第13話 落下――新たな出会い。
――落ちる。
「ピィイッ!?」
ハーピーさんが混乱してバタバタとやたらと羽ばたいている。
「ハーピーさんは逃げてぇ!」
私が叫べたのは奇跡に近いよ。
ハーピーさんはやっと自由になったんだ。お姉さんたちのところに帰りたいと言っていたばかり。
また捕まったりしたら……。
私は重力に逆らえず落ちていく。もちろんあがいたともさ。
「ぺぺぺ――っ!」
一生懸命、羽ばたいた。
このピンチに私のドラゴンとしての能力が開花しないか。主人公はピンチを得て、真の姿に――そんな甘い設定などは私にはなく。
「受け身!」
もう思考を飛翔から着地に切り替えていた。ハッとしたのはその瞬間。
「ペンギンの身体で受け身てどうとればいいのさー!?」
それは真のペンギンにもわかるまい。
――そして私は地面に激突した。
超有名な超戦士の如きクレーターを作って……。
――不思議だ。生きている。けがもしてないようだ……。
――……ほうっておいた方が良いのではないでしょうか……。
――ですが、この者が落ちてきて奴らは引きました。
――鳥? に、つかまっていましたね。餌として巣に運ばれるところだったのでしょう。
――やはり捨て置けませぬ。安全なところまで世話してやりましょう。
――……ロザリー様がそうおっしゃるなら……私は触れませんわ。
――ええ。しかし、魔物の子供ならば、目が覚めれば自分から逃げましょう。
夢かな。近くで声がする。
夢――起きなきゃ。
ハーピーさんはちゃんと逃げたかな。
なんかまた餌に立場が戻った気がする……。
いや、目が覚めたら夢だったてことはないかな。まだまだここは兄上さまたちの残り殻がある巣で……――。
そんな現実逃避しながら目を開ければ、うっすらとした視界に入ってきたのは赤い糸の束……いや、髪?
きれいな赤い髪。
「お、気がついたか? 大丈夫か?」
私が目を開けたことに人間も気がついたか。
そこにいた人間は、赤い髪と白に近い金色の髪の女性たちだった。
――あ、日本人じゃない。
そんなことをまだぼやけるあたまで考えていた。どうも生前の記憶が強すぎるな、私は。
赤い髪の女性は生前の私より少し若いくらいだろうか。私の日本人な目線からは外国の女性の年齢は難しい。
外国からみたら東洋人は若く見えるというやつがあるけど、私は西洋人の年齢もよくわからなかったんだよね。
たまにものすごい年齢不詳美魔女もいたりするし、その逆に高校生くらいかと思ったら小学生でしたな子もいるし。
まぁ、それはお国問わずか。
だからぼんやりと赤い髪の女性が二十歳半ばで、白っぽい金色の女性が十代半ばくらいかな、なんて考えた。女性というより少女と表した方がいいか。
私はその赤い髪の女性に抱えるように持たれていた。
荷物の用に担がれてはなかったよ。
優しいな、この人。
その持ち方と、雰囲気。私に向ける眼差しから。
この人は狩人じゃないと、私の危機感が言っている。
……だから。
「……あ、はい。お世話かけます。ありがとう」
私はかけられた声に応えて、お礼を言った。
「……。」
「……。」
それからしばし。
私は二人があんぐりとお口、そしてお目々をまん丸にしていることに首を傾げた。
ややあって、二人はわなわなと唇を震わせて――
「「しゃべったァ!?」」
と、驚きなさった。
あれ、もしかしたら……この世界、我らモンスターと人間て会話しない?
さあ、ペンギンの旅が始まります。
ハーピーさんのひっそり必死な、ドラゴン求めてひとり旅も始まりつつ。




