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生まれ変わったら飛べない鳥でした。~ドラゴンのはずなのに~  作者: イチイ アキラ


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第48話 野営地の過ごし方。



「私たちも今宵、こちらにてお世話になりとうございます」


 丁寧に挨拶をして二人は野営地に入ってきた。深くローブを被って怪しくあるものの、敵意も感じないことにロザリーさんがどうぞと挨拶を返した。

 二人ともロザリーさんよりやや背が高い。あ、ロザリーさんも実は女性の中でも背が高い方だと人間の町に行ってわかった。

 挨拶をしてくれた方の声は高くも低くもなく。男性かしら、女性かしら?

 そのひとが連れの歩行を助けるようにして、野営地に入って来たのだ。

「む? 具合でも悪いのか?」

 ロザリーさんがその様子に大丈夫かと声をかける。お人好しさんは気になるよね。

 だけど二人は――特に支えている方がびくりとして、手伝おうかと腰を浮かしかけたロザリーさんに、逆に大丈夫だからと礼を言っている。

 私がこっそりと見ていると、支えられている方は怪我でもしているのか、フードから覗く腕などに内出血のような青いあざができている。だからふらついて歩けないのかな?

 声はないけどこちらは体格からして男性のよう。見える手などもがっしりしてるし。うん、鍛えられた手だな。

 雰囲気からして近いし、ご夫婦かしら?

「どうぞ、火の近くにこられよ」

 ロザリーさんは二人に焚き火の方へと席をすすめる。夜ともなると冷えるから。

 この野営地を先に使っているひとたちが徐々に使いやすくしていったのか、焚き火跡のところにはコの字になるように丸太が置かれていた。座って焚き火を囲みやすいように。

 他にもうひとつ焚き火をおこすのも効率が悪いから、お二人にもこちらの焚き火を使ってもらおう。

 こういうのは旅の間によくあったことで。

 ソロキャンプも良けれど、一期一会の一晩の語らいも大事。同じ冒険者なら情報交換とかもできるし。

 獣は火を嫌うの多いから、焚き火は絶やさないようにしたい。こうしてご飯も温かいもの食べれるのありがたいからね。

 あと、焚き火に魔物避けの香を入れたりすることもあると、ロザリーさんや旅の間の知り合ったひとたちも言っていた。

 まあ、ロザリーさんには私がいるからいらなくなったもののひとつ。なかなか高額らしいから、お役に立てて良かった。

 二人連れはロザリーさんの言葉にありがたくと焚き火の近く、私たちの反対側に。

 私はそうなったらお口チャックで置物のふりがいつものことで。

 ロザリーさんがガロンやゼノンに話しかけるのはテイムしているから、という体がとれるけど――私はこの世界には「なんだこれ?」とされるペンギンな姿。

 ドラゴン亜種ペンギンだから。

 ややこしいことになると、早々に理解しました。置物の、ぬいぐるみのふりが一番安全。

 問題はだだひとつ。


 ロザリーさんがぬいぐるみ連れた冒険者に見られてしまうこと。


 ……はい。この男前なお人好し冒険者さんは笑って受け入れちゃうんだもの。

 ありがたやー。

 私はガロンとゼノンに、今夜は野営地に他にもひとが来たからね、と念じて連絡をいれる。

 お供のふたりには、何だか糸のようなものが繋がっていて、離れていても会話ができるのだとちょっと前に気が付いた。

 糸電話かなぁ?

 糸はどれだけふたりと離れていても途切れない。思い出せば、助けを求めたときに手繰り寄せたの、この糸だ。

 不思議な感じだけど、これもドラゴンだからか。それとも魔物なら普通なのかしら?


 自分の取扱説明書がほしい今日この頃です。


 ふたりから了解したと糸電話のお返事を受け取る。今夜は野営地の近くで休み、また明日、合流するとのこと。何かあったら呼びかけさせてもらおう。


 焚き火の側に落ちついた方のお二人はこれから食事になさるよう。

 こういう所では、基本的に自分の食事は自分で持ち込むもの。

 たまに余分があったりすると振る舞う商人さんの隊とかあったりする。その分、もしも盗賊が来たりしたら一緒に守ってね、て暗黙の感じ。

 あとは、物々交換とか。

 私たち、ロザリーさんはもう既に兎さんを炙って食べたところで、あとは木の実を齧るくらい。

 携帯のやかんにお湯を沸かして、あとで茶でも飲もうとしていたところなんだよね。

 二人連れは持っていた荷物から干し肉や干し果物などを出して食べ始めた。固形のは穀物を固めたやつかな? お煎餅みたいだ。

 初めて逢ったときにロザリーさんも食べていたし、私の空間収納の中にも買い足ししてあるけど、基本的に旅はこうした携帯食料になる。やはりかさばるからね。

 私たちはガロンとゼノンにお裾分けもらったり、私の空間収納があるから町で生鮮食品買ったりして、最近はわりと良い食事状況だけども。

 美味しいの大事。

 ロザリーさんには元気で健康で獣王国までお願いしたいですし。

 だけど二人連れの食事を、それを何故かロザリーさんがじぃっと見ている。

 まだお腹空いてるの?

 でもロザリーさんの手にはまだ木の実があるのに?

 二人連れも視線に気がついてきまずそう……。

「あの、何か……?」

 食べますか? 何てとうとう言われてしまったよロザリーさんたら。

 だけど彼女は「いや、そんなつもりではなく」と首を横に。

 その代わりに、問うていた。

「それはマティの実でありましょうや?」

「は? え、ええ。そうですが……」

 フード越しにもまだ体調が悪いと感じていた方の男性が、自分の食べていた干し果物を問われていると気がついて頷いた。

 二人は食事中でもフードを被ったままなんだ。

 ロザリーさんは二人にうなずく。

「覚悟してお好きで食べているならば良いのだ」

「は?」

 二人がきょとんとしている。

 私もきょとん。


「いやだが、マティの実の中毒が出ているご様子。さすがに控えられてはいかがかな?」



そろそろキャンプ行きたいなぁ…

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