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生まれ変わったら飛べない鳥でした。~ドラゴンのはずなのに~  作者: イチイ アキラ


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第59話 不法侵入現状確認。


「あわわわ……」

 誰が言ってるのかと思ったら私だった。

 でも皆も同じよう。

「げ、ゲンヤ殿!?」

 慌ててランエイさんがゲンヤさんを止めようとしたけど、もう既にお家の中。むしろ振り返り、こちらに続くように手招きなさってる。

「いや、不法侵入は……」

 顔を再び見合わせ、双子とロザリーさんが首を横に振るの、当然。

「だがなぁ……じきに日が暮れるぞ?」

 日が暮れたらさすがに冷える。慣れているとはいえロザリーさんを野宿させたくないし、せっかく回復してきたランエイさんのことを思えば、確かに……。

 ゲンヤさんはがっしりした顎を撫でてから、再び来い来いと手招き。

「おじさんとしては、とっとと現状確認したいんだがなぁ……」

 ……それもそう。

「特に、何故、ランエイが帰ってきているのか……」

 ――俺の気の変わらないうちに。

 ゲンヤさんの小さな声。それを拾ったのはドラゴンのやたら良い耳した私だけだったみたい。

 ゲンヤさんが、心代わりて……むう?


「いや、しかしなぁ……」

 ロザリーさんが困ったと、首を振る。

 うん、不法侵入は犯罪だから。ロザリーさんは冒険者の資格剥奪になっちゃわないとも限らない。

 躊躇う私たちに、ゲンヤさんが新たに提案なさった。

「では、お前たちは無理矢理押し入った俺を止めるために、仕方なく、巻き込まれ、家に入ることになった、で行こう?」

 おーけぃ?

 なんという機転。

 もう苦笑するしかないけど、ロザリーさんもそうきたかという顔をしている。


 なので。


 お邪魔しますと、私たちもゲンヤさんに続いてしまった。

 悪いのはこのおじさんやで。




「……マティの実が?」

 かくかくしかじか。

 竜人さんのお家の中。

 囲炉裏のような炉端があって、そこで話をすることになった。私にも懐かしいそんな囲炉裏に餅を串に刺して焼き始めたゲンヤさんに、まずはランエイさんの具合が悪い理由。この獣人国の病の原因を説明した。

 ちなみに餅はゲンヤさんの。さすがにこの家のじゃないよ。

「あの実がそんな大変なものだったとはなぁ……」

 ゲンヤさんは傭兵として獣王国から出歩くことも多かったそうだけど、知らなかったと。

 今回、国に帰ってきて、病にびっくりしたけど、原因にはさっぱりだったとか。

「まぁ、まだまだ西方砂漠の方でも周知が行き渡らぬとも聞きますし」

 傭兵は冒険者と違って自分で食べ物を用意することはあまりないらしく、その時の雇い主や、所属した傭兵団がまとめてってものなのだそう。それも給金のうちで。

 だからマティの実が饗されたことがあったけど、はじめから二、三個で、そういうことを提供先が知っていたんだと、ようやく今はっとしたらしい。

 それに興味ないひとって本当に興味ないことは気にならないもんだし。

 冒険者も傭兵みたいな感じかなて思ってたけど、やっぱり違うのかな? あとでロザリーさんに聞いてみようかしら。

「ランエイはもう大丈夫なのか?」

「はい、それはこちらにいるロザリー殿のおかげで」

 現状、まだうっすらとあざはあるけど、熱も下がって歩けるようになった。でもまだまだ倦怠感が抜けず身体が重たいそうだけど、だいぶそれも良くなった。

「そうか……それで、ランエイは戻ってきたのか?」

「……はい?」

 話をすると、ゲンヤさんが困ったな、とため息をついた。


「獣王なるためか?」


「それは……私は国を捨てました」

 傍らにいたベニユキさんがそっとうつむいた。

 ゲンヤさんはそれを痛ましそうに見た。ランエイさんが国を捨てた理由をもう察したからだ。

「だが、この成果があれば候補に戻れよう?」

 ランエイさんがこの成果――病の原因て治し方――を持って帰還すれば……。

 自分がこのように治ったのだから、他のものも助かると、実例つきだもの。

 どうやら獣王になるには国に何かしらの献身なり、有益な事なりをするのがあるようだ。

 まぁ、でも、そうだよね。

 世襲制でないならば、国に良いことしてくれるひとが王様になってもらいたいよね。


 けれどランエイさんはゆっくりと首を振った。

 横に。


「……私は王にはなれません」

 彼はもう決めていた。

「私は国より、家族を優先してしまいます。そんな男は、王には向きません」


 ああ。

 そうか。

 私もようやく理解した。

 王様には……例えばトロッコ問題で、多数を選べるタイプじゃないとだめなんだ。

 そこに家族がいてもいなくても。


「……そうか」

 ゲンヤさんが深くうなずく。

「そうか、それは……」

 何度も言葉を探すように。

「いや、わかった。俺もどうするか悩んでいたんだが、お前さんが家族を守りたいのは良くわかる」

 ゲンヤさんがベニユキさんを見て、もう一度うなずいた。

「俺としては……お前さんが一番獣王に向いているとは思うんだがなぁ……」

「ですが……」

「家族も大切にできないものが、民を大切にできるはずがない」


 そうだね。

 私もそれにうなずきたい。

 トロッコの分岐。どちらも助ける欲張りさんが王様になったら――なれたら。

 そんな王様がいい。

 

「それになぁ……うちは家族を大切にするあまり、違う方向になってしまっているからなぁ……」

 それはどういう?

「俺ははじめ、お前さんが獣王候補になるために、改めて弟御を連れ戻ったのかと思ったのだが、そうではなかったんだし」

「私はそんなつもりでは……」

「うん、おじさんももう解ってるから。でも、そう考えるやつが俺以外にもいるかもしれん」

 うん……その辺りは難しいところだ。

「むしろ、マティの実の危険性や治し方を手土産に凱旋したとして、別口な道もあるな」

「それは、本当にこちらにいるロザリー殿のおかげで、私は何も……」

 急に振られてロザリーさんは「いやいや」と手を横に。

「だが、そんな人間の方の手助けを得られた点は高い」

 だからこそ、困ったとゲンヤさんは改めてうなずいた。


「うちは――桑呀は、そこの弟御のかわりに贄を出して、獣王候補になったのだ」

「そんな……」

「そう、だから、今……ランエイがこんな大手柄と、弟御を連れて戻ってきたとしたら……」


 ――好敵手と書かないライバルだ。



今日は世界ペンギンデーだとか!ペンギンを崇めよ讃えよ(・∀・)

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