表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
生まれ変わったら飛べない鳥でした。~ドラゴンのはずなのに~  作者: イチイ アキラ


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

15/88

第15話 ゴブリンに襲われ恐れられ、自己紹介?



「私は――ジュヌヴィエーヴといいます」

 私の自己紹介に、変わらず戸惑ったまま人間の二人も……まぁ、おっかなびっくりだろうが。


「ジュヌヴィエーヴ……」


 抱き上げている赤い髪の女性がゆっく繰り返す。種族名ではなく、個体名だと解ってくれたよう。

 二人の視線が「大仰な名前だな」と言ってそう……そうだね、でも母上さまがつけてくれたのだもの。


「わ、私はロザリーと申す」

 赤い髪の女性はロザリーさん。

 ロザリーさんは、皮の胸当てに頑丈そうなブーツにマント。腰に下げた剣といい、私が生前親しんでいたファンタジー世界にあるよう、冒険者なお姿。

 赤い髪にキリッとした切れ長の黒い瞳。髪は邪魔にならないようにか束ねられていて、雰囲気やたたずまいから、男装のようにもみえて。

 生前の友人が好きな推し様にも似ているかもしれない。


「……私はエリナ、です」

 エリナさんは引き続き友人の好きそうな、まさに娘役な美少女。

 光が当たると白にも見える黄金色の髪に、宝石みたいな青い瞳。形のよい唇は瑞々しい桃色。

 服装こそ旅人のような姿だけど、舞台に立つきらびやかなドレス姿はさぞかし美しいんだろうなぁ。


 ――そんな事を思うのは……エリナさんが本当に「お姫様」だと、教えてもらうことになったから。


 私たちは自己紹介のあとに移動しながらお話することにした。

 私はまたロザリーさんに抱きかかえられて移動。歩幅が違い過ぎたので……。

「では、お二人が夜営していたらゴブリンが?」

「ああ、数は多くなかったが、ゴブリンは仲間を呼ぶからやっかいなのだ」

 ロザリーさんとエリナさんはこの森の先にあるという、とある場所を目指して来たらしい。

「もう少し岩場に近いところに使える野営所があると聞いてはいたのですが、そこは目的地からは遠回りですし……」

 時間と歩く労力を惜しんで、危険かもと思いつつ、野宿したわけらしい。

 ロザリーさんの様子から、そこまでたどり着くエリナさんの体力が無かったんだなと、うっすら察し。


 しかし、その野営所て……脱出してきたところですわなぁ……。


 冒険者ギルドによって、安全に野宿できるよう、あちこちにそうしたキャンプが作られているらしい。中には設備が古くなっていたり、周辺の危険度があり使えないキャンプもあったりするから、そうした点も訪れ利用する冒険者が使用したあとギルドに報告するシステムなそうな。

 そして私は先の三人を「狩人」と思っていたけど、「冒険者」が正しいようだ。

 だって狩人ゲームのイメージが強かったんだもの。自分、狩られる側ドラゴンだし。

 狩人は別にちゃんとした職業としてあるみたい。魔物も討伐することもあるけど、主に鹿や猪など、まぁ害獣駆除的な。うちの生前の田舎でも猟友会がシーズンには頑張ってくださっていたなぁ……。


 そしてロザリーさんもやはりお姿のとおり冒険者とのこと。

 今はエリナさんに雇われ、護衛のお仕事中。

 そんなこんなで、ゴブリンに三匹ほど遭遇した――と、いうか休んでいたところを襲われて。

 ロザリーさんが撃退しつつ、荷物をまとめて逃げていたところ、五匹に増えたゴブリン。ゴブリンは仲間を呼ぶので、それがやっかい。

 ゲームとかだと序盤のレベルアップに設定されし雑魚だけど、やはり現実は大変だ。

 二人の話を聞きながらそう考えていた。

「ところが急にゴブリンたちが……何と言ったら良いかな? そう、怯えはじめたというか……?」

「恐慌状態でしたわね……?」

 ゴブリン相手にロザリーさんが逃げることより、本格的に迎撃に身構えたとき。

 ゴブリンたちの様子が変わったらしい。

 二人を追いながら突如、混乱したような様子を見せ始め、するとすぐに怯えはじめたらしい。

 そのうちの一匹がまさに恐慌状態で、空に向かって持っていた矢を放ったら――私が落ちてきた、と。


 なるほど、あの矢を射ってきたのはゴブリンだったのか。


 して、恐慌状態とは?


「ゴブリンたちに何が起きたのでしょう?」

 このロザリーさんがそれほど強い怒気でも発しなさったか?

 そんな風に首を傾げる私に、ロザリーさんもエリナさんも首を傾げる。

「いや、むしろ我らも不思議で……」

 ロザリーさんは眉間に皺もよってる。

「そして君が落ちてきて、ゴブリンたちは悲鳴を上げて逃げ出したようにも見えた」

 そして今に至る。


 ……うーん?

 私が落ちてきて?


「何でだろう……」

「私たちが知りたいのだが?」

「あ、あの……あの時、巨大な鳥に捕獲――連れられていましたが、その鳥に怯えたのでしょうか?」

 エリナさんは皺になってないけど、同じく迷ったようなお顔。うん、言葉選んでくれてありがとうございます。

 うん、捕獲じゃなかったんだよー。餌じゃなかったんだよー。


「あれはハーピーさんです」

「は、ハーピー、さん?」

「はい、ご縁がありまして」

 ハーピーさん、ご無事かなあ……。ハウンドウルフさんと一角猩々さんたちも。

 私はのほほんと、別れた三人を思い浮かべる。思えばまだたった数時間……私の人生、いやさ竜生、急に波瀾万丈だなぁ……。


「ハーピーに恐怖したのか……?」

「いえ、何故ハーピーと?」

 私がのほほんとしている間にロザリーさんたちはまた悩んでる。

 いや、私も不思議で……。

「……あ。」


 あれかな?

 また、あれかな?


 私は胸にある兄上さまの鱗を撫でる。

 竜のオーラのおかげかな?

 ゴブリンは序盤のレベルアップ雑魚キャラ……まぁ、現実はそうでもなく厄介な相手だとしても。

 ハウンドウルフさんたちですらひれ伏した、鱗だ。

 ゴブリンが怖がるのも、さてはありますや?


 

 


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[気になる点] はたして鱗の効果なのか ペンペンの正体ゆえなのか
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ