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投稿は初めてに近いです、なお、誤字や意味不明な表現あるかもなのでそこはご愛嬌という事で。
読みにくい、読みやすいなど簡単な感想等頂けると幸いです。
ピッ!……ザザ、ザ
「……さて、白宮 聖君。聞こえるかね?少々窮屈な思いをさせた、今暫くの辛抱だ」
ヘッドフォンから聴こえてきたのは落ち着きのある低い男の声。
若さはなくかといって年寄りとは違う重厚な声は続けて言う。
「少々明る過ぎるかも知れないが、まぁ、すぐに馴れるだろう」
煌々と照らされてたのは無機質なコンクリートに四方を囲まれた部屋だった。広さは10×10メートルといった感じで割りと広く感じられた。
白宮 聖と呼ばれたであろう少年が椅子に拘束されていた。目隠しをされ、ヘッドフォンをつけられて椅子に後ろ手にされ両足は椅子の足に縛られ、まるでこれから拷問もしくは何かの処刑を彷彿させる異様な光景が目の前に広がっている。
そしてもう1つ異変が、その少年の対面数メートル先に男が一人、磔にされているのだ。
「今から君の拘束を解く……目の前のその男は……」
ヘッドフォンから聴こえる声は続いていて、その間に少年は黒服の男二人に拘束を外されている最中。
椅子から解放され目隠しを外した少年は煌々と照らされた照明が眩しいのか、しかめっ面をしながら目を馴らそうとしている。
低い声は少し間を置いて続けた。
「……ソレは、君の姉を殺した男だ」
少年はソレを聴き、理解した瞬間に残光の残る目を大きく見開いた。両の眼を対面に位置する男に向けて。身体中が熱くなるのを感じ頭から爪先まで全身をザワザワとする感覚に囚われ麻痺に近い。思考回路は正常なはずは無く。
「……!!……アイツが、………あの男が!」
一見すると呆けている様に呟いた少年。だが、残光が取れず興奮状態の瞳孔の開ききったその目は、対面の磔られたモゾモゾと動く男に焦点を合わせようとする。
磔られた男は両手を左右に広げられまるでキリストの磔さながらに十字の木に拘束されていた、目隠しをされ猿轡された状態。そして少年と男の間には様々な刃物が散らばっていた、ナイフ、斧、刀、ノコギリといった具合で。
「……白宮 聖君、最終通告だ……今ならばまだ間に合う…」
少年の耳に…もはや届いてはいない、ぼんやりとした視界が治まり男の姿を捉えてしまったから。刹那的に少年はヘッドフォンをかなぐり捨て。
殺す! コロス!
死ね! シね!! 細切れに!
姉さん! アイツが! 脳みそブチマケロ!
仇!! 姉さんヲカエセ!!
少年は憎悪と怨嗟と殺意にまみれて人ではなくなっていた。
瞬間的に刹那的にあらゆる感情の渦を孕ながら直線上にある刃物を両手にし、醜悪な殺意を刃に携えて男に一直線に向かう。
かなぐり捨てたヘッドフォンが地面に落ちるのと同時に少年は男の元に辿り着いた。
ガン! ガ!っ ララララ!……
「……存分にやりたまえ……」
ザザ、ザ!……。ブッ!
ヘッドフォンからは低い声が短く流れて……途切れた。
少し薄暗い、パソコンのモニターの明かりだけが点く部屋でモニターを見ながらマイクのスイッチを切る大柄な男が居た。部屋の中は簡素なデスクと椅子、そしてソファーが一組あるだけ。
「やはり抑えきれませんでしたね。彼」
デスクには対照的に小柄な女性が座っていて、モニターを見ながら大柄な男に声を掛ける。女性の声は知的な印象。男はモニターとは別の灯りが差し込む窓の方へ進みながら。
「人は怒りと云う感情に一番素直な生き物だ、憎しみが加われば理性で留まるものではないし。殺して良いと言われたならば、なおさら……な」
言葉とは裏腹 に、にべもなしと男は窓を覗き込んだ。2メートル程の横に長い窓から眼下に広がる光景は先程の少年を捉えていた。見下ろす形で少年の凄惨な殺意を目にするのだ。一心不乱に刃物を人間の体に叩き込む様は狂気でしかなく常人には視るに耐え難いだろう。加えて少年の裂帛とも怒号とも衝かない声と切り刻まれる男の断末魔の叫びと、正に阿鼻叫喚を呈している。
その証拠に男の横に並びながら先程の小柄な女性が言う。
「もう……宜しいのではないですか?」
眼下の光景に嫌悪感を含んだ言い方。
「やはり……篠原君には抵抗があるかね?」
ピッ!ウィィィ……
篠原と呼んだ女性に問いかけながら窓横にあるボタンを押す。独特な機械音と共にジリリリリ!とベルみたいな音も鳴り、窓が徐々に下から曇っていき、スゥッと壁と同化する様に消えていった。
「耐え難いのが事実です、総理の推し…進めている計画は理解はしてるのですが、目の当たりにすると」
途中詰まりながらも意見を口にする篠原、気分を害したのだろう顔色は少しばかり良くない、口にハンカチを当てていた。
パァーン!……
先程の部屋から銃声の様な破裂音がした。
総理と呼ばれた男は隅にあったソファーにドカッと腰かけて言う。
「何かが変わる為には痛みが必要だ。この国は犯罪に対して余りにも寛容過ぎた、その結果……重犯罪が跋扈し、死刑の執行もままならないときた。誰かがやらねばならんさ」
「しかし、仇討ち法案が決議なされたとはいえ……法の施行には幾つかの改正見直しを要すると決まったばかりです。……現行の殺人の幇助ばかりか、教唆共に抵触します。」
男が淡々と言った後に、篠原は心配するように表情を曇らせながら言う。
「……その通りだ、私は今現在殺人犯と同等だよ。この法律を創る為にこの権力を勝ち取ったまで、事がほぼ済んだ今、もはやなんの未練もない。
あぁ、この事は心配なくとも私自身が権力を使い……事に及んだ事にする。後…」
「関城総理!……総理はやはり実行なさるつもりですか?」
篠原は声を荒げて男の言葉を遮った。何をしようとしてるのかを把握してるのだろう、関城の身を案ずる思いで。
その思いを受け男は柔らかく笑う。
「君には色々迷惑をかけた……後もう少しだけワガママを通させて欲しい。後に残る君達にはちゃんとした法律が出来上がるだろうから。」
「しかし、それでは貴方だけが悪者になってしまいます!」
「世界を変えるには見せしめも必要だからね、私以外の誰かが、では無意味で私がやらねば…な。それにだ、白宮 聖も巻き込んでしまった、赤城君も……そして篠原君……君もな。後には引けんよ。」
そう言って立ち上がり関城は背中越しに伝えた。
「後の事は赤城君と頼む、彼の……あの子を支えてやって欲しい。」
そう言い残し部屋を出た。篠原は一人残されたまま複雑な表情で何を思うのか。
「……」