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生まれ変わったら飛べない鳥でした。~ドラゴンのはずなのに~  作者: イチイ アキラ


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第58話 ダイレクトこんにちわアタック。



 獣王国は違う種族との縄張り的なものがあり、もしも侵せば戦いのもと。  

 見えない縄張り、陣地取り。

 それがないのが獣王国の都の門の中。争いは御法度。


 だからランエイさんも、人間のロザリーさんが竜人に安全に会えるのは獣王国の都の中……と、後から紹介してくれるつもりだったのだけど。


 竜人さんの庵にダイレクトアタックしてしまうことになるとは。


 もともと私の目的地だったけど、これは偶然が重なったことにより。

 それというのもゲンヤさんは竜人さんと昔からのお友達だとか!

 だから彼は庵までの抜け道を知っていた。竜人さんの庵は、道順をしらないと迷うこともある不思議な作りだそうで。

 今の現状、隠れるなら最適。

 私たちは裏技で道しるべなピンがわりにゼノンがいたけど、そうでもないとなかなかたどり着くのも難しかったろう。いや、たぶん着けなかった。

 ロザリーさんが気が付いたけど、目眩ましの魔法的なやつがかかっていた。

 目印がなければ、迷路な如く、と……。

 ゲンヤさんは友人として竜人さんに許されていたから通れる。ゲンヤさんと同行した双子さんも。


 そんなゲンヤさんに……ベニユキさんを早く安全なところへ、と言われたのだ。

 ランエイさんではなく。

 ランエイさんが歩けないなら背負ってやるとまで、急かして。


 何故ならば、生贄を出している彼の一族がベニユキさんを狙う可能性があるから。

 己の一族が優位に立ったのは贄を提供したからと、彼はその深いところまで知っていた。


 ならば今もし、他の贄が現れたら――。





「……ふわぁ」

 懐かしい青く清浄な空気に匂い。さわさわとした葉が奏でる風に揺れる音。

 竹林だ。

 竜人さんの庵は竹林の中にあった。

 獣王国は、ランエイさんたちの名前や着ているものから、もしやと思っていたけど、和と中と洋の、和と中が大きめに出ている世界みたいだ。

 私がどことなくほっとする雰囲気のはずで。


「竹だ……」

 ああ……嗚呼、懐かしい……。

 うちの土地にも竹林はあった。田舎だから先祖代々な土地は広くてね。その一角なところに。

 そして私の婆様の趣味は竹細工……。

 それは趣味と実益かねて。

 籠から笊から農具、玩具まで。

 婆様のために、爺様が鉈を腰に差して材料調達に行くのによくついていった子供の頃――……嗚呼……ああ……。


「……どうした、ジュネ?」

 抱えてくれていたロザリーさんが声をかけてくれたから、私は今に、戻る。

 ペンギンに。

 ……ああ、私はもう少し、人間でいたかったな。今改めて思ったわ。

 懐かしい雰囲気に、ちょっとだけメンタルやばかったけど、私は何とかロザリーさんの呼びかけに戻ってきた。

 ロザリーさんは硬直していた私の様子が治ったことにほっとしてる。ご心配おかけしました。


 庵は決して小さくはなく、今日はお金持ちの茶室的な雰囲気なものが多かろうが、こちらはしっかりと住まいとしても機能しているやつだ。

 庵というより、今の私の感覚なら古民家? どことなく中華風?

 そんな建物の前にて私たちは双子さんと合流した。

「本当に合流できるとは……」

 ゲンヤさんはガロンに先導されて到着した私たちにびっくりしていた。

「ハウンドウルフ……」

 先導が魔物だと案の定身構えられたけどね。

「どうぞ、危害はありませぬ」

 ロザリーさんの落ちついた様子に彼はしたりとうなずいた。

「いや、道々に彼らから聞いておりましたが、魔物を仲間にしているとは……」

 ゼノンが無害だとは既に理解してくれていたよう。

 そして双子さんがゼノンには本当の連れがいると説明してくれていたとのことで。

 それが冒険者のロザリーさん。彼女はハウンドウルフも共にしていると。

 彼女に助けてもらい、さらに使いに出てもらっていると、上手いこと。


 私のことは黙っていてくれた。

 うん、説明難しいよね。


 玄関前で合流したのは……家主さんがどうも留守みたい。

 ごめんくださいと呼びかけても返事なし。

「しまったな……」

 ゲンヤさんは連絡もしないで来たから自分が悪いのだと困り顔。

 ゲンヤさんは背の高いロザリーさんよりさらに頭一つ以上高い。

 猪の獣人さんとのことらしいけど、なるほど。がっしりとした体格に金茶の髪。

 鋭い下顎の牙にもう一度、なるほど。

 お年は四十なりたてくらいかしら?


 そんな彼がふとこちらを向いた。

 ロザリーさんに抱えられたぬいぐるみな私に気が付いて。


 うん、微笑ましい目をされたよ。


「私はロザリーと申す。冒険者をしております」

「おう、これは申し遅れた。ゲンヤと申す。今は傭兵をしておる」

 視線を受けてロザリーさんが自己紹介すればゲンヤさんもそれに応じて。

 だが、その視線が言っている。


 何でこの冒険者、ぬいぐるみもってるんだ?


 ……と。

 ロザリーさんをそんな目で見んといて!

 

 まぁ、この旅のうちに何度もこういう生暖かい視線は向けられたけども。ロザリーさんに申し訳なく。

 私が不満な視線と感情をお返しにゲンヤさん向けているうちに、彼の興味は留守宅に……いや、もともとぬいぐるみには興味はないっすよね、はい。

 彼は玄関の扉にそのたくましい腕をのばしていた。


「仕方ない、入るか」


「え?」

 竜人さんが帰ってくるのを待っていたけど、いつになるか解らない。

 ゲンヤさんが仕方ない、と続けた言葉に皆して驚いた。

 や、入るかって――。


 ――バキッと。


 ゲンヤさんが入り口の扉を開いた、そんな音した。

 ……いま、鍵壊れたよね?


 勝って知ったるな態度でゲンヤさんはずんずん中に入っていく。

 双子さんとロザリーさんは――しかもゼノンとガロンまで目を丸くして顔を見合わせちゃった。私も目を丸くして口まであけちゃった。あんぐりですわ。

 ようは筋肉でこじ開けたね、これ。


 ガチでこんにちわダイレクトアタックじゃん!!?



 

引き戸「解せぬ。」



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