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第47話 新たな出会い。



 ロザリーさんが兎さんの肉を炙っている間に、私はグミのような木の実をもきゅもきゅしてる。これはゼノンが先日取ってきてくれたもの。

 空腹感じない私だけど、どうせならこの世界の食べ物をいろいろ体験してみたいから。

 ロザリーさんたちの空腹優先で、こうしてゆとりがあるときは頂戴している。今のところ、ずっとゆとりがあるのが安心。ご飯大事。


 兎さんの肉やこうした食物は私の空間に入れてあるのだ。

 気がついたのだけど、何と、時間経過がないらしく、入れた時の鮮度をキープしてくれる。しかも容量はかなりある。どれくらいあるのかわからないくらい。

 何て便利!

 冷蔵庫要らず!

 ロザリーさんには私の空間収納をお話してある。

「何と便利な……!」

 と、ロザリーさんもほめてくれた。

「実は私も小さい収納アイテムを持っているのだが、時間経過がないのはうらやましいな」

 それはアイテムボックス。

 ロザリーさんは小さな巾着袋を持っていた。小銭入れみたい。でも説明聞いたら、それは私の感覚では段ボール三箱くらいの容量らしい。そして時間経過はあるから生もの危険。

 いや、それでもすごく貴重な代物。私も日本にいたら、そんな圧縮袋ほしいと絶対思ってた。移動が絶対楽になるもの。


 ロザリーさんが冒険の最中にとあるダンジョン(やっぱりあるんだダンジョン!)で入手したもので、便利なものだから手放さずに使っているらしい。

 あと、あまりにも貴重だから、ふだんから肌着につけて、此処ぞというものしか入れていないとか。

 ロザリーさんは冒険者であちこちに行くから、今のところ拠点にしている場所もないのだとか。だから大事なものは持ち歩くしかないから、これは本当にありがたいアイテムなのだそう。

 思えば野営道具とかほとんどリュックに入れて背負ってましたしね。


 ……。


 だから何でそんな大事なこと私に話しちゃうかな……!?

 と、何故か私がぷりぷりしたその日に「ジュネのことは信頼している。それにドラゴンを誰が欺けようか?」といっそ男前な微笑み……ああ、もう! 素敵なひとなんだから! このお人好しめ!

 信頼してくれて嬉しい。

 だから打ち明けた日から、ロザリーさんの重たい荷物や、かさばる食料などは私が持っている。便利な機能は使わなくちゃ。

 ただあんまり手ぶらな一人旅は怪しいし、ロザリーさんは引き続きリュックは背負っている。うん、たまに私が入ってるよ……。




 ところで旅をしてきて、いくつか気がついたことがある。

 クワドの森から出てからまたしばらく砂漠との堺みたいなところを旅していたんだけど……。


 この世界は――何か乾いている。


 なんて説明したらいいかな……砂漠みたいなのがメインな、エジプトやアラブ方面のような世界なのかと初めは思っていた。

 でも、何だかちくはぐなんだよな……上手く言えない違和感というか。

 乾いているのは大地だけど、大地だけが乾いているとは言えないような。空気というか、なんかそこら中……うーん。

 この世界に住んでいる皆さんの生活様式が環境に適していないような……。

 すぐ隣が砂漠なのに、町もすぐ隣に……。


 ……鳥取砂丘?


 ありえるな? 町と、砂漠の近接?

 よくわからなくなってしまい、私はこれを一時忘れることにした。

 まあまだ、水でひゃっはーと奇声あげるような世紀末な雰囲気はなかったし。

 ロザリーさんにちょっと尋ねて「そうだろうか?」と彼女も悩ませてしまった。

「ほら、食べ頃だ」

 彼女に串に刺されたお肉をもらう。

 炙られて薫香がますますたち、ほどよい焦げ目としたたる脂の輝きのなんて見事な焼き加減。

「いただきます」

 大事な挨拶をして、両手合わせて受け取った。

 私のこの食前の「いただきます」と食後の「ごちそうさまでした」の慣習を、不思議がったロザリーさんにお話したら、良いことだとしきりに感心していた。

 自分の命を繋ぐ、その食べ物になってくれたものに感謝することは何と尊き思考か、と。あと、作ってくれたひとにも感謝。

 さすがドラゴンだと――いやいや、日本人の当たり前な感覚なんですが。

 ロザリーさんも「いただきます」と言うようになられた。

 そんなこんなでくちばしで兎さんを啄んでいたら、野営地に何かが近づく気配があった。

 ロザリーさんが気がつき、食事の邪魔にならないよう横に置いていた剣をそっと確認した。

 ガロンとゼノンかと、静かに問いかけられたけど、私に繋がっている彼らの気配ではないから同じく静かに首を横に。


「……失礼します」

 野営地に入ってきたのは人間二人だった。

 フードを深く被った二人は、私たち――と、いうかロザリーさんに挨拶をして入ってきた。

 私はそれとなくロザリーさんの傍らに移動していたし、いつもロザリーさんの一人旅と見られているからもう慣れたもの。


 それに、野営地は私たちの占領ではないから。

 こうして後から冒険者や、旅商人なども訪れるのはままあることで。

 一番厄介なのはそうしたのを狙った盗賊さんだけど、盗賊も冒険者や用心棒に返り討ちに合う覚悟の奴が来る。

 覚悟完了した奴は、よほど自信がある奴かこちらの実力もわからない手合いか……よほど切羽詰まった奴のパターンと、この半年で理解した。


 そしてこのひとたちは、盗賊ではなく。私たちと同じく寝られる場所を求めて来ただけのご様子。



「私たちも今宵、こちらにてお世話になりとうございます」

 



ロザリーさんの収納はカラーボックスの三段のやつくらい。だからアイテムボックス。

子ペンギンのは4次元ポケット。∞。

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