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生まれ変わったら飛べない鳥でした。~ドラゴンのはずなのに~  作者: イチイ アキラ


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第66話  かつて、霊峰にて。


「今、ドラゴンはどこにいるの?」


 私の問いかけは、彼を困らせるだけだった。

「どこ、とは……?」

 まだ私に対して畏怖の方が強いのだろう。

 恐る恐るという様子で逆に問いかけられた。


 ああ、竜人さんも、わからない……知らないんだ……。

 

 ショックを受けている私のかわりに、ロザリーさんが説明してくれた。

 いわく、私が迷子だということを。



「檻、ですと……!?」

 あの日、あのロザリーさんに出逢った夜に気が付いたら檻の中にいて、同じく囚われだったハウンドウルフのガロンと、一角猩々のゼノンと、そしてハーピーさんと脱出したところから話した。

 そう、気が付いたら檻の中にいて、それがどうしてだかもわからなかったのだ、と。

 このあたりはすでに、旅のあいだにロザリーさんにはお話ししていたけど、最近知りあったランエイさん双子たちにはまだだったんだよね。彼らも一緒に聞いてくれている。

「それで獣王国を目指してくださったのですね……!」

 そして目的地が自分であったと知ったヒョウカさんはまた胸を抑えてる。

「……おかげで助かりました」

 ランエイさんが深々と頭を下げてくる。ベニユキさんも。

 うん、私たちが獣王国を訪れなければ彼は危険だったもの。感謝は受け取りました。

「頭を上げてくだされ」

 そう、ランエイさんの感謝は私だけでなく、治療、対処を知っていたロザリーさんにも。

「さて、それにしても……竜とな?」

 話しはわかったが、これまたどうなるとゲンヤさんもうなずいている。

「先生が長年追い求めた竜が……」


 ――これ?


 そんな視線を私に向けるけど、うん、私はもはやそんな視線は慣れたもんね。ぬいぐるみ歴、半年。

「いやまぁ、信じるが……」

 さっきの一瞬の、私の放った竜の気配はすごかったと。

「それに竜なら言葉を話したっておかしくないか……?」

 やっぱり竜は、ドラゴンは神様レベルの、なのかしら。

 ちょっと恥ずかしいわ……。

 そんなことを思いつつも、これで竜人であるヒョウカさんを訪ねて来た説明は終わった。


「……なるほど、お話しはわかりました」

 だけど、と彼は申し訳なさそうに。

「私にも竜の、ええドラゴンのお住まいは……」

 むしろ長年、彼もドラゴンを探していた。

「霊峰……カデルツァーンでしたか」

 聞いたことがない。

 実はロザリーさんにも事前に。旅のあいだに。

 でも歴史の流れで地名が変わるとかってあることだから、て思っていたらこちらは納得。

 竜人さんがそのあたり何かしら知っていたらと来たんだしね。

「そも、ゼノンの群れの翁の話であったか?」

 ロザリーさんは歴史や物語好きだから、旅のあいだにゼノンとも。彼らは言葉通じるもんね。

 ロザリーさんに話題を振られて、ゼノンはびっくりどっきり、そんな感じで話してくれた。彼、ちょっとおとなしいんだよな。いや、彼はまた子供だし大人に囲まれてるような……はい、私も子ペンですけれども。


「私の群れの長の昔語りに、ありましたのです」

 皆の視線におどおどしながら、ゼノンが話してくれた。

 といっても、彼の言葉は私とロザリーさんにしかわからなんだけど。あとガロン。ガロンはゼノンの背中を大丈夫だと応援するようにそのおっきな肉球でぽんぽんしてる。優しい。


「かつてこの大地を愛し、育んでくださった大いなるお方様に、霊峰にて我らの祖先は仕えていた、と……」


 だけど幾星霜の時の流れで、ゼノンの群れは徐々に住処をかえて、今縄張りに。


「いつか霊峰に帰れたら、と……おじじたちは望んで……だけど……」


 ああ、縄張り争いとか、きっと色々あるよね。住みよいところを移動するのは、きっと動物でもさもあらん。かつてみたサバンナやアフリカのドキュメンタリー思い出す。

 ペンギンだって餌をもとめて何キロも旅をするんだし。


 ん?


「大いなるお方様に?」

「それがドラゴンであったと?」

 ロザリーさんと一緒にゼノンの話しを皆に通訳。

「それって、竜人と……?」

 ベニユキさんがはっとした。

 そう、竜人はかつて竜に仕えていた……?

 その竜人であるヒョウカさんは、ゼノンをじっと見つめて――感嘆のため息を。

「……素晴らしい」

 ヒョウカさんは眼鏡を少し持ち上げ、涙を拭いている。

「その子猩々は、確かに竜に仕えていたものの末なのでしょう……魔物のなかにも、そのように語り継がれていたなんて……」


 竜人であるヒョウカさんは、私たちに話し始めた。


「かつて竜に仕えていたのは竜人だけではありません」


 それは――。


「獣人も魔物も」


 それはこの大地に生きるもの、すべて。



この世界の説明にやっと入れます。

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