第6章 魔法学校の章 第81話 王都から一旦離れた
「さて、どうしたものか」
俺は今のところ王立図書館で閲覧不可の書物を見る方法は浮かんでいない。
「ちょっと出掛けてくる」
「コータロー様、どちらへ?」
「ああ、ちょっと遠出だ。1か月ほどは戻らないと思うけど心配しないでくれ」
「1か月ですか、私は同行しないで大丈夫ですか?」
キサラは付いてきたそうだったが、キサラにはエル・ドアンの動向を見張っておいてもらわないといけないので連れて行けない。
「大丈夫だ。ドアンを頼む」
俺は次の日、キサラ以外には誰にも告げずに王都アステアールを出た。目的地まで馬車で約10日ほどだ。
途中の行程は順調だった。特段何事もなくロングウッドの森にあと1日のところまで来た。街道から少し外れた場所で野営していた時のことだった。誰かが近づいてくる気配に俺は目を覚ました。
「誰だ?」
「ああ、なんだ見知った顔ではないか」
そこに居たのはサーリール・ランドだった。
「サーリールじゃないか。あんたナーザレスとルナはあんたのことを知らないと言っていたけど、どういう事なんだ?」
前回ロングウッドの森を訪ねた時、色々と助けてもらったサーリールたったが、突然消えてしまったのだった。ナーザレスもルナも知り合いだと言っていたのに本人たちはどちらも知らないといい、サーリールの家と紹介された建物はナーザレスの別荘だった。
「なんだ、そんなことか。あれはただの戯言だ」
「戯言?」
「まあ、冗談だった、と受け止めてくれればいい」
「意味が判らないが」
「お前を揶揄った、という意味だよ」
なんなんだ、こいつは。なぜそんなことをする必要があったのか。ただ、確かに色々と手助けはしてもらったから全くの悪人と言う事ではないはずだ。やはり意味が判らない。
「そしてまた揶揄いに来た、と言う訳か?」
「いいや、今日はただの通りすがりだ。お前がここに居るのを知ってきた訳ではない。それで、何だまたロングウッドに用があるのか?」
「そうだが、それがどうかしたか?」
「どんな用なんだ?なんだったら私がてつだってやってもいいぞ」
サーリールは魔法使いとしては一流だとは思うが色々と性格的に問題が多すぎるし素性も知れない。それにあと1日でロングウッドの森だ、元々の目的はそれなのだ、ここでサーリールに関わっていることはできない。
「いや、いいよ。ロングウッドにもう着くから。てもなんであんたはこんなところに居るんだ?そもそもあんたは何者?」
「私か、私は今王都に向かっているところだ。何者だって?見た目通りのただの魔法使いだが?」
どこまでが本当でどこからが嘘なのか判らない奴だ。
「そうなのか。王都へは何をしに行くんだ?」
なんとなく気になって一応聞いてみた。
「王立図書館に少し用があってな」
えっ?それはどういう?
「なんでそんなところに用があるんだ?」
少し動揺したが出来る限り悟られないよう聞いてみた。
「うむ、ただの調べものだ。少し難しい魔法を憶えようとしているのだが、中々上手くいかなくてな。森には特にな魔法使いが居なかったので図書館なら何か参考文献があるのではないかと」
「それは普通に閲覧できる文献に載っているようなものなのか?」
「いや、閲覧するには中々手間がかかるのではないかと思っている。少し無理をしなければならないかも知れん」
無理?どんな無理だ?それはもしかして閲覧不可の文献を見ようとしている、ということなのか?サーリールにそれが可能なのだろうか。
「無理って、確かに閲覧できない文献もあるみたいだから、見れないんじゃないか?」
「そうだな。稀覯書の多くは閲覧不可の物が多いからな」
そうだよ、それで困っているんだ。こいつはそれが可能なのか?
「それを見る方法があると?」
「まあ、無いわけではない、というとこだ」
やはり何かの当てがあるのだろう。俺は元々ロングウッドに稀覯書の閲覧ができる方法を知っている魔法使いを探しに来たのだ。もしそれが叶わなかった場合は、ジョシュアの手を借りるつもりだった。一応その手の手段のプロなのだ。
ただ少し引っかかるところはある。俺がこのタイミングでここに居ることとサーリールが同じ目的で王都に向かう途中ですれ違わないで出会うなんて偶然なのか?
サーリールが今自分が言っているような理由ではなく、俺を嵌めるために動いているのだとすると目的はなんだ?
ああ、もう考えが及ばないことを幾ら考えても無駄か。
「そうか。俺も実は王立図書館で閲覧不可の文献を見る方法がないのか、それを探しにロングウッドに向かっていたんだ」
「ほほう、それは。偶然か?必然か?」
「判らん。でもお前が本当に閲覧可能ならば、俺も同行させてもらえないだろうか」
サーリールにエル・ドアンの話をどこまで話すか、と言う大きな問題があったが、今考えてもしようがない。
「まあ、私も確信を持っている訳ではないのでな。王都で少し人脈を使う必要やら色々と手を回して、それでも叶わないこともある。それでもいいか?」
「ああ、それでもいい」
俺は結構な賭けだとは思ったが、この実力だけはありそうな素性の知れない魔法使いを信用(利用)することにしたのだった。




