべきだ。


「俺にとってのヒーローは、お前だよミント」


 そう言って首飾りに手をかけると、ミントはきょとんと首を傾げて瞬きを繰り返す。


「あとで一緒にお茶でもしないか?」


「ええ、私なんかで良ければ是非っ!!」


「じゃあ、あとで一緒に冒険者ギルドに向かおう」


 ミントとすこし話したいことがある。

 鑑定用の魔道具を作り上げる為には、ミントの協力は必要不可欠だ。

 彼女の魔道具士としての才能は間違いない。

 その為の話し合いも兼ね、俺はひとまず冒険者ギルドに向かいたい。


「あっ、でも俺、そう言えばお金がないんだった……」


 誘っておいてお金がないなんて、ギルドのテーブル席に着席するのも気まずいな。


「なんやぁ、ターニャたん。

 自分から女の子をデートに誘っておいて、お金がないんかいなぁ?

 甲斐性なしなヤツやなぁ」


「悪かったな。と言うかデートじゃねえし……」


「違うんですか?」


 何かに期待していたようなミントの眼差しがとても胸にくる。


「話したいのは、魔道具店とかのことだよ。

 あのお店、これで借金がチャラになったって言っても、まだ経営自体は安定してないんだろう?」


「あっ……えっと、はい……そうなんでした……」


 浮かれ気分から現実に一気に引き戻されたミントは、顔色を青ざめさせると「はぁ」とため息を吐いて肩を下げる。


「そんなに落ち込むことはないよ。

 あの魔道具店、頑張れば結構人気になると思うんだよな」


「本当にそう思ってます?」


「あぁ、絶対に上手く行くって言う保証はないけど、俺と協力してあの魔道具店を復活させてみる気はないか?」


 ミント・ボンハーネット魔道具店の再建計画だ。


「なるほど……じゃあ、そういうことならこれを使って」


 そう言ってアイズは、白いミニスカートの制服のポケットから、何やら革袋のような物を取り出した。

 それを俺の手元に渡して来て、


「お金がいるんでしょ?」


「いや、それは流石に……悪いって言うか……」


「ぜんぜん悪くないから、絶対に受け取ってくださいッ!!

 そして使ってくださいッ!!」


 がっちりと両手をホールドをさせつつ、天使のような笑みを振りまくアイズ・クルシュト・レインテーゼ。

 一体、何が彼女をそこまで突き動かしているのかは知らないが、かなり強引に「受け取れ」と目で訴えて来ている。


「本当に貰って良いのか?」


「はい、本当に貰ってください。そして返さなくて結構です」


 強い言葉でそう言われてしまうと、俺とて引き下がる訳にはいかなくなる。


「まぁ、そういうことなら貰っておくけどさ……。

 なにか企んでたりってしないよな?」


「いいえ? 別に……完全なる私の善意ですけど?」


「そうか……じゃあ、ありがとうアイズ。行こうかミント」


 そう言って俺とミントは、先に格納庫を後にする。

 その様子を後ろから見ていた二人の国家王国騎士が、その瞬間、何やら悪巧みを企んだ笑みに変貌を遂げる。


「ふっふっふっふっ、行きましたにゃ姉御?」


 鳴りを潜ませたそのナズナの声に、俺は意識が回らず気が付けなかった。

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