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第6章 魔法学校の章 第80話 王都で心配した

「元の世界に戻りたいのか」


「君は戻りたくはないのですか?」


「当り前だろう。元の世界では還暦になるまで特段楽しいことも何もなく過ごしていたんだぞ、あんな場所には戻りたくはないな」


「そうなんですね。今のこの姿と能力持って戻れるとしたら、とても楽しいことになると思いませんか?」


 こいつはもしかしたら飛んでもなく悪い奴かも知れない。魔法の無い世界にドアンレベルの魔法使いが突然現れたら世界征服だって可能だろう。


「楽しいって言うか、元の世界で魔法を使って何がしたいんだ?」


「今のところは特に何も考えていませんよ。でも魔法の無い世界で魔法が使えるのなら特別な存在に成れると思うんです」


「特別な存在に成りたかったのか」


「それは誰でもそうじゃないですか?」


「俺はただ平穏無事でいいけどな」


 やはりドアンは元の世界には返してはいけない奴らしい。まあ、元の世界に戻る魔法がなければ問題ないんだが。


「でも、やっぱり一方通行なんじゃないか?」


「いや、多分歴史上の偉人や奇跡を起こしたと言われる人々の一部はこの世界からの帰還者じゃないかと僕は思っているんです。もしそうなら絶対に元の世界に戻る魔法や方法があるはずです」


「まあ、俺は興味がないな。ドアンがそれを探すなら止めはしないけど手伝いもしない」


「そうですか。同じ目的の方に出会えたんじゃないかと期待していたんですが。判りました、ではもし元の世界に戻る方法が見つかったとしても?」


「教えてもらう必要は無いよ」


「なるほど。でも、僕の足止めの目的でここに来られたのであれば、もうその目的は果たされたと思うのですが、これからどうされるんですか?」


 元々エル・ドアンをジョシュアたちの捜索に出られないように足止めしたかっただけなので、その意味では目的は達している。後はキサラの魔法修行と、そうだな王都を見たかった、くらいか。


「そうだなぁ、特別やりたいことも無くなったし、どうしようかな。ここでドアンの授業を受ければ俺も立派な魔法使いに成れるかな?」


「そうですね。キサラさんの方が覚えは速そうですが、君もちゃんとした魔法使いに成れると思いますよ」


「なんだよ、普通に教師やってんだな」


「いつもちゃんとやってるでしょう」


「まあそうか」


 その夜の話はそこで終わった。


「ドアン先生はコータロー様と同じ転生者だったんですね」


「そうだな。そこでだ」


「はい」


「ドアンの目的は阻止したい」


「えっ?」


 俺はそれからキサラにドアンか元の世界に戻る方法を探している事と、もしそんなことになったら元の世界が大変なことになることを話した。


「なるほど、それは問題かも知れませんね」


「大問題だよ。悪意を持ってドアンのような伝説級魔法使いを元の世界に放ったとしたら大混乱になってしまう」


「それでドアン先生が元の世界に戻る方法を見付けられないようにする、ということですか」


「そうだな。元々ないのかも知れないけど、もしあったとしたらドアンが見つけるよりも前にこっちが見つけて隠してしまうか破棄してしまう、というところかな」


 先に見つけた方が勝ち、ということだ。マナの量であれば俺とドアンは遜色ない。ドアンが出来る魔法なら、工夫や努力をすれば俺にも可能かも知れない。勿論使うつもりはないが。


「では学内の図書館や王立図書館を探すことから始めるとしましょうか」


「既にドアンが探した後だろうが、まあ、そこから始めるしかないか」


 次の日からキサラは授業を受けながら学内の図書館を、俺は授業をサボって王立図書館を探し始めた。古い文献を始め古代魔法が書かれた魔法書の数々。正しのその中には閲覧不可能な物も多い。


 それはドアンにしても同様だがドアンが学校長を通じて閲覧の申し出をすればある程度の物は可能になるはずだ。そしてその方法は俺には使えない。


 約1か月間、不眠不休で探索してみたが、やはり一般人でも閲覧可能な書物の中には何も見つけられなかった。膨大な魔法書を閲覧したが異世界についての記述すら見つけられなかったのだ。


 俺もジョン・ドウもこの世界に来た時、元の世界の話をしないように釘を刺されたりはしなかったので、ごく一部ではあるが知っている人は知っている、程度には知識として認識されている筈だった。


 それなのに全く文献に記述がない、というのは腑に落ちない。何者かが隠そうとして隠している、ということになるのか。


「なんとか閲覧できる方法はないものか」


 幾度となく自問してみるが自答が出来ないでいた。キサラの方も特にこれといった記載を見付けることは出来ていない。


「申し訳ありません、コータロー様」


「いいよ、学内に記載がある文献があったのならドアンはとっくに見つけているだろう。こっちも手詰まりだし、さて、どうしたものか」


 それから暫らくは一般でも閲覧可能な文献に隠して記述されていないかを検証する作業に追われていた。


 しかし何処を探してもやはり記述は見つからない。これは本格的に閲覧不可能な文献に手を伸ばす必要がありそうだ。


 学校長からの申請で閲覧可能になる文献は、閲覧不可能な文献の一部でしかない。オールマイティではないのだ。となるとやはりドアンでも閲覧できない文献の中に記載がある、と見て間違いないだろう。問題は、俺とドアンのどちらが先にたどり着けるか、だな。


「無い知恵を絞らないと。絞っても何も出ない、なんてことも十分あり得るよな」


 許可を得ることなく物理的に閲覧する、と言う主文に出なければならないかも知れない。その際にどんな抵抗があるのかは想像が付かなかった。


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