第20話 お荷物、再び。
「私が連れていってやろう」
ぺひょ?
思わず変な声が出そうになった。
神か?
いや、女神か? ロザリーさんは?
神とされるドラゴンがそう拝みかけたよ。
……。
つか、それよりもステータスに特記事項・お人好し、て書かれてない?
今の一瞬で感謝から心配にと、心情一回転して斜め上に飛び出ちゃったよ!?
ロザリーさん、いいひと過ぎるでしょう!?
「え、え? いいの?」
あれこれびっくりしてる私に、ロザリーさんは微笑みをくれる。
「ああ。ジュヌヴィエーヴ、君一人ではきっと辿り着けまい」
ですです、場所さえ知りませんから!
「あ、あ、ジュネで大丈夫です」
ジュヌヴィエーヴは長いから、兄上様たちが呼んでくれていた愛称をロザリーさんに。
「うむ、ジュネ。だが、先にエリナ殿をお送りしてからでかまわないか?」
冒険者のロザリーさんはエリナさんに雇われて、彼女の護衛中。もともと、いやまさに現在進行形のその依頼中。
行き先は反対方向になってしまうらしい。だから遠回りだと。
「もちろんです!」
私はこくこくと首を縦に。ペンギンの首はどこだと気にしてはならないよ。
連れて行っていただけるなら多少の遠回りなんて。
「エリナ殿も、申し訳ないがよろしいだろうか?」
雇い主に同行を確認してくださった。
エリナさんは一瞬、少しだけ目を伏せて悩んだけど、すぐにうなずいてくれた。
「良いでしょう。ちゃんと目的地に着くならばかまいませんわ」
エリナさんもにこりと微笑んでくれる。
ああ、良いひとたちだぁ。ハーピーさんとはぐれてどうしようと思ったけど、良いひとたちに拾ってもらえて助かったぁ。
拝んじゃうね、もう。
私が短い手を合わせて涙目でぷるぷる震えていると、エリナさんにぷって吹き出された。
「もう、魔物とは恐いものだと思っていたけど、あなたのような可愛いのもいたのね……」
そうか、エリナさんに一歩引かれているなと気にはなっていたけど、当然だったんだ。
子供だとはいえ、魔物だもの。
私も、逆の立場なら恐かったかも。むしろ危機感ある方がいいんだろう。
そう思うとロザリーさん……やっぱりお人好しなんだろな……。
……うん。ちょっと心配……。
だけど今はその優しさに乗っかるしかないわけで。
「よろしくお願いします!」
お荷物、再び、です。
私というお荷物の同行が決まり、エリナさんの目的地も教えてもらった。
「クワドの森」
そこはエリナさんのお祖母さんの故郷だとか。
そして何とエリナさんは、その森近くにある国のお姫さまであられると!
「え、お姫さまなんですか?」
思わず素で尋ねちゃう。だってお姫さまが冒険者をお供に一人旅ておかしくない?
ちなみに私はロザリーさんの背負う荷物の上にちょこんと乗せてもらって座っていた。
お荷物、まさに。
これ極まり。
ロザリーさんが護衛として両手はなるべくあけておきたいという、ごもっともな理由がありましてな。
私も抱えられたままなのは申し訳なく。まぁ、背負った荷物の重さを増やすのも申し訳なかったのだけど、他になくてね。
視界が高い。地面が遠い。
でもなかなか快適。
そんな風にお世話になりながら森の中を歩く。
「まぁ、おどろきますわよね」
エリナさんは苦笑する。
「もっとも、追放されていますの」
……。
「……ぺ?」
今、追放て言った?
動物を拾ったら責任を取りませう。




