第40話 そして森は終わりを。
私たち的にはほんの数時間もないくらいだが、それは地上で待機していた三人の兵士にとっても同じで。
「ハウンドウルフさん!」
「かしこまりました!」
私が三人いると伝えると、それだけで察してくれた。
兵士たちは中で響いた咆哮にさすがに気がついて身構えていた。
何が起きているのか戸惑いながらも彼らは各々武器を構えて、開いたままの地下への入り口に対峙していた。
そこにハウンドウルフさんに騎乗したロザリーさんが地下から登ってくるのが見えたのだろう。
「白銀の冒険者殿!?」
ロザリーさんのことは数時間前に出会ったばかりだが、やはりそれだけ印象強かったのか。
当然、こちらからも兵士たちの姿はわかる。
幸い、地下は地上に比べたら暗かったが、それでもあの不思議な灯りがあったから、目が明るさにくらむことはなかった。
地上へあと少し。
そこに私に言われていたハウンドウルフさんの咆哮が。
三人の兵士はそれをまともに受けてビリビリと震えた。
どれくらいの衝撃だったのか。白目剥いているのも。
彼らにしてみたら、まだ敵か味方かもわからないまま――ついさっきまでエリナさんの護衛だったから、味方だった。だから真正面から不意打ちを喰らったようなものだ。
でも、こちらは立ち止まって説明してやる義理はもはやなく。
「――はっ!」
その隙にハウンドウルフさんは地上に飛び出した。
そして駆け抜ける。
「槍持ちがいた。危なかったな……」
ロザリーさんがすれ違いざまにそうつぶやいた。長物持ちだから地上に残っていたのか。
地下にいたうち一人は短槍持ちの兵士で、長槍はまた戦い方が違うとロザリーさんに後々教えていただいた。
槍と剣ではやはり長さにより戦い方もあれこれあると。
単純に、騎乗しているところを突かれたりするのも大変だとか。
ロザリーさんはそうした騎乗での戦い方も詳しかった。
……というか、元々はそちらが本業であったと知るのは大分あと。
そんなこんなで、私たちは地下神殿から、脱出したのだった。
――そして私たちが、クワドの森が無くなったと聞いたのは、それからちょうど一年後だった……。
今回は体を壊してしまったので短めですが…。
ですが、これにてちょうど切りよく第一幕目的には終幕です。
次からもどうぞお付き合いよろしくお願いいたします。
寒さが強くなって参りました。皆様もお体ご自愛ください。




