24話 呆気ない初戦闘
道具屋での一悶着を終え、無事にロープを手に入れた俺たちは、西区の門からフィールドへと足を踏み出した。
目の前に広がる広大な草原。現実世界ではそうそう見られない光景だ。
「おそとー」
「ひろーい!」
きゃっきゃ、きゃっきゃと子供たちは楽しそうに騒ぐ。2人に手を引かれながら、青々とした草原を進んでいけば、遠くに森が見えてきた。
まとめサイトの情報によると、西区の門から行けるフィールドには、小さな村と森があるらしい。村には特産品になるようなものはなく、宿屋と道具屋があるだけだと書いてあった。森には小型や昆虫型のモンスターが多く、フィールドで採れるものよりも、レアリティの高い薬草が採れるそうだ。
因みに、東のフィールドにはやや大きい村とダンジョンがあり、南には村とフィールドボスがいる。北には村と第二エリアへ向かうための転移門があるが、それを守っているエリアボスがいて、ボスを倒さなけれ次のエリアに行けないらしい。まぁ、まだ第二エリアは解放されてないから、エリアボスも出現してないようだけど。
都市から少し離れると、ポツポツとモンスターの姿が見えてきた。
地面に鼻先をつけてのそのそと歩いているのは、討伐対象のワイルドボアだ。名前通りの猪型のモンスターで、ノンアクティブモンスターでもある。こちらから攻撃しなければ襲ってくることはないし、レベルも低いから、戦闘に慣れるための相手としては最適のモンスターだ。
初戦闘になるんだし、まずはルシエルの魔法の威力から見てみるか。
「ルシエル。何でもいいから、あのワイルドボアに魔法を放ってくれ」
「うんっ」
ルシエルは力強く頷くと、ワイルドボアに向けて掌を突き出した。その小さな掌より二回りほど大きな黒い魔法陣が、掌の前に現れる。
「だーくねすぶれっと」
舌足らずな声でルシエルが魔法名を唱えれば、魔法陣から黒い弾丸が射出された。それはワイルドボアに向かって真っ直ぐ飛んでいき、命中。―――直後、ワイルドボアはライトエフェクトを放って、爆散した。
「――――は?」
え、爆散? もしかして倒した? たった一撃で?
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【お知らせ】
ワイルドボアを倒しました。
《報酬》
ワイルドボアの肉×1
ワイルドボアの魔石
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パッとメッセージウィンドウが表示される。
間違いなく、ワイルドボアを倒していた。………ワイルドボアって、こんなに弱いのか?
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【お知らせ】
レベルアップしました。
カーラエル
・Lv.1 → Lv.2
ルシエル
・Lv.1 → Lv.2
ミシェル
・Lv.1 → Lv.2
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続いて、レベルアップの【お知らせ】が表示されたけど、あまりにも呆気なく終わってしまったせいで、戦闘をしたっていう実感がない。そもそも一発で終わってしまったから、俺何もしてないし。……まぁ、レベルアップしたことは嬉しいんだけどな。
「まま!」
褒めて褒めて、とルシエルが俺を見上げてくる。
「あ、ああ。凄いな、ルシエル」
ルシエルが凄いのか、それともワイルドボアが弱いのか。
取り敢えず、ルシエルを褒めておこう。
「ん〜♪」
頭を撫でてあげると、ルシエルは気持ちよさそうに目を細める。
「つぎ! つぎはオレ! オレがやるっ!」
ぐいぐいと俺のローブを引っ張って、ミシェルが主張する。
「わ、分かった分かった。じゃあ、もう少し近付いて、あのワイルドボアに仕掛けてくれ」
「うん!」
ミシェルは威勢よく頷くと、剣を鞘から引き抜いた。




