第76話 その理由。1
「リョウガは如何した?」
ゲンヤさんの甥っ子さんはリョウガくんというそうな。
お年は十。
色合い雰囲気はきっと想像できる。お母さんとも、叔父さんとも違い――白いのだろう。
でも、ゲンヤさんは目に入れても痛くないほどかわいいと。
本当にわかる。
私も甥姪がかわいかった。
きっと実の母親なら、それ以上に。
「息子に会わせる前に、本日の御用向きをお伺いしても?」
ヒョウカさんはともかく、人間の冒険者が何の用事だと、言外に言われてるね。
シュンレイさんも席に着かれた。上座になる。今、この里で一番地位が高いのが彼女になるから。
シュンレイさんの方がロザリーさんより、少し背も高いかな。桑呀の一族て、女性も背が高いんだな。
「あ、私はリョウゲンくんのお参りに」
「まぁ、ありがとうございます」
この後、お墓参りする予定のヒョウカさん。この国、ちゃんとお墓もある。やはり日本のようだね。お墓参りの作法もなのかな? いや、弔う気持ちあれこれは、どんな世界でもあるんだろうね。
ヒョウカさんに穏やかな微笑みで頭を下げる美女。うーん、角度もばっちり、やはりご自分の美しさ、ご存じですな。
「うむ、実はこちらのロザリー殿より、人間の世界の話を聞いてほしい」
ゲンヤさんが切り出した。
「白は、呪われしことでも何でもないのだ」
ザワッと空気が一瞬張り詰めた。
もちろん――シュンレイさんから。
「ほほ……それは? そちらの人間の方が……?」
ふむ、さすが理解がはやい。
ロザリーさんがこの場にいる理由を察しなさった。
しかし、彼女にとって、何よりもデリケートなことなのだとその放つ気配でこっちもわかりみ。
それだけの存在である息子さんをどうして……生贄に?
「白いことは、体内にある色素が生まれつき足りないだけで、呪いでも病でも、なんでもありませぬ」
ロザリーさんが私から聞いていたことを。
「人間の方々には、もう既にそのように判明していることと……」
理解が早い方だから話が早い。まぁ、嘘も方便なんだけど。白銀冒険者であるロザリーさんの輝きも、そりゃもう輝きまくっているのだろう。
人間世界でそんな地位があるひとが、嘘つかない、て。
シュンレイさんは少しうつむいて悩まれている。
「そもそも、何故あんなに可愛がっていたリョウガを贄に出すなどと……」
義弟のゲンヤさんの問いは私たちも気になっていることでもあり。
シュンレイさんは、そっと一口、御茶を飲んだ。緊張すると喉渇くよね。
御茶は香りからして烏龍茶ぽい。煎れ方は見てないからそのあたりも気になるね。食べ物は中華風なのかな?
シュンレイさんは少し悩んで、それでもお話してくれた。亡き御夫君の師と弟に対しての礼儀だと。もうここまで来たら、胸の内を明かす方が良いと思われたのだと、後に。
「……あの方が獣王となっていたら、私がこのような選択をしなかったでしょう」
あの方?
「そう……そう、あの黒婉のランエイ殿が獣王となっていたら」
――ぺ? ランエイさんが?
きりよいので今日はここまでで…秋花粉で、薬のせいで…頭がぼーっとして…しんどいっす…(T_T)
 




