第27話:ハーレム同盟大勝利!希望の未来へレディー・ゴーッ!
忘れ物を取りにアルバイト先へ行くと、すでにミスティお姉ちゃんが届けに向かってくれたという話を聞いて。
それで急いで戻ってきてみると……
「あぁん、真凛ちゃんゲキカワですわ~!」
「はぅぁ~! くすぐったいよ~!」
「ぎゅーっとしちゃいますわ! むぎゅーですの!」
「ミスティお姉ちゃんのおっぱい、おっきくて気持ちいい……!」
「クク……あのサイズには流石のボクも敵わないねぇ。いずれ晴人に、揉んで大きくして貰うとするかな?」
「晴人お兄ちゃんに揉まれると大きくなるのっ!? じゃあ真凛も揉んで貰いたい!」
「だ、駄目ですわ! そんな破廉恥な行為! お姉ちゃんは認めませんわよ!」
なんだか、3人の美少女が楽しそうにワイワイと盛り上がっていました。
これ、どうなってるの?
「あら、晴人君ではありませんの。ようやく帰ってきましたのね」
「お帰り、晴人。君のスマホなら既にここにあるよ」
「お帰りなさい、お兄ちゃーん!」
「あ、ああ。ただいま」
俺は飛びついてきた真凛ちゃんを抱きとめ、そのまま抱えあげる。
そしてとりあえず、みんなの輪の中に混ざる事にした。
「お昼ごはんはミスティさんがお弁当を作ってきてくれてね。みんなでこれを頂くとしようか」
「手作りお弁当なんだよ! 5段重ねで、とっても美味しそうなの!」
「ふふっ、作りすぎかと思いましたけれど。この人数ならちょうど良さそうですわね」
「えーっと? なんだか、俺のいない間にみんな仲良くなったっぽい?」
テーブルの上にお弁当を並べながら、ニコニコしている来夢達。
いや、とても微笑ましい光景ではあるんだけどさ。
急過ぎて、まだ頭の整理が出来ていないというか。
「おやおや。ボク達がミスティさんと仲良くなると、何か困るのかい?」
「あ、いや。だって……ほら、お前はその、アレだろ?」
「ああ、そっか。『お前は俺に惚れているんだから、俺が他所で仲良くしている女は気に食わない筈だろ?』的な事を言いたいのかい?」
「ばっ!? そ、そこまでは言ってねぇよ!」
コイツ、最近になって俺への好意をすっかり隠さなくなりやがったな。
そりゃあ、男としては嬉しいんだけどさ……!
「当たらずも遠からずってところかな? まぁ、君の危惧している部分はあながち間違ってはいなかったけどねぇ」
「すでにそこは和解済みですの。ワタクシ達はハーレム同盟を結びましたので」
「は、ハーレム同盟?」
「うん。この中の誰が晴人お兄ちゃんと結ばれても、恨みっこなし! そして、選ばれなかった人は愛人2号さんと3号さんになるの!」
「……はい?」
急に飛び出してきたハーレムや愛人という言葉に、俺の思考はショート一歩手前だ。
何がどうなって、そんな話になったのか。
「うん? ハーレムは嫌いかい?」
「嫌いとか、そういう問題じゃなくてさ。」
「ワタクシ達は全員、アナタの事が大好きなんですの。ですから、たとえどんな形であろうとも……アナタの傍にいたい。そういう結論に至りましたのよ」
「晴人お兄ちゃん! さんぴぃだよ、さんぴぃ!」
「……!?!?!?!?!?」
「ハハハハハッ! 真凛ちゃん、それを言うならよんぴぃだろう?」
「あ、そうだった。えへへへ」
「……つ、付いていけない! この俺が……!」
猛烈にあばばばばばば!したい気持ちを抑えつつ、俺は心を鎮める。
落ち着け。ここで慌てたって、ロクな事は無い。
「っと、ごめんよ晴人。君を困らせるつもりはないんだ」
「あくまでもワタクシ達の提案は、アナタの気持ちがあってこそ」
「お兄ちゃんが嫌なら、ハーレムも無しにするから」
「……」
そう言って、3人はこちらを見てくる。
そんな彼女達の瞳には、俺に拒絶されたらどうしよう、という僅かな不安の色が浮かんでいる用に見えた。
「……話をまとめると。ここにいる全員、俺が好き……で、いいんだよな?」
「ああ、その通りだよ」
「誰が俺と結ばれようと、残りの2人はハーレムに加わる……と?」
「そうなりますわね」
「……なるほど」
俺はポリポリと頬を掻き、考える。
いや、考えるまでも無い事なのかもしれない。
俺の中で、もう答えは決まっているのだから。
「俺はさ……来夢が好きだ」
「ほぇ?」
「でも、ミスティお姉ちゃんも好きだ」
「あら~!」
「そんで、真凛ちゃんの事も好きだよ」
「えへへへっ……!」
「だからさ。誰か一人を選んだせいで、残りの2人が俺の傍からいなくなる……なんてのは、ちょっと耐えられそうに無いんだ」
「「「!!」」」
「……というわけで、まぁ、その。俺なんかのどこが良いのか、分からねぇし……みんなとは全然釣り合わないかもしれないけどさ」
俺は両手を床の上に突いて、土下座のような格好で頭を下げる。
「こっちからお願いするよ。これからもずっと、俺の傍にいてくれないか?」
「「「……」」」
「みんな……?」
返事が来ないので、俺は遅れて頭を上げる。
するとそこには、涙で顔がびしょ濡れとなっている――美少女達の姿があった。
「ありがとう、晴人! 今日ほど嬉しい日は無いよ!」
「うれじいでずわぁぁぁぁぁぁぁっ!」
「じょいやぁーっ! 我が生涯に一片の悔い無しっ!」
三者三様。喜びを声に出して噛み締めているようだ。
おいおい。喜びはしゃぎたいのはこっちの方だっての。
「なんだか、照れるな。でも、これでお前達と結ばれるのなら……」
「ククク……しかし晴人。まだ君の告白フェイズは終了していない筈だよ」
「ひょ?」
「ぐすっ……ええ、そうですわね。一番肝心な部分が抜けていますもの」
「ここからが本番だよ、晴人お兄ちゃん!」
「どういう事だ?」
この3人の愛を受け止め、めでたしめでたし。
ハッピーエンド……ってわけじゃないのか?
「決まっているだろう?」
「この中で誰が正妻となるのか」
「ちゃーんと決めてもらわないと!」
「せ、正妻っ!? そんなの決める必要があるのか!? だって、誰が選ばれても関係ないって……」
「それは建前さ。正妻を決めないと、色々と問題が起きるじゃないか」
「初キッスの相手とか」
「はわあわわわわわっ! 晴人お兄ちゃんの、どどど、童貞さんを貰うとか!」
「……真凛ちゃん。ちょっと最近、耳年増になっているよね?」
「はぁうーっ! ごご、ごめんなさいーっ!」
そこはともかく、たしかに彼女達にとっては重要な部分なのかもしれない。
という事は……つまり。
「俺が、決めなきゃいけないんだよな?」
「当たり前だろう。ボクは……君にとって一番の女でいたいのさ」
「選ぶのは当然、このワタクシに決まっていますわよね?」
「晴人お兄ちゃん……真凛を一番のお嫁さんにしてくれないの?」
「ぐはぁっ!?」
な、なんだ……この胸を締め付ける痛みは!
俺は、この中から一人を選び出さなければいけないというのか!?
「さぁ、どうするのかな?」
「……ほ、保留で」
「「「…………」」」
「お、男らしくないのは分かってらぁっ! でも、そんな事言ったってしょうがないじゃないか! 俺はまだ、この感情が親愛なのか、異性愛なのかさえ分かってないんだから!」
責めるようなジト目で見てきた来夢達に、俺は半ば逆ギレ気味に反論する。
しかしそんな俺の反応も、彼女達には予想通りだったようで。
「分かっていますわ。だからしばらくは、今まで通りで構いませんの」
「真凛達は真凛達で、お兄ちゃんにアプローチしていくだけだから」
「そうそう。すでにボク達は君に愛してもらえる立場を勝ち取った。後は一番の座を掛けて、互いに競い合うだけなのさ」
「……お、おう」
当人達がそれで納得しているのなら、俺の方からは何も言う事は無い。
「というわけで早速、ワタクシ自慢のお弁当で晴人君を虜にしちゃいますわ!」
「そうはいかないねぇ。ほら、晴人……あーんっ、してあげよう」
「ず、ずるいよ来夢お姉ちゃん! 真凛にもあーんっ、して! 美味しそうなお弁当、早く食べたい!」
「そっちかーい!」
「ほら、このからあげは特に自信作でして……うふふふ」
「くっ!? 少し目を離した隙に……させないよ!」
「……はっ、あはははははっ!」
なんというか、この3人と一緒だといつも騒々しくなるな。
でも、こんな状況が……みんなと過ごすこの時間が、堪らなく楽しい。
もっともっと。いつまでもこうしていたいと、思えるほどに。
「……」
ああ、そうか。
俺がほしかった家族。
団欒の時間って、こういうものだったのかもしれないな。
「みんな……ありがとう」
この日、俺は3人の女の子達と結ばれた。
とは言っても、まだ(仮)なんだけれど……それでも、俺達がこれからもずっと一緒に過ごすという運命は変わらない。
「俺、最高に幸せだ!」
変わらない――筈、だったのに。
「ええ。ようやく見つけました。聞いていた話とは、少し違う印象を抱きましたが」
俺達の暮らすアパートから少し離れた小道に、携帯電話を片手に誰かと会話をしている少女の影があった。
「はい。おばあ様のご命令通り、晴波晴人は確実に捕らえてみせます」
少女は黒い長髪をなびかせ、不敵に笑う。
「全て、この雨宮ひかりにお任せください」
その瞳に宿すのは、愛情か、狂気か。
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