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生まれ変わったら飛べない鳥でした。~ドラゴンのはずなのに~  作者: イチイ アキラ


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第83話 如何なる魔法のお薬、ポーションだって使用期限もある。


 ランエイさんは、こくりと小さく一つうなずいて。

 彼は私がしーっ、てしたことをすぐに理解してくれた。

 さすが次期獣王候補筆頭でもあった方。ランエイさんも判断が早い。早いからお国から逃げて、戻って、何だかんだで今現在なわけだけども。

 静かに頷いた彼に、よっこいしょと影から出る私とゼノンの小さな影ふたつ。牢屋レポーターしつつ周りを見て、見張りがいないこと確認していたのさ。現実逃避していただけじゃないって。

 ゼノンはロザリーさん愛用のリュックを背負ってるけど、まずやることは、これ。



 ――パキンっ!



「……ペン!」

 久しぶりの昇る龍が如く!

 ランエイさんを縛める鎖の封を懐かしの昇龍――はい、またゼノンに持ち上げてもらいながら手刀で解錠。届きませんでした。ジャンプ。

 飛べませんでした!

 ランエイさんの腕の高さにも!

 はい、開きなおります! 泣かないモンね!

 ……ペン……ぺ……ぺ……。

 ……すん。

 今なら解る。今も兄上さまの残りかもだけども、ドラゴンの魔力があるから魔術かかった鍵も開けられたのだと。


 そして私がランエイさんを壁に貼り付けている鎖にかけられた魔術を解けば、あとは彼がご自分で外された。

 むしろ魔術的な鍵で良かったね。針金とかでこちょこちょする方がきっと大変だった。

 その辺りは事前にシュンレイさんに伺ってきたの。さすが長。王城の牢屋の仕組みもご存知でした。

 むしろその話を聞いて、鍵は私がどうにかできると言ったことにびっくりされていたけども……そこはまた、ヒョウカさんの崇拝音頭で有耶無耶になった。「ドラゴンならば鍵開けくらい簡単なんでございますね!」と……うん、あの人、解っててやってくれているのか、素なのか……うん、今は考えんとこ。それどころじゃないし。


 そう、シュンレイさんにはランエイさんが……そして弟さんが、この獣王国に戻って来ていることも明らかにした。

 彼女が私たちを信じてくれるなら、私たちも彼女を信じないと。

 だから、猫の双子のことを話した。

 彼らがどんな思いで逃げた国に戻って来たかを。


 他の白い子を、贄にしたくない思いを――決意を。


 シュンレイさんは、彼女がひっそりと期待をかけていた相手が間違いではなかったことを――ランエイさんが王になることを推していたことは間違いではなかったことを。

「自分の目が間違いではなかったことを喜びましょう」

 彼女はそれにより、完全に私たちの話を受け入れてくれた。


 もう、絶対に我が子を手放さぬ。


 名前など残さなくていい。

 ただ幸せに生きて欲しい。


 それが、シュンレイさんの――母の本当の願い。

 大事な旦那様の忘れ形見なのだから。何よりも愛しいものなのだから。


 そうなればシュンレイさんはすごいものも提供してくださった。

 ガロンの報告やゼノンの糸の先。ランエイさんの状況に。



 回復薬――ポーションを!



 なんでポーションですごいもの(・・・・・)扱いだって?

 回復薬の定番だろう、てなりますよな。どんなゲームでも、初期に入手できる……。

 私もこの世界来るまで……ゲーム世界に、気にしてなかったけども。むしろものによってはアイテムコンプとか目指していた。


 この世界ではポーションはとっても高価。


 飲むだけでその場で傷が治るだなんて、現代医学にしてみたらまさに魔法! いや、魔法の道具なんだけど、この世界でも。


 ……で、だ。

 薬には使用期限、あるよね?

 それはこの世界にも。

 っていうか、どんなもんにもあるよ。口に入れるものなのだから。腐らないものの方が逆に怖い気もする。


 それでも、ポーション。

 その存在。価値。利用方法。

 飲むだけで瞬時に治癒できるなら、切り札扱いでもある。

 いつ使うか解らないけど、保険に買っておくのはありだろう。今こうして、購入しておいたのをシュンレイさんはわけてくださったのだし。さすが傭兵部族。しかもランク的には上級ポーションをくださったみたい。やっぱり治癒効果や効能によってポーションもランクがあるそうで。すなわちお値段も……。

 そう、一族で必要なときのために購入ならともかく、個人ではなかなか難しい。

 だって使う機会なかったら宝の持ち腐れに――使用期限切れたら本当に腐る代物。



 冷蔵保存や冷凍保存な技術はあるにはあるらしいけども、冒険者がそんな手軽に持ち運びできるはずがなく。


 そして持ち運びにはガラスの瓶なんて、危ないし重たいわ、ですわ……。

 しかも中身も液体。

 危なすぎ……。もしも使う前に壊れたらこぼれてもったいなさ過ぎ…。


 だからロザリーさんも持って無かった。ポーションの類いを。

「大きなケガをしなければ良かろう?」

 て、男前発言は――いや、真顔がすごいのもこの人だわ。さすが白銀。


 それでもロザリーさんはきちんと、ちゃんとお薬を持ってたよ。いつ何があるか解らないのも、また冒険者。持ってらしたのは消毒薬はじめ傷薬や化膿止め、毒消しやちょっとした風邪薬。それに絆創膏。

 うん、救急ポーチだね。

 護衛任務中に護衛対象がケガしたりもあるし、ロザリーさんもちょこちょこ小さなケガしたりはさすがにあるらしいし。

 彼女の持ち歩くお薬は、須く小さな軟膏や粉薬だ。ランエイさんを助けたのはその中の毒消しとかだったよね。

 うん、吟味して選ばれたお薬。長期間保存できて、持ち運び便利。


 改めて、納得した。

 私のような空間収納持ちじゃないと無理、ですわ。

 白銀冒険者のロザリーさんですら、収納アイテムは一つしか持ってない。しかもそれは時間経過あれば使用期限もいつかくる代物。いや、容量超えて収納できるだけでもすごいものなのだけど。おかげでロザリーさんの本当に貴重品はそちらに入れられているそうだし。

 そういうわけで、改めて自分のチートにびっくりしたんでした。時間経過ない空間収納、ありがたや。

 うん……。

 ゲームの世界はやっぱりゲームの世界だったんだなぁ。持ち物、個数制限あるリアルなゲームも、実際に背負ったら大変そう。


 しかしながらその貴重なお薬をロザリーさん愛用のリュックを借りて持ってきたわけで。背負ってきました。ゼノンが。


 そんな高価な貴重品が背中にと、ガクブルの小猿くんには申し訳なく。


 ……いや、私の空間収納に入れてこれば良かったて、今気がついたの。

 ごめんね、ゼノン!

 たぶんロザリーさんも存在忘れてたよね!


 ……普段、冷蔵庫扱いだもん。



 ロザリーさんも今頃、「あ」て顔してます。


 こういうゲーム世界では普通に持ち運んでいるヤツ、現実は大変だろうなぁと、常々考えていまして…どこでもな扉と無限収納のポケットが欲しいもんです。

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