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第77話 その理由。2


 不意に出てきたランエイさんの名前にびっくり。

 いやでも、まだ知り合って数日な私たちより、同じ獣人な彼女の方がもともと親しいのかな? ゲンヤさんも知り合いだったもんね。

「ランエイくんが獣王に、ですか……?」

 ヒョウカさんの確認に、シュンレイさんはうなずかれた。

「……ご存じでしょうか? あの方の弟君が……弟君も、白であるというのを?」

 私は知らなかったのだが、それは獣人国では有名であった。ランエイさん自身が獣王候補筆頭と、目立つ存在であったから。彼の家族も、また。


 半身である弟のことは、特に。


 シュンレイさんも少し悩まれながらこちらに尋ねてきた。

 彼女にとってデリケートなことだから、同じくと、ここにいない方のも気にされたのか。

 いや――。


「私は、あの方に期待していました」


 ランエイさんを、彼女は秘やかに応援していた――。


「同じく白を身の内に持つものとして。あの方が王となり、国を変えてくださるのを」


 ……嗚呼。

 ランエイさんは知らず、彼に多くの期待を寄せているひとがいたんだ。

 だけれども、彼は逃げた。


 判断をして。選んで。


 地位より、名より――弟を選んだ。


 弟を助けるには、間に合わないと。

 いや、彼もまた、知っていたのかもしれない。だからこそ、彼はもう自分は王にはなれないと、理解していたのかも。


 そうして、判断をしたひとがもう一人。


「私は決めました。ならば、私が王になります」


 その判断は。


「我が子をただでは死なせません――」


 ――ならば英雄として。



 シュンレイさんの御子、リョウガくんもまた、獣王国では白い子であるとしられていた。

 それは皮肉にもランエイさんと同じように。シュンレイさんの、桑呀の長の子だから。

 彼女は察した。否応なく気がついた。

 白い生贄候補として真っ先に上げられるベニユキさんが消えたのなら。その次なる候補が誰になるか。

 高確率で我が子の名があがると。



 それは凄まじいまでの母の覚悟だった。



「私がどれほど息子を護ろうとしても、必ず私が先に逝きます」

 それは寿命もあり。親である以上、どうしたって先に母の方が先に尽きる。

 さらに傭兵一族である桑呀の長である以上、もし戦争が起これば彼女もまた、戦場に立たねばならない。何が起きるか解らない戦場に。長である以上、様々な力はあるが、同時にしがらみも。


「誰が、息子の死を願うものですか。何があろうと、生きて欲しい……」


 だけれども。

 彼女は考えた。よく、考えた。


 己の庇護がなくなったあとの、我が子がどのように扱われるか。


 白いことは何ら悪いことではないと、今はここでロザリーさんが言い、それを獣王国に広まるまでどれほどの時間がかかるか。

 ランエイさんならば、兄弟として時間は同じようにあるだろう。彼は王になって、まさにそうしようと考えていた。

 シュンレイさんはそのランエイさんが国を変えてくれるのを待っていた。


 しかし、間に合わない。

 シュンレイさんにも、現状変えることはできない……。

 いや、白い子を差しだせと命令されれば長である以上、国に従わねば。


「ならば、私が国を変えます」


 息子をただでは死なせない。


「息子の命を……名前を、英雄として残します」


 ――そのために、獣王になる。


 


子の命を奪いたい親などいないのです。ですがシュンレイさんは散々悩んで、先を考えました。

この世界の傭兵、そして獣人としての考え方でもあり…だだでくれてやるものか、とも…。

それが急な立候補の理由。

ここからまた先をお待ちください。

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