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第8章 戦乱の兆しの章 第103話 戦乱の兆し⑤   

シータ王女の守護隊の選抜や陣営は任せることとして俺たちより一週間後で出発してもらう。


 俺は先発してロングウッドの森に向かう。シルザールで合流する予定だが、問題はベルドア・シルザール公爵の動向だった。


 国王に次ぐ大貴族の公爵の影響力は大きい。お抱えの魔法士も多いし騎士団の規模も大きい。


 シルザール公爵の協力はワリス・ボワール伯爵の以来であれば可能かと思う。ワリスはヴァルドア師匠から頼めば多分大丈夫だ。


 まずはその前にロングウッドの森なのだが。


「師匠、準備はいいかい?」


「準備も何も、いつもの手荷物だけで他は要らんからな。それと馬車ではなく飛翔魔法で行くが付いてこれるのか?」


 俺は飛翔魔法をまだ使えない。覚えようとはしていたのだが間に合わなかったのだ。


「無理だよ師匠、俺は飛べない」


「なんだ、まだ使えなんだか。では仕方あるまい、お前は後で追いついて来い」


 そう言った途端、師匠の姿は空にあった。


「おいおい、気が早いな。まあ確かに仕方ない、俺は馬車で急ぐとしようか」


「コータローさん」


 馬車に乗り込もうとする俺に声を掛けてきたのは見知った顔だった。


「なんだ、どうしたんだ、ノート・クリスト」


 それはエル・ドアン教室の上級魔法士ノート・クリストだった。それにもう一人サシャ・ネール。


「それにサシャも。こんなところで何をしている?」


「コータローさん、僕たちも連れて行ってくれませんか?」


 どこで俺の行先や目的を知ったのか、二人は俺に付いてくると言う。


「駄目だ、お前たちはまだ学生じゃないか。王都の魔法士部隊も同行するんだ、お前たちの出番はないぞ」


「学生なのはコータローさんも同じじゃないですか」


 それはそうだ、俺とノートたちはエル・ドアン教室の同級生だ、学生と言えば学生に間違いない。


「それは詭弁だな。俺とお前たちは立場が違うし年齢も立場も違う。それはノート、お前が一番判っているんじゃないか?」


 ノートはマナの量を感知することが出来る。この能力は相当レアなものだ。


「コータローさんが異常なマナの量をお持ちなのは判っています。ただ魔法そのものはまだまだ、ということも確かですよね。単純に魔法を使う術なら僕の方がまだ使えると思います」


 ノートは俺を馬鹿にしている訳ではない。本気でそう思っているのだ。それにしても危険な戦場に赴く理由にはならない。


 確かにノートの方があらゆる魔法を上手く使えるだろう。ノート達エル・ドアン教室の生徒は天才ばかりだ。


「それに僕がコータローさんに付いていく意味があるんですよ」


「意味だと?」


「そうです。僕のエル・ドアン教室の研究内容は語損ではありませんか?」


「悪い、知らないな」


「知らなくて当然です。僕とサシャとエル・ドアン先生しか知りませんから」


 それなら俺が知っている訳がない。ノートは何が言いたいのか。


「この研究は他者に知られると悪用されてしまう可能性が高いから秘匿性の高い部屋で三人で研究していたのです」


「そう言うことか。それで、その研究がどうかしたのか?」


「その研究の成果が出た、ということです。これはドアン先生もまだ知りません。報告する前に旅立たれてしまいましたから」


 完成したのがつい数日前ということか。それにしても話が見えない。ノートは何か言いたいのだ。


「で、何の研究をしていた、と言うんだ?」


「第三者によるマナの利用、です」

 

 おいおい、それは他人のマナを勝手に使える、ということか。それは間違いなく悪用されるだろう。相手のマナで魔法を使って枯渇されてから自分のマナを使った魔法で攻撃する、なんてチートが過ぎるだろう。強制的にではなく相手の承諾が必要であれば問題ないのだが。


「それは危ない魔法だな。それで第三者のマナを使うには制限があるのか?」


「勿論ありますよ、無制限であればそれこそ問題しかないじゃないですか」


 よかった。元々魔法が使えないのであれば問題ないのだが魔法使いがマナを使い切ってしまったら暫らくは動けなくなってしまう。


「どんな制限があるんだ?」


「依頼と承認です。マナの使用をお願いして許可をもらえれば他人のマナが使えるのです。使えるマナの量も例えば半分だけとか四分の一だけとかの制限も付けられます」


 細かい制約、というか契約が必要、ということか。それだけマナの借用は高度な魔法だと言うわけだ。


「なるほどね、それで俺のマナをお前が使う、ってことか」


「そうです。攻撃魔法も防御魔法も僕の方が上手く使えます。サシャも防御魔法や移動魔法なら僕より上手です。ただあなたほど大量のマナが僕たちには無い」


「それで俺に同行しようと言うのだな」


「そうです。きっとお役に立てると思うのです」


 同行したい根拠は判ったが、同行したい理由が判らない、という感じだ。

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