第50話 獣人の双子。
ぴょこんとたってる三角のお耳。
それはまさしく――猫の耳。
「獣人の方であられたか……」
ロザリーさんもびっくりしている。フードを被っているのはワケありだとは思っていたけども、と。
「はい、私は黒婉が一族のランエイと申します」
青みがかった深い黒髪にまた深い藍色の瞳の美丈夫は、身体に、顔にも薄らと青あざが浮かんでしまっている。
それでも彼の整った顔には飾りのよう。
だけど腕などから鍛えているとわかっていたとおり、そのおかげでふらつきながらもこの野営地まで歩けてこれたのだろう。
「こちらは弟の……ベニユキ」
先ほどから「兄さん」と呼んでいたからご兄弟なのかしらと察してはいたけど。彼の傍ら、紹介された弟さんに私たちは一瞬息を飲んだ。
真っ白だ。
そして彼が顔をあげたとき、また。
真っ赤だ。
雪のような真っ白な髪と肌。だけどその双眸は真っ赤な紅玉。
……アルビノだ、と私は心の中でつぶやいた。
二人は身体付きと色合いこそ違いがあるものの、その容貌は兄弟にしてはよく似ていた。
それもそのはずで、双子だそう。
二人とも、かなりの美形さんだ。
まあ私は察してはいたけど。
何故なら小柄な私は……フードの下から、ね。形のよい顎や唇、鼻先の様子が見えていたわけで。
の、のぞきじゃないよう。不可抗力だよう。
だからこそ余計にワケありかしらと……まぁ、いまはしゃべれないから黙っていたけど。
ランエイさんは背が高く、やや細身ながら良く鍛えられているとわかる身体なのは先ほどから。黒髪の艶は今はやつれてないものの、毛並みと言うべきか、それは滑らかで手触りもよさそうだ。
猫のような、ややきつめな瞳は深い藍色。
いや、その耳のとおり、猫科の獣人さんであるという。
今は隠しているが長い尾っぽもあるとか。
そして弟のベニユキさん。
真っ白な髪と真っ赤な瞳。
ランエイさんより細身だが、どことなく儚げに見えるのはその色合いと雰囲気のせいだろう。
双子であるよう、よく似ているけど、そのせいで彼はお兄さんよりも中性的な色気のある美形さんだ。
美形な猫の獣人さんの兄弟旅か。
フードを被っているのは獣人さんであると隠したいからだという。
やはりこの世界、人間と獣人との間にはどうしても差別的なものがあるとか……悲しいね。
幸いロザリーさんはそうした垣根のない方で。双子も話していて、それを感じてくれたそう。
そりゃ、魔物の子を拾って保護してくれているほどですからね。現在進行形で。
ロザリーさんはお仕事柄、あちらこちらの国を行ったり来たりしているから、獣人の知り合いもいるそうで。それに獣人の冒険者も少なからずいるから、と。
彼女のペースで進んで来ていただいたこの旅も、獣王国には以前近くまで行ったこともあるからと、道行きも安心でした。
だけどやはりロザリーさんのような善人ばかりではないのは、世の哀しさ。
双子が耳などのわかりやすい特徴を隠すのは自衛手段としてありだろう。
それともう一つ。
「私が忌み子でありますゆえ……」
……やっぱりワケありでした。
またも少々体調悪く…花粉…滅せよ…!
あと、自分で地図を書いて今後の設定立てましたらば、三ヶ月ではなく半年の旅に変更しました。




