第46話 半年経ってもふわふわもふもふでした。解せぬ。
旅は道連れ。世は情け。
人間一人と魔物三匹。
基本徒歩、時々ハウンドウルフの走力で。
時々、ロザリーさんの一人旅だと侮った盗賊に襲われたり、返り討ちにしたり、根城壊滅させたり。盗賊に襲われてる人たちを助けたり。たまに厄介ごとに巻き込まれたり。おかげで小銭を稼げたり。
そんなこんなしながら、私たちは獣王国を目指していた。
いやぁ、現代日本て平和だな、て私はしみじみ……。
「昔は冒険者等級も七つあったらしいのだが、時代とともにあれこれ変わったりして今の形式に落ちついたそうだ」
「七つですか?」
「ああ。金、銀、鉄に水銀……あとなんだったかな。今でも何かしらにその並びを使うところもあったりするらしいし、冒険者等級の四色と並びはその名残でもあるという」
なるほど。
あと、プレートを見て一目で等級がわかるようにしたかった人がかつて冒険者ギルドにいたのかも、とロザリーさんや今の冒険者たちが感謝しているところだとか。
シンプルがベストでございますな。
「何より、その四色ならプレートに付けやすいのもあったのかも」
「ですねぇ」
プレートには何らかの魔術システムが組み込まれていて、偽装しにくくなっているそう。ロザリーさんにとっては大事な個人証明書。
通行手形でもある。
国境を越えたりするのにも、こちらを見せて確認してもらうことですんなり。
通行税は冒険者ギルドが国々に渡ってあるものだから、冒険者であるうちは免除されたり割引されたりするそうな。それは冒険者が国を越えて依頼を引き受けやすくするためでもあり。
そうして冒険者ギルドは依頼料のうちの幾分かを手数料として取ることで、成り立っている。高ランクの依頼ほど依頼料も当然お高く、ギルドに入る手数料も正比例。
国々にしてみても、冒険者が人々の困り事や魔物の討伐をしてくれたら助かるわけで。デメリットもあるだろうけどその分、国の兵士たちにはイレギュラーな別な仕事を振り分けることなく、安定した任務ができる。
そういうのが嫌な国はそもそも冒険者ギルドなどに加入していないらしいから、なるほどね。
ちなみに、やはりロザリーさんの旅には食料とかをはじめ、どうしても人間の村や町で買い出ししなくてはだから、たまに寄って頂いてた。
そう、きちんと屋根がある場所で寝た方が良いし、お風呂とかも入りたいからね。
そういうときは目立つガロンやゼノンは、町の外で先回りしてもらったり、待っていてもらったり。ときには影で呼び出したり。
本当はテイムしているわけじゃないから、突っ込まれたらややこしくなっちゃうからね。
それに買い物は大事。
特にご飯大事。
人間には塩分大事。カルシウム大事。マグネシウム大事。鉄分(以下略)。
ご飯を美味しくするための調味料、スパイス各種、とっても大事。
生前人間だった私にはそれがわかるし。
ロザリーさんの健康方面のためにも、その辺りはとっても大事。妥協しませんとも。
あと、何気にロザリーさんも歴史などが好きらしく、この世界のあれこれご説明してくださるのが楽しい。
町の入り口でもギルドカードを提示していたから、どういう仕組みなのかとお尋ねしたら、ギルドのこともまたいろいろ教えてくださった。
そんな旅をしながら、もうすぐ半年。
地図を見せてもらったら、大陸の南西方から東の方へと旅してきたことになる。
かなりかかったな、て?
徒歩だから仕方ないし、私は自分ではペタペタとしか歩けないから、文句なんて言いません。
この世界、鉄道みたいなのはないみたい。
それでも、楽しい旅だった。
もう少しで目的の獣王国だ。
今宵は久しぶりに野宿――ではなく、冒険者などが使う野営地。
私がはじめに捕まっていたようなところね。
日が落ちかけてきたときに野営地を見つけて、使っている人がいなかったからありがたく使うことにした。
いやだって、ロザリーさんひとりならともかく、ハウンドウルフと一角猩々と、あとドラゴンも一緒ですから。他の冒険者の方々も気まずいでしょう。
はい、ドラゴンです。ドラゴンったらドラゴンです。
半年経ってもふわふわもふもふな灰色の子ペンギンから成長してませんが……解せぬ。
これがドラゴンの成長速度なのかしら……兄姉たちは今頃、どんなドラゴンになっているのだろう……。
小猿だった一角猩々のゼノンはそれなりに成長著しいのに。
その魔物ふたりは今は自分たちの食料調達に出掛けている。私が近くにいると魔物避けになってしまうから、ね。
そう、ゼノンはともかく、ガロンは主に肉食――弱肉強食は魔物の世界こそ。
たまに仕留めた魔物をガロンはお土産にしてくれて、ロザリーさんと私のご飯にもなったりする。ゼノンも木の実などを。
そう、魔物は食用できるのもいるので。
ロザリーさんは先日、そうやってお土産にされた兎に似た魔物の肉を燻製にしておいたものを、焚き火で炙ってくれている。遠火で炙るのが美味しくなるこつですね、はい。
そんな香ばしい肉の匂いか、それとも焚き火の明かりか。
それが目印となり、野営地に新たな客を招くことになった。
はからずもちりめん問屋の御隠居さまの旅の如くしてしまったペンギンでした。
そのどったんばったん旅は省略。機会があったらまた。
これにて閑話的な説明回もおわり。次からは新章…のハズ。




