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生まれ変わったら飛べない鳥でした。~ドラゴンのはずなのに~  作者: イチイ アキラ


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第62話 …どうも、ドラゴン――竜です。


 一斉に皆が身構えた。

 ランエイさんが弟を背後に庇うように、その弟は兄の邪魔にならぬよう構えながら下がる。良い慣れた連携。

 ガロンとゼノンが毛を逆立て唸る。

 ロザリーさんが剣の柄に手をかけつつ――傍らに置いていた私を抱き上げかけ……。


「……いや、ここ、私の家なんですが?」


 身構え、臨戦態勢に一瞬で入った私たちは、また次の一瞬で――あ、てなった。


「やぁ、先生! お邪魔しているぞ!」


 はい、私たちの方が不法侵入……。

 皆の首がギギッと音を立ててゲンヤさんをみたよね。

 このおっさん……。




「留守宅に勝手にお邪魔してしまい、まことに申し訳なく……」

 一番はじめにロザリーさんがはっとして頭を下げた。続いてランエイさん、ベニユキさんも。

 ガロンとゼノンも尻尾を下げつつ、私は……とりあえず現状的にはロザリーさんの小脇に抱えられ。

「ああ、どうせそこの猪くんの猪突猛進に巻き込まれたのでしょう?」

 家主さまはロザリーさんに頭を上げるように。そして「おや?」と首を傾げた。

「……君は、もしや黒婉のランエイくん?」

 だよね、と――その人は分厚い眼鏡越しに。

 そういえばランエイさんは獣王国では有名人で、彼もまた竜人さんを知っているのだっけ?

「はい、お久しぶりです。ヒョウカ殿」

 家主さまは……竜人さんは、ヒョウカさんというらしい。

 分厚い眼鏡をかけていらっしゃるから表情は伺えないけど、勝手にお宅に入ったことは怒ってなさそう?

 察するに、ゲンヤさんは常習犯ですな? ヒョウカさん、慣れた雰囲気だもの。

「扉、直しておきなさいよ」

 て、ゲンヤさんに言うくらい。

 いや、本当に申し訳なく。そういえばゲンヤさんは猪……改めて把握しました。はい。


 竜人さんは旅装束だった。

 ロザリーさんのと似たリュックや、野営道具のようなものを背負ってらっしゃる。

 それをおろしながら、やれやれとため息ついてる。

「先生、とりあえず餅、焼いといたから」

「まったく……ええ、いただきます」

 話しの間に焼いていたお餅はとっくに食べ頃になっていたご様子。豆入り餅で、あとから聞いたけどおやつ兼ねる保存食みたい。ゲンヤさんはもともとヒョウカさんへのお土産に持ってきていて、留守だったらそのまま置いておくつもりだったそうな。

 あ、だからヒョウカさんは怒らなかったのかな。ご飯はえらい。大事。

 そんな風にゲンヤさんはちょくちょく手土産持参で来ていたけど、今日は一人ではなく同行者がいて驚いていると、ヒョウカさんは餅を食べつつ話し始めた。

 家主さまだからはい、ご遠慮いりませんとも。


「それで、君たちは何の御用かな? 見ればそちらの方は人間のようだが……」

 はい、ロザリーさんの後ろにはハウンドウルフと、一角猩々――魔物が。留守中に知らない人間や魔物がいたら、普通に気になるよね。さて、何から説明するか……。

「うん。実は先生にここにいるベニユキ……ああ、ランエイの弟なんだが、匿ってほしくてな」

 ゲンヤさんから説明しはじめてくれた。ランエイさんが不足する形で話しが進む。

 まぁ、お任せした方が良い。ロザリーさんがそっと私を膝の上におろしながら、お互いに目で会話。ガロンとゼノンには糸電話で待機と打ち合わせな話しつつ。


 奇病から、始まり。マティの実。そして生贄。生贄は今はゲンヤさんの甥っ子になってるまで、私たちが今し方話し合っていたことをヒョウカさんにも説明する。

 かくかくしかじか。

「……はぁ、私が出かけているうちにそんなことが起きていたのですか」

 ヒョウカさんはお茶をすすりながらうなずいた。途中で煎れました。私の前にはないけど、仕方ない。ロザリーさんやランエイさんたちが申し訳なさそうだけど。


 でも、まだドラゴンと打ち明けるタイミングがなぁ……。


 目的地だった竜人さんだけども。果たしてこの方、どう出てくるかな?

 そう……この半年間、ふとしたことで私の正体がばれたときに。なかなか考えさせられることも多かったから。

 世の中、ロザリーさんのような善属性の方が珍しい。しみじみと。

 私のぬいぐるみの振りが上手くなっていることから、察していただきたい。


 でも、今こうして話しを静かに聞いてくれている姿から、ランエイさんが危惧していたような変――んん、いたって穏やかそうだけど。不法侵入も怒らなかったし。ゲンヤさんの行動に慣れていらっしゃるからかもだけど。


「先生、今回はだいぶ留守にしていたのか?」

 するとゲンヤさんから先に質問が。

 そういえば彼はヒョウカさんへ「先生」て呼びかけるんだな。

 ヒョウカさんは分厚い眼鏡でお顔はわかりにくいけれども、お年や雰囲気はロザリーさんくらい。つまり、ゲンヤさんの方が年上にみえる。

 ランエイさんとはまた違った黒髪だけど、ぬばたまていうやつかな、艶やかで深い色合い。

 竜人とあったから、私は勝手にファンタジーにあるような蜥蜴のような外見のひとを想像していたけど、まったく人間とお変わりない感じ。

 何をもって「竜」なのかしら?

 旅装で外套のままだからわかりにくいけれども、背丈はまた高くて、鍛えてらっしゃるよう。

 あれだな。獣王国は強いことありきだから、この方もそうありそう。

 彼はちょうど旅から帰って来たばかりだという。

「ええ、遥か西の方の砂漠地帯……」

 あら、私たちが来た方だ。


「砂漠の隣に森が有名な国がありまして、そこに竜が現れたと微かな噂を聞いてね」


 ――ん?


「ああ、先生の悲願だものな。竜に会うのは」

「はは、どんな微かな手かがりでも向かいますよ。ですが今回も会えず終いでしたが……」

「そりゃ、お疲れさまでした」

 ゲンヤさんとヒョウカさんの会話に……いや、それ……。


「森の国で、元は兵士だったという者に話しを聞けましたが、儀式の最中に問題が起きて、竜と自称する不思議な生き物をつれた冒険者がそれをおさめたらしいのですが……」


 そこで、彼は――あれ、と首を傾げた。


「……そこにハウンドウルフが現れて、連れていかれた、と……」

 ハウンドウルフ。後ろにいますね。

「……冒険者?」

 ロザリーさんがこっくりとうなずいた。

「……不思議な、生き物……」

 皆さんの視線が集まる。

 ロザリーさんの膝の上に。


 ――私に。


「……どうも、ドラゴン――竜です」


 一瞬だけ、ドラゴンのオーラを解放。

 加護もあるし、もう既に慣れているロザリーさんと私のお供たちは変わらずだけど、獣人の皆さまはその一瞬でビクリと飛び上がるように後退った。ランエイさんたちもまだ慣れないよね。

 生き物ですよと、明らかにするために片手もあげる。よ、と。

「しゃべったぁ!?」

 毎度おなじみちょうだいしました、ゲンヤさんから。

 ヒョウカさんは……。

「あ、あ……」

 小さく呻きながら、震えながら……飛び退いたその先で――。


 ……倒れた?


 いや、やだ――五体投地されたー!?


 ……そうして私は、ランエイさんが言っていた、竜人さんの評価、ちょっと理解したのだった。うん。あとで落ち着いてから紹介されたかったかもなぁ……。



西から果物を輸入したから、そこから噂話を聞かせて貰ったという裏話。ペンギンたちより噂話の海路の方が早かった。

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― 新着の感想 ―
[一言] やっぱり、竜人って、ドラゴンの下位支族的な存在なんでしょうかね? ヒョウカさんの扱い的には、ドラゴン(ペンギンですがww)は【神仏】や【生き神】みたいな
[一言] まさか当事者たちがドンピシャで自分ちに居るとは思わんよなぁw
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