第84話 ダイレクトこんにちわアタック、再び。
さて。
ランエイさんにポーション飲んでもらって回復してもらいながら。
あ、リュックにはシュンレイさんが用意してくださった着替えも入ってました。ゼノンの糸の報告で、彼がぼろぼろになっているとありましたから。他にお水や、お顔拭くタオルとか。
ほ、ほら、リュックにはポーション以外もありましたのさ!
そうして彼にも私たちの状況をご報告。
ランエイさんも弟と同じく白い、ゲンヤさんの甥っ子さんを心配していなさったからね。
「では、弟と同じく、そのお子も王城に?」
「むしろ先に来ていたかと」
「……ならば儀式は、いつ行われるでしょう?」
そう、その辺りはまったくお下知がないんだそうなんだよね。母であり、獣王候補に名乗りを挙げたシュンレイさんにも。
少し伺ったのだけども。獣王候補というのは各一族で挙げるもので、長と兼ねても良いそうで。過去にも長から獣王になったひともいたらしいけど、王様になったら忙しいから長を新にたてるのだとか。一族の頭が国の頭になれるよう、一致団結も良いやね。
ランエイさんたちの一族の長はすでにそこそこ御年配だから。むしろ今の獣王さまと同じくらい。その方がトップになると、それによりすぐに獣王交替になっちゃう可能性大。だとすると短い天下なわけで。他にもこうした一族が多くあるとのこと。あ、ランエイさんの好敵手だったタキさんのところもだそうで。
一族出身の王の治世を永く。
そうならないよう若手を育成したと……あ、あ、シュンレイさんはぜんぜん若手ですとも! はい!
何だかなぁ……不穏だなぁ……。
生贄のうんぬんで、嫌な予感する私でありますよ。いや、あれは兄上さまの鱗に欲出された結果、助かったんだけども。
だから。
だからこそ、私たちの作戦は真っ当にした。
「今、真っ正面からシュンレイさんがお子さんへ面会を求めてます」
ダイレクトこんにちはアタック、再び。
……お家芸ではないです。きっと。
シュンレイさんはまず一族に、やはり獣王の座を諦めることを告げて。謝った。
けれども、桑呀一族の皆さんは、むしろほっとなさったんだよね。
前の長の大事な忘れ形見。
今の長の大事な大事な掌中の珠。
たとえ呪われた白い子であれ。
皆さんも、リョウガくんを贄にするのは内心では複雑で、どちらかというと嫌だったみたい。
それでも獣王国の現状に、そしてシュンレイさんの、子を英雄としてせめてもの名前だけでも……な、想いに。何も言えず従っていたけども。
だけどもここに。
このドラゴンが保障をしました!
白いのは呪いでもなんでもありません!
自分のオーラをフルドライブしました――うん、兄上さまの鱗の輝きの威を借りたかもしれない。そっちの方がやっぱり強いかも。もう使える物はなんでも使おうな気持ち。ありがとう兄上さま。今頃どこの空かしら。
でも、獣人さんの世界のルール。
強い奴が偉い! その法則よ!
強いオーラで自信満々に、が説得の……うん、コツだと解ってきたドラゴン亜種ペンギン。だって外見の威厳ゼロなんだもん……。もふもふふかふか、かわいいだけだもん……。
……泣いてないよぅ、ペン。
そして獣王国の今の問題である謎の奇病の原因を明らかに。こちらはロザリーさんから。
うん、ロザリーさんからは全然まったく、普通に強者オーラ出てるから。さすが白銀等級冒険者。
それにちょっと悩んでいたら、この特記事項お人好しさんに逆に言われちゃった。
そう……本当に呪いとかだったらどうしようか……と。まだリョウガくんには会えていないのに、言い切って良いのかな、て……。
「だったら祓ってしまえば良いだろう? 呪いなんてない方が良いのでは?」
て。
目から鱗シュポーンてしましたね。
うん、呪われて白いんだったら、今度はその原因考えたらいいんだ!
今のところ、ベニユキさんは呪われてなんかなかったし、話を聞く限りではリョウガくんもベニユキさんと同じだから。大丈夫とは思うけど。もしも本当だったら、次に考えよう!
シュンレイさんとゲンヤさんも目玉まん丸にしてたよ。
そうだ、呪われてたのなら何とかしなくちゃ、だった……て。
「何故、それをどうにかしようと、今まで……」
「呪われてたとあきらめてしまっていたなんて……」
でも長いことの固定概念だし、仕方ない仕方ない。
半端に変なお水や壺を買ったりしなくて良かったようなもんでしょう。
白いのによって、何かしら悪いことが一族に、国に、起きてなかったのも――いや、ひっそりとこうして贄の役目になっていたのが。
そして傭兵部族な彼らはマティの実のあれこれ、ゲンヤさんと同じように、他所の地方では大量に出されたことはないとすぐさま察してくれた。
原因がまさかこんなところかと、びっくりされて。
そうなると一族一団。一致団結。
大事な若様を取り戻そう!
「シュンレイさんは獣王候補を辞退されました。それにより、お子さまを返して欲しいと王城に来ています」
そう、私たちと別行動で。真っ正面から。
同行は一族の精鋭。不穏な気配びしびしだから単独は良くないのはお察し。
そして当然、ゲンヤさんも。
私とゼノンの糸電話の橋渡しでガロンを連れたロザリーさんもひっそりと。何かしら言われたら桑呀の剣客としてね。傭兵部族だから人間もお知り合いいらっしゃるそうですし。
あとおまけに竜人さん。
長を獣王にすることより、皆さんのお顔が輝いてる。皆が気にしていたんだ。
その手段は――長を……長の願いとはいえ、そんなことで獣王にしても良いのだろうか、と。
もともと、王座には興味薄い一族であったのも幸いしたか。
大事な御子を取り戻そう。
たとえ呪われてたのなら、今度はそれをどうにかしましょう。
傭兵部族ですからね、他所の国に方法あるなら幾らでも出向きますとも。
――と。
うん、良いなぁ、真っ直ぐです……さすが猪!
気持ち良い一族でありますよ。だから竜人さんにも仲良くしてくれて。




