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生まれ変わったら飛べない鳥でした。~ドラゴンのはずなのに~  作者: イチイ アキラ


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第90話 私は――間に合った!


 ロザリーさんにお尋ねしたことがある。

 獣王国への旅はいろいろあった。そのうちに、流れで。


「どうして、そんなに強いのに、初めてあったときはゴブリンから逃げていたのですか?」


 この世界でわずかなりに過ごして、やはりゲームの世界のようにゴブリンはさほど強くはないと思ったから。

 旅の合間に遭遇したりして、あっさりとガロンに……ゼノンにすら倒されたものたちに。でも確かに厄介ではあったけど。一匹見かけたら……ぞろぞろ。


 しかし、ロザリーさんは柔らかく微笑む。


「あたら命を奪うこともあるまい?」


 本当に。

 それはそうだなぁ。

 ゴブリンとて魔物。しかして命に変わりなく。


「いや、私と雇い主の命を優先するけれどな」


 本当に本当に。

 それもそう。

 ロザリーさんだって自分の命が大事。


 彼女は、その切り替えが――見極めが見事。御見事。


 半年の間の道中、彼女が躊躇いもなくこちらを襲って来た破落戸や盗賊を手にかけるのをみた。私が省エネになってからは、魔物も。


 彼女は必要あらば、殺す。殺せる。


 それは本当に必要あらば、だから。

 今、まさに。

 殺すより殺さない方が大変なときもある。

 獣王を一介の冒険者が殺してはならないから、防御に徹しているのは――流石としか。


 ロザリーさんがその剣技によって皆の視線を集めてくれているその隙に、私はゼノンに頼んでひっそりと移動してもらっていた。ガロンも私たちを護るように、同じくひっそりと共に。


 リョウガの……贄のところに。


 私たちは間に合わなかった――だけど!


「……ぁ、ふ……っ……」


 私が、いや私を抱いたゼノンがリョウガのところに着いたとき。

 彼が咳き込んだ。気管に血が入り、苦しげに。

 それは最後の一呼吸。


 私たちは(・・・・)間に合わなかった――間に合った! 私は!(・・・)


 儀式を止めることに間に合いたかった。本当はそれが一番良かった。こんなことになっちゃいけなかった。

 でもリョウガは即死じゃなかった。不幸中の唯一……て、言ってもいいのか解らない。

 獣王があえて致命傷を避けたのか。やはり子どもを手にかける躊躇いがあったのか……それともあえて、長引き血が流れるようにしたのか、それは解らない。

 解らないが、私はそれに――!


「……子どもに酷いことしてるんじゃあない!」


 リョウガの命が尽きる、その瞬間であった――が、間に合った! もしもこれが賭けなら、私は全振りした!


「返せ!」


 ――と、命令した。

 その、捧られたものに対して。

 産まれて初めての、咆哮だった、かもしれない。


 ドラゴンとして――命令したのだ。


「子どもなんか受け取ってるんじゃあない! ちゃんとしっかりもとに! 色つけて、戻せぇ!」


 それは、ドラゴンじゃなくて人間として当然の怒りだったと思う。

 そして賭けから、不思議とそれは当たり前の命令と思えた。

 私の中の天秤が、また再びドラゴンへと傾いていたのだろう。


 私は、かつて森の地下で、同じように。


 不思議と、それ(・・)は私より下だと、感じていた。



 ――かしこまりました。


「……ぺっ!」

 小さく羽先を、ぐっと。

 やはり同じような存在だったのだろう。

 あの時、あれは私に手出しすることを拒み、逆に私の言うことを聞いてエリナさん自身を贄にした。

 あの時と同じような響きの声が私に応えた。

 泥の塊を踏むかのような不快な、しかしてせせらぎの調べのような清らかな。そんな不思議な声で。

 

 それはドラゴン()の言葉の方を優先した。

 贄を捧げた者よりも。

 ドラゴンとこの存在の関係は解らない。


 けれども、私は――間に合った!


「――かひゅ……っ……」

 目の前の幼い命が、最後の一呼吸だったはずのそれを。もう一度、咳き込むことが出来た。

 それは気管に入った血にむせたことで。

 ひゅー、と空気がその胸に吸い込まれて。

 やがて上下する。

 流れた血は戻らなかったのか胸とかは真っ赤なままだけど。でも明らかにその白い頬には血の気が戻っていた。

「……良かった」

 私は、そして私を抱きしめていたゼノンも横にいたガロンも、ほっとため息をついた。


 私にも解っていた。


 もしもリョウガが、その一呼吸。最後のそれをしなかったから、私の声も叶わなかった、と。

 死んだものをどうにかできるのは――神の域だ。


 ドラゴンは神の如くであれども、神ではない。


 私は、本能的に、何となく解ったのだ。


 だから、間に合った、としか。

 もしもベニユキさんの抵抗とかあれこれなかったら、間に合わなかったかも、だ。その数秒間。

 その貴重な数秒、彼やリョウガ自身が頑張ってくれたから、リョウガは間に合った。

「ふぅ……ギリギリ……」

 本当に。


 そして私は不思議そうに目を開けたリョウガに――びっくりして。

 さっきまではベニユキさんと同じように「白い子」な特徴の白髪に赤い目だったリョウガは。ゼノンの糸で見た時は確かにそうだったはずなのだけど。


 明るい橙色に変わっていた。


 髪は白いままだったから……いや、よーく見たらだけどもちょっとだけ黄色? クリーム色? でもどちらかというとやっぱり白?

 髪の色までは無理だったって感じ?

「……あ」

 そういや「色つけて」て言ったわ、私が。

 感覚的には「出血多量に無理言いますけど回復させて」てつもりだったんだけども……。人間だった時の感覚で言っちゃいました。実家の作物のときの、商売商売。


 でもリアルに色を――おまけをつけて、リョウガを戻してくれた。


 それは彼の母の、最愛の。

 亡き父親と同じ瞳の色で。




 これがっ、ご都合主義ですっ!(何故か格好いいポーズ(あえて某四部の(解る人には解る)


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