第82話 ポータブル電ペン。
双子の二人がいる方角として、ゼノンが指し示したのは――やはり、王城の方。
「城の中、か……」
ロザリーさんと私は、まだぐるりと都を囲った城壁の中にも入ってないんだよね。何気にゲンヤさんにより関所は、国境は越えていまここにいるわけだけど。
聞けば、城壁はいくつかあって。都が大きくなるにつれて階層的に増えたそうな。桑呀さんのここも城下町には入るらしい。一応な枠だけど。
なるほどね。脳内で江戸時代とかのお城を思い浮かべる。近いかな? 違うかな?
まあ、何だかんだ、連れ去られたのは城の中だろうなとは、思う。リョウガくんもお城に呼ばれたてありましたし。
肝心はそこから。
「……地下のようです」
ゼノンのおかげで、位置が――どこに閉じ込められたか、解る。広いお城の何処に捕らえられているか解るのは、めちゃくちゃ大事。
ゼノンは糸に集中している。
「ランエイさまは地下に……ベニユキさまは、また今、移動中で……」
静かに瞳を閉じて、糸の先、ランエイさんとベニユキさんの状態を少しでも。まだ幼いゼノンには、それも大変なこと。額にうっすらと汗が浮かんでいる。
私とロザリーさんはひっそりと目と目で会話。
「……また、地下か」
……と。
まぁそういうものなのかな、生贄の儀式ってやつは。後ろ暗いだろうと思ったけど、今のところは儀式とかではないとゼノンから。
「地下牢みたいです」
あ、そっち?
ランエイさんは地下牢に、か――。
私は確認した。
大事なことだから。
仲間の心変わりが戦局を変えるのは、歴史が物語るから。
「シュンレイさん、改めて確認させてください。ご子息を生贄にするのは――」
「我が子の死を、二度と望みません!」
尋ね切る前に言い切られた。
……うん。良し!
私たちは顔を見合わせて、頷いた。
そして始まる作戦会議。
――と、いうわけで、私は牢屋にいるのでした。
目の前の牢には壁の鎖で両手を磔にされているランエイさん。
黒髪が乱れてるし、捕らえられたときに弟を護るためと――ガロン達が逃げる時間を稼いでくれたために、痛めつけられたのだろう。さすがの彼も病み上がりに多勢に無勢で……あちこち痛そう。せっかく回復してきたのに。
私のお供は、私との繋がりの糸をたどって、影から影に移動できる。同じお供仲間として、ガロンとゼノン間もできるそうだ。迷子防止にいいな。
そこに、ゼノンは自分の糸を付けた相手のところまで移動できることまで。進化したことによって。
でも問題が一つ。
魔力は、まだまだそこまで足りない。だってまだ小猿さんですもん。仕方ない仕方ない。
そこで、です。
はい!
魔素の源! ドラゴンです!
片手で片目隠した中二ポーズを今こそするべきかとちょっと思いつつ。そんな場合じゃないから自分落ち着けと内心で一人呆けツッコミしたの。現場レポーターしつつは現状確認ね。
魔力など諸々に足りないならば、私がついていったらどうだろうか、と作戦計画中にハッとしたのです。
そう、いわばポータブル電源的な!
キャンプとかにもあったら便利、ポータブル電源! 私は電ペン!?
いや、今や災害に備えて各ご家庭に1台如何な日本育ち生まれよ。でも何が起きるかわからないから、備えは大事! 本当に大事!
ちょっとした畑作業にも持って行けるし。最近の草刈り機とかも充電のバッテリー式だからね。お家帰らなくても、畑の日陰で充電しながらご飯やお茶できるの。うん、実家の農園広かったんですよ。軽トラに積んでいくの。雨降ったら大変よ。
小さなバッテリーだけでもね。あるとありがたいよね? 鞄に入れられるサイズは旅先とかでも使えるし。
いざって時に電気がちょっと使えるだけで、本当にありがたいと、停電を思い出してしみじみです。田舎の停電率をなめたらあきません。うちとこで一番多いのは倒木とかの電線あれこれだけど、たまに鹿や猪がぶつかってさ……。
スマホの充電だけでもね。いやぁ、昨今はスマホひとつあるだけで災害時には情報収集から何から何までできるから。技術の進歩に開発してくださった方々に感謝ですわ。あと懐中電灯とカメラに時計代わり。あれマジでありがたい機能よね。何気に使ってたけど。まあ、この世界になるとスマホなんて存在しないんだけれども……。あったら良かったなぁ……。
自然には勝てないから……いや。その自然災害的な存在が伝承にあるドラゴンが言うのも何ですが。
……ドラゴンです。ドラゴンだってば。
まんまるいけども!
ふ、ふふ……災害時、こうしたぬいぐるみひとつあると癒しになるっていうじゃない。その枠、その枠も行ける私よ!
ポータル電源兼、ぬいぐるみ!
あったら便利ね!
……いや、ぬいぐるみはぬいぐるみの方が良いよね。ぎゅっとできるのにゴツゴツしたらお子さんも泣いちゃう。私も泣くわ。
うん。
ちょっと現実逃避しかけました。
まあ、こうしたわけで、ゼノンは無事、ランエイさんの影に辿り着けて。
気を取り直して片手をひょっこりとあげます。くちばしの前に。しー……て。
「ランエイさん!」
助けに来ましたと。小声で。
「……ジュ、ネさま?」
そう。彼は切れ長の猫目をまん丸くしていた。
自分の影から顔を出しているペンギンと小猿にびっくりして。
でも、しーっ。
災害時にあると本当に便利です。(充電忘れずに。別売りソーラーパネルとかもあるけど…。
書いているときに災害起きて、本当どうしようかと…。被災地の皆様のご無事と復興を切に願います。当方も…。
ソロキャンや車中泊の動画とかでよく使われていますから、ご購入の際はそちらを参考にされても良いかもです。
ペンドラゴン印のポータブル電源とか、ペンギン型防災袋とか、いつか野望w




