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第75話 桑呀の長2


 獣王国は私にとっては和風と中華を混ぜたような雰囲気だった。といっても都は関所な門の中しか見ていないから、まだどんな感じなのかわからなかったのだけど。

 ロザリーさんにも物珍しいものらしく、抱えた私と一緒にきょろきょろ。

 ゲンヤさん家もヒョウカさんのお住まいとはまた違って。

 ヒョウカさんのお宅は昔話に出てきそうな庵な雰囲気だけど、ゲンヤさん家はそれに比べたら――でっか!?


 まぁ、桑呀の皆さまは体格が良い方が多く、全体的にすべてが大きめなのだとか。ゲンヤさんも背が高いロザリーさんよりさらに高いもんな。


 色合い雰囲気はなんかもうお城っぽい? 首里城?

 いやでも、造りは日本に近くて平安時代の感じ?

 朱色があちこちに使われているからかしら?

 やっぱりいろいろ混じってる感じ。文化の分岐点とか気になるわぁ。

 私は歴史、時代劇好きだったから、こういう建物見るのも楽しい。

 ロザリーさんもそうなんだよね。だからこの獣王国への旅、なかなか楽しかった。

 地方やお国柄、建物こそに歴史は現れるなぁ……。


 そんな私たちはゲンヤさんの客としてあっさりと通された。

 ヒョウカさんは以前から顔馴染みであるよう、不審がられることなく。ロザリーさんの冒険者としての強者の空気が伝わるのか、彼女も。やはり武闘派部族だからか、すれ違う方々も客人として丁寧に扱ってくれた。

 ……うん、何だろうこれ、な視線はロザリーさんに抱えられた私にだけ。うん、慣れたからへいきよ。へいきだってば!


 通されたのは屋敷のかなり奥。でも中庭がお見事なお部屋だった。

 円形の大きなテーブルに見事な、だけども品良い装飾な椅子やクッション。葡萄茶色の、漆塗りか艶々した家具がまたお見事。

 しかして壁には刀も飾られている。青竜刀ていうやつか、なぎなた状の大きな刀。刻まれた意匠を近くで見たいな。

 これは武闘派部族と侮れないやつだ。

 ここまで連れてきたゲンヤさんは家具破壊の残念なひとだったけどね。


 私たちは通されたお部屋で、お茶と茶菓子を出されてもてなされた。

 うん、まずは私はいつも通り。ロザリーさんの膝。ぬいぐるみの分はないよ。

 まずは、竜――ドラゴンはいつも通り隠した方が良いかな、と。

 こそっと甥っ子さんを確認したら、こそっとゲンヤさんにお知らせして帰るつもり。


 それは、私が先日からのお話を聞いて、私自身が、自分の影響力を危険視したから。


 ――ゼノンの著しい成長とか。


 まだ、私が責任とれない。この子ペンギンには。


 ヒョウカさんがしきりに自分の分をと言ってくれたけど、そもそも私には不思議と空腹感はないので、と。最近は嗜好品としてご飯やおやついただいております。その辺りはまた詳しくお話し頂きたくと竜人さんにはお願いされつつ……まぁ、私も自分の事を知りたいから、了承しつつ。

 そんなこんな、少しばかり待たされて。

 やがてその人は現れた。


「お久しぶりでございます、ヒョウカ様」

 亡き夫の恩師へ。

「そしてようこそ。白銀の冒険者どの」

 そして希有な白銀階級の冒険者に。

 敬意を払いながら、彼女は現れた。


 桑呀の長、シュンレイさん。




 ……わーお。


 真っ先にそう思った私、絶対悪くないと思う。

 失礼ながら、絶対そこに目が行っちゃう。


 桑呀の長さんは――ボンッキュッ、ボンッ! な、ナイスバディのお姐さんだったので!


 スイカ……いや、そこまで下品に大きくはない。小玉スイカ? それがバインバインと……すみません、私が表現下品した。

 シュンレイさんご自身はキリッと髪をまとめられた、本当に上品なお姿。胸元開いたお服だけど、こう……自分が一番きれいに見える格好てのを御存知なタイプだこれ。

 人間だったころの海外の女優さんたちてそうだったよなと思い出す。あと、某姉妹さんとか。

 桑呀の一族だからか背も高くて。あと傭兵一族でもあるのわかる肩の筋肉とか。本当にナイスバディ!

 いやはや、眼福てやつです。

 ゲンヤさんと似た金茶の髪を一つに束ねて、朱色の珠がついた金細工の一本簪をさしてらっしゃる。思えばすれ違う桑呀のひとはこの金茶の色をしたひとが多かった。ランエイさんの一族は黒系だという話だから、ゲンヤさんのこの一族は金茶系なのかしら。

 彼より年下ということもあり、確かに三十はじめなお年頃なんだろうけど、逆にそれが何とも迫力ある色気。その年代じゃないと出せない色気だ。しかも露出あっても下品にいやらしくないて、すごいわ。


 いやでもこの方が押せ押せでゲンヤさんのお兄さんに……恋する乙女でもあったのかぁ……。


 私がほぇー、て見惚れていると、シュンレイさんの視線がふとこちらを向いた。

「……。」

 うん、いつものやつ。


 何でこの冒険者、ぬいぐるみ連れているのかしら?


 尋ねつっこまれることなく、シュンレイさんはその金の混じった茶色の瞳を細めて、微笑んで視線をずらされた。


 うん、大人な対応だね!


 


やっと出せました、上品お色気担当1号シュンレイさん。上品、これ大事。

チャイナドレスに和装の混じったイメージです。

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