第7話 昇る龍が如くに。
逃げるにはまず彼らに檻から出てもらわないと。
私は檻を観察する。
「あ、良かった。打ち掛け式だ」
先ほど私が入れられていた箱のと同じだ。
これならなんとかなるかも。
中にいる一角猩々さんなら開けられないかしら? ハウンドウルフさんは身体の構造上難しいかな……ハーピーさんの翼の先ではどうかな?
「あのですね、その檻の鍵ですが……」
と、私は知っていることを伝えたのだが、三人は顔を見合せたあと、三人とも首を横に振った。
「?」
一角猩々さんも?
あ、お猿さんだから器用かも、ていうのは失礼だったかな……。
その時はまだ、私は三人ができないと言った意味がわからなかった。狩人の檻がそんな簡単なはずがなかったと……。
「うーん、まぁ、確かに鍵の部分の隙間は狭いし……」
三人の腕とかでは難しいかな。
うむむ、ならば私がどうにかするしかないか。何せ檻の隙間より細い、お小さい方ですからね。
私は荷馬車にさらに近付いて、何とか登れないかと調べる。
「あ、後ろあいてる」
何と幸いに荷馬車の後ろは、まだ閉じられてなかった。それはきっと私を載せるためだろう。
「閉じたら二度手間ですもんね……っ」
まぁ、載せられていた方が、私はこうしてよじ登らなくてすんだかもしれないけど!
私は荷馬車の、何とか台の端にジャンプして手を引っかけることができた。本当はね、水の中からじゃないとジャンプて大変なんだよ、ペンギンは!
「よっ、こいっ、しょっ!」
引っかけた手で、私はなんとか台に登る。
思い出せ私! 地獄の懸垂を! 甦れ私の広背筋!
「ぺぇぇぇ……っ!」
「おおお……」
「素晴らしい!」
「あと少し! あと少しです!」
三人も応援してくれる。がんばれ私!
声援ありがとうございます!
ふぁいと――いっぱ――
「――ぺっ!」
そうしてなんとか上半身を投げ出すように、私は荷台にあがることができた。
「ぺぃっ、ぺぃっ、ぺひ……」
い、息が切れる。しんどい。だけどまだこれからだ。
「ぺひ、ぺんっ、いっか、く、しょうじょ、さんからっ!」
荷台に上がって、近いのは一角猩々さんのいる檻だった。
「雛の方、どうぞ落ち着かれてから……」
「いや、時間がっ、心配だからっ」
よじ登っているときに気になった。もしも狩人たちが食事のあとにこちらにきたら、と。
荷台は中途半端に閉じられていなかった。
私を荷台に載せるのを、夜明けに後回しにしていたならよいけれど、もしも食事の後回しにしていたとしたら?
だとしたら、時間がない。
明るい方――狩人たちの焚き火の方角からはまだ他愛のない会話が聞こえる。
今しかないかもなんだ。
「……よしっ!」
それでも小さく深呼吸して息を整えた。
そして鍵を開けようとしたけど、なんと鍵はまた私の身丈より微妙に高い位置に付いていた。
またジャンプ――飛びはねないと。
いや、これは飛びはねながら鍵もはねあげなければならない。今度はしがみつける場所はない。
「ふぉ……」
飛びはねながら狙いをすまし、的確に鍵をはねあげねばならない。
――アッパーカットだ。
これはアッパーカットだ。しかも拳を高く突き上げるアッパーカットをしなければならない。
「できるかな……」
この子ペンギンの身体で……。
いや。
「やらなきゃ……!」
アッパーカットは腕だけじゃない。
身体の延びを生かすんだ。
右手を腰に引き寄せて、溜める。
膝(私に膝あるの? と、ちょと悩んだけど)を少しかがめ、拳を添えた腰を捻るように。
そして――跳ぶ!
思い出せ私――!
あこがれのあの方を!
己より強い者に逢いに行く思いを!
「ぺン!」
アッパーカットならば顎を狙うから肘を曲げたままだが、私の狙いは己より高い位置にある鍵。
腕は天を打つように肘を延ばして。
跳ぶ勢いで捻りながら身体も延ばす。
そう、かの昇る龍が如くの拳のように――天を!
「ぺぇええン!」
――パキィン。
私の羽の先は見事に鍵をとらえて弾いていた。
その瞬間にガラスが割れるような音をたてて、緑色の火花が散った。
「……ペン?」
赤いはちまきのあのお方。
本当は膝蹴りも入る技ですけれども。