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第6章 魔法学校の章 第72話 王都で質問攻めだ

「おい、ちょっと聞いて良いか」


 エル・ドアンが教室を去ると直ぐに生徒の一人に声かけられた。12名居る生徒の中では一番年上の子のようだ。


「いいけど、君は?」


「僕の名前はヨーレル・ツイート、18歳でここでは一番年長になる」


「ヨーレルね、よろしく」


「よろしくするかどうかは、これからの僕に質問に対する返答による。君は一体どうしてエル・ドアン先生の推薦を受けられたんだ?」


「おいおい、ついさっきその話は先生がしたところだ。俺からは言えないんだ、悪いな」


 エル・ドアンは俺が話しても判る、と言っていた。彼のことだから本当に判るのだろう。


「ドアン先生は俺から話しても判るって言ってたんたぞ、冗談だと思うか?」


 ヨーレルの顔色が変わる。その手の冗談を言う先生ではないことを思い出したのだ。


「ちゃんとドアン先生が俺を推薦した理由を自分たちで見つけないと駄目なんじゃないのか?」


「それはそうだが。ではお前は自分でその理由は知っているということだな」


「まあね。その時に言われたから間違いないさ」


「判った。絶対に見つけてやる」


 そう言うとヨーレルは俺を睨みつけてどこか行ってしまった。


「ごめんね、ヨーレルは一度上級試験に落ちてから、あんな感じになってしまったんだ。元はもっと自信に満ちた好青年だったんだが」


 次に別の生徒が俺に話しかけてきた。


「僕はロールシード・ラウン、ヨーレルと同じ18歳だよ。ロールと呼んでくれ」


「ああ、ロール、よろしく。18歳で上級試験なんて相当優秀なんじゃないか?」


「そうだね、ここにいる全員が中級魔法士で上級合格を目指しているんだけど、この若さで皆んな中級ってことは選ばれた存在だという事さ」


 普通の奴だと思ったが、こいつもちょっとオカシイな。


「で、二人とも上級ってことは、ここで特級でも目指すつもりなのか?」


「いや、俺は元々初級を受けに来たんだよ。それで魔法学校に入るつもりだったんだが、いきなり上級にさせられたんだ。キサラはちゃんと試験に合格した、歴とした上級魔法士だけどね」


「そうだろうな、特級の試験なんてないからね」


「えっ、そうなのか?」


 伝説級は別として特級も試験があるものだと思っていたが違うのか。


「上級魔法士の中で特に功績があった魔法使いを、特級魔法士二人が推薦してくれれば特級になれるんだよ」


「試験じゃなくて推薦なんだな。でも上級は」


「そう、上級は推薦なんて制度は無いし、過去推薦で合格した例はただ一人、ドアン先生だけだ」


 なるほど自分がその体験者だったのか。


「ロール、自分だけヒントを得ようなんてズルいよ、僕らにも彼と話をさせててよ」


 さっき発言していたイーデル・リーンが割って入る。ヨーレル以外の他の生徒も集まって来た。俺は仕方なしに全員の質問に答えることにした。


「コータロー様、人気者ですね」


 キサラが揶揄う。ただ慕われているというよりは何とか理由見つけて自分が上級になりたいのだ。


 聞くとここに来ている生徒は貴族の次男や三男、若しくは女の子で貴族の跡を継がない立場の子と少しだけ庶民の子が居た。爵位を継げなければ自分で身を立てなければならないのだ。


 庶民の子はよほど優秀でなければ魔法学校には入れない。学費は到底支払えるものではないので奨学金を受けられるレベルが最低限なのだ。


 一通り自己紹介や質問攻めを受けた後、やっと解放された俺は全寮制の自室に戻った。すぐにキサラが訪ねて来た。


「コータロー様、これでよいのでしょうか?」


 キサラの疑問は当然だ。元々の目的はエル・ドアンの動向を探って、できればジョシュアたちの捜索には行けない状況を作りたかった。その為にはどうすればいいかを探りに来たのだ。


「さて、どうしたものかな」


「ドアン先生は特に何も疑ってはいられないようですが、いつ何かにお気づきになられるかは予断を許しませんね」


「異常な天才児だからな。いつどこで引っかかってしまうかわ想像も付かない。襤褸を出さないよう慎重に対応にしないと駄目だ」


「ドアン先生の教室に入ったのは失敗だったのでは?」


「ああ、でもあの状況で彼の申し出を断るには普通で考えれ長谷魅力的すぎる提案だったからな。断ったら逆に何か感づかれてしまう可能性が高い」


「そうですね。では明日からはどうしましょう」


「普通に魔法の修行でもするしかないな。キサラは何も考えずに修行に励んてくれればいいよ。いつか絶対に奴に立つから」


「コータロー様はどうなさるんですか?」


「俺か、俺はちょっとエル・ドアンを揶揄ってやろうかな、とか悪いことを考えているさ」


「悪いこと?」


「キサラは知らなくてもいい。むしろ知らない方がこっちがやり易いんだ」


「そうなんですか。判りました、コータロー様にお任せします」


 キサラは少し不服そうだったが、そのまま引き下がって部屋を出た。俺は悪だくみの準備の為に夜の街に出るのだった。

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