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生まれ変わったら飛べない鳥でした。~ドラゴンのはずなのに~  作者: イチイ アキラ


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第88話 彼の願い。


 獣王コウランは、若返った。

 若返りを望んで、願ってしまった。


 贄の儀式で。


 獣王のみに代々引き継がれる最後の御業とも。

 それはあの森の国と同じく。引き継ぎには資格的なものがあるのだろう。長子相続や――王にだけ、と。

 こんなこと、誰それに気軽に使えてたまるかだもの。

 獣王の祭壇には、私達が遭遇したあの黒いものがいた(・・)。それまで同じものなのか、果たして別なのか、私にはわからなくて。


 ただ。


「……どうして?」

 ヒョウカさんのつぶやきに。私も同じように疑問に思っていた。


「……ああ、先生」

 コウランはそんなヒョウカさんの姿を視認して、嬉しそうに微笑んだ。


 彼は、それはそれは嬉しそうに。


 微笑んだんだ。

 袖を血に濡らして。

 贄の子を、犠牲にして。


「どうして!?」


 その叫びは泣き崩れるシュンレイさんを支えるゲンヤさんからだった。

 それは様々な疑問を含んでいた。


 どうして。

 獣王は病平癒の為に贄を求めたのではなかったか。

 だからその為に桑呀は、シュンレイさんは、リョウガを差し出した。血の涙を流すように。

 リョウガも、自分の命で国の皆が助かるなら。そして母の覚悟に、自分も覚悟を決めたのだ。

 白くか弱く生まれ、母に叔父に迷惑をかけてばかりの自分の命に使い道ができた。

 何よりも国のため。

 それが、こんな……。


「ああ、先生……」

 獣王の視線の先。

 彼の師であるヒョウカさんだ。


「やっとお会いできた……」


 ……お会いできた?


 ああ、そういえば長らくお手紙だけだと、ヒョウカさんが言っていたっけ?

 ランエイさんが弟の側に行ったのを私たち、私を抱っこしたゼノンもそろそろと、気配を殺しながら追いかけていて。魔物の彼は気配殺すの上手い。

 ガロンも察してくれて、ロザリーさんとふたりでこちらに来てくれた。ガロンも気配殺すの上手いし、ロザリーさんもやっぱり上手かった。私の仲間はすごいね。状況が状況じゃなかったら自慢したかった。

 この儀式の広間にはまだ獣王の兵士たちがいたから。

 今は狼の獣王の世だから、割合的に犬科の獣人たちが重宝されているとあるように。儀式の護りはやはり狼や犬の獣人たちが多い。

 彼らも戸惑っているようだが。


 ……ん?


 つまり彼らにも予定外、いやさ予想外なのかな?

 けれども、獣人という種は――頭に従うものであると。私も後々、よっく理解した。

 彼らはその状況でも王に従ったからだ。


「コウラン……これは、どういうことですか?」

 今、その問いかけはヒョウカさんにしかできなかっただろう。彼の師であり――あんな笑顔を向けられているのだから。


「ああ、先生」


 コウランは感極まったようにヒョウカさんを呼び、そして己の手を握りしめた。そして開き、また握りしめる。己の身体を、確かめるように。


 そして晴れやかな笑顔で――。


「これでまた、お供ができます」


 晴れやかな笑顔で、言った。

「なりたくもなかった獣王でした……一族のため、民のためだと、長く耐えました……」


 コウランは、獣王になりたくなかったと言った……。


 彼が語るには。

 彼はヒョウカさんの教え子であった。ヒョウカさんの竜探しの旅にもお供を。

 けれども旅をやめる時が来た。

 一族のために獣王の選別に出なければならなくなった。


 獣王とは、強く賢く、そして美しいものが選ばれるものだそうだ。


 そして獣王はその種族の誉れ。己の一族が、この国で優位にたてるのだ。

 現にこの国では現在は、オオカミ種や犬の獣人たちが幅を利かせているように。

 だからコウランの一族は。一族の中で一番強く美しかったコウランを、先の獣王選別に出したのだろう。

 コウランも、その時は納得していた。


 そうして。


 コウランは獣王となった。

 選ばれた――選ばれてしまった。


 ……けれども。


 彼は国に尽くした。一族に応えた。

 自分の願いを捨てて。


 この、老いらくの姿になるまで。


「鏡を見るたびの絶望でした……」

 コウランは鏡を見るたび、自らが年老いていく様に、そう思った。


「いつかまた、先生のお供をしたいと、ずっと願って……」


 ヒョウカさんとの旅が。日々が。コウランの心の支えだった。

 いつか獣王を終えたら、またヒョウカさんと旅をしたいと。その日々を楽しみにコウランは獣王という務めを果たしていた。

 だけど彼は鏡を見るたび、諦めも募らせていたのだろう。

 時間とは無情に。

 コウランはもはや若くなく、旅をできる身体ではなくなっていた。


「そうだ、ヒョウカさんが言っていた……」

「ジュネ?」

「獣王に、あえなくなった、て……」

 コウランがヒョウカさんへ逢いに来なくなったのは。手紙だけになったのは。

 そんな老いた姿をヒョウカさんに見られたくなかったからだと、私は気がついた。ロザリーさんも察したようだ。

「まさか、そんなことで……」

 いやでも、老いとは誰にも平等に訪れるけど……この世界、種族によってはそうではないのだど、私はすでに聞いていた。


 ヒョウカさんは――竜人は、寿命が、長い。


 ヒョウカさんはこの獣王国で、独り歩く時間が違った。

 幼い頃に獣王が共に旅をしていても、今やその歳を追い越し。獣王コウランだけでない、ゲンヤさんや、彼の父や祖父も。 


 もはや共に歩けない、のだ。

 



 なのに。


 願いを叶えてくれるものが、あって。




 大好きなニチアサに、ゴ◯ュウに若返りキャラが…リアルに「ひょっ!?」と毎週奇声をあげています、私が!

 しかもめちゃんこ年の功な…良…

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― 新着の感想 ―
救いがない方が嬉しいですが、そんな事にはならないでしょう。作者様にお任せします。
いやーーーー!!!! 幼い子の命を使って若返る目的が、先生と旅をしたかったって いやーーーーーー!!!! もう、ご都合主義でも何でもいいから救いをお願いします
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