第69話 生まれ変わったら飛べない鳥でした。
「魔物が進化したのが獣人だったのか」
そう、この重たいお話しで一つ判明したこともあった。
以前から気にはなっていた。
ドラゴン――己の気配。
魔物たちが、そして同じく獣人たちがドラゴンの、私の出すオーラに過敏に反応する理由が。
それは身体の作りからして、魔物と獣人、そして人間では違ったからだ。
魔素の受け入れ、使い方が。
ドラゴンとはまさに魔素の源。
根本的に身体の作りが違ったからなのですね。
あれかな、地震が来る前に動物は気がついて逃げ出すに近いのかしら……地震か、私は……。
いや、ドラゴンはそういう存在なんだっけ……。
ヒョウカさんはさらにゼノンを見て、うなずいた。
「そちらの一角猩々くんで、この説が正しかったとも解りました」
ゼノンで。
何がだろうと彼自身も首を傾げてる。
「猩々たちは退化していたのでしょう」
退化。
「その子が猩々種であったというならば、今の姿は先祖かえりともいえましょう。魔素が無くなったために、それに合わせて軀を変えていったのかと……」
進化があるのならばその逆も。
「あ、そうか……」
私は確かに気になっていたことがあった。
ゼノンの成長が著しいこと。
むしろ彼は、今や一見、獣人の子にも見える。そう近い形態に育ってきた。
獣人が魔物から進化した存在ならば。
ゼノンは――この数ヶ月間で急激に進化したのだ。
私の――ドラゴンの側にいたから。
「彼は、貴方様の近くにいて、魔素を多く取り入れることができたのではありませんか?」
「なるほど……」
でもそんなに?
いや、ただ側にいただけならばそこまで急激に育ちはしなかったかもしれない。
「……あ」
――加護。
はっとして振り返る。
ゼノン。
ガロン。
そして、ロザリーさん。
もしや私は、この三人を歪めてしまったのではないだろうか。
人間であるロザリーさんは、ドラゴンの影響を受けにくいとはわかったけど……。
……こわい。
「あの、我が主……」
ゼノンがそろりと、私に一歩近づいた。
「私はうれしいです」
「……え」
「主から加護を頂戴できて。このように御身のお役に立てる躰にしていただけて」
そう、人間の身体に近づいたことで、ゼノンのやれることはかなり増えた。猩々の身体の時にできていたこともそのままに、もともと彼が器用なこともあるだろうがかなり勝手の良い進化だった。
それが、ドラゴンの加護によるものならば。
――自然な成長ではない。
ゼノンがそう言って来たのは、私の不安が伝わってしまったからだろう。
でも、彼自身が大丈夫だと言ってくれて、わずかでも心がほっとする。
まだ子供な彼に気を使わせてしまった。
そして改めて思う。
加護ができること、やはり内緒にした方が良い気がする。
そう……私はうっすらと理解していたことを、ようやく認めた。
私は。
チート的な転生をしてしまった、と。
生まれ変わったら飛べない鳥でした。
だけど――とんでもない存在でした。
ゼノンとの会話は、私とロザリーさんしかまだ解らなかったから、獣人さんたちには内緒で、と。
せめて私が自分で責任とれる範囲じゃないと恐くて使えない。
能力の安売りほど、たちの悪いもんはないよね。
おれつえー的な転生でも、こんなペンギンに何ができようか、というやつで。いやこれ、おれつえーかな?
今だって、こうしてロザリーさんに迷惑をかけているのに。膝の上で。
ところで。
ガロンもひっそりと強化なことが起きていたそうな。
見た目があんまり変わってないから気が付かなかった……。
いや、出会ったときより毛並み艶々になってきて、良き良きとは思っていたけど。
ゼノンのようなひとの姿寄りに成長しなかったのは、それは彼が個体としてすでに成長していたのもあるが……。
私、犬好きでしたから。
背中に乗って喜んでいたこの旅路。
「我が主を背に乗せる栄誉」
ひっそりとガロンも威張っていたそうな。
タイトル回収!実はチート転生だったのでした!(え?気づいてた…?




