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水平線上のアルマティア  作者: 深波恭介
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午後の風

 夕暮れ前にアンスリムへ戻ってきたユーリたちはまっすぐ案内所へ向かいカウンターで受付嬢に今日の成果を渡したところだった。


「……あの、なにかあったんですか?」


 ある程度乾いてきていたものの、未だ湿り気の残る服を着ていた二人を見て怪訝な様子で首を傾げユーリが答える前にカゴの中身を見て驚きの声を漏らしていた。


「魔物と遭遇したんですかっ?」


「川沿いで昼を食べようとしてたときに少し」


「そうでしたか……すみません、説明が足りず危険な目に遭わせてしまって……ご無事でなによりです」


 心配そうに胸に手を当てて受付嬢はそっとため息をついていた。


「注意不足だったのはこっちだから気にしないでくれ。それより素材の報酬を頼む」


「かしこまりました」


 結晶は直接魔導屋に持っていって買い取ってもらわなければならなかった。討伐の依頼を受けていればその証として結晶を渡すことになる。個体差によって価値は変わってくるがその辺りを加味して報酬が用意されているので売値より下回ることはなかった。


 そうして受付嬢はカウンターの下から量りを取りだすとカゴの中身を丁寧に計量しはじめた。


「それってなにに使われるんですか?」


「主に金属の精錬などで使用されています。強度が上がるらしいですが……詳しくはわたしも」


「ふーん……回復薬とかじゃないんですね」


「回復薬?」


 きょとんとしながら顔を上げる。ユーリはカウンターの下でアイリスの足を蹴飛ばした。


「いたっ、え、なに……?」


「悪い、足が引っかかった。すみません、こいつたまに変なこと言うものですから」


「いいえ」


 にこりと笑みを浮かべ受付嬢は再び手を動かしはじめた。確実にゲームのイメージで喋ったな。


 間もなくすべてのキノコの計量が終わると受付嬢はまた奥へ引っこんでいきコイントレーに金を乗せて戻ってきた。


「合計で一万二千と二百ディールになります」


「ありがとう」


 思っていたより少しだけ多かった。仕事をしていた時間を考えると充分だろう。


「タナカ様、少々お時間よろしいでしょうか」


「なんだ?」


 受け取った金をナーガに渡していると受付嬢はカウンターの下から一枚の用紙を取りだしてきた。名前を聞いてアイリスが小さく鼻で笑う。


「魔物討伐の依頼をご希望されているということで系列の案内所から依頼書を取り寄せたのですがご覧になりますか?」


「なんの魔物だ」


「グリードドラゴンを十体以上討伐していただきたいんです。場所は少し遠いですが……」


「グリードドラゴンか……」


 場所はアンスリムの西、隣町であるカクテュスに向かう道中にある森だった。徒歩で行くと半日かかるところだ。その名を聞いて小さくため息をついているとアイリスがきょとんとした顔で訊ねる。


「それどんな魔物なんですか?」


「厄介な相手だよ。今日会ったやつよりはましだけど」


「場所も場所ですしもし難しいようであれば断っていただいても構いませんよ」


「……まあいっか。じゃあやります。いいよね?」


 と、アイリスにしては珍しく即断していた。てっきりドラゴンって聞いて怯えるものだと思っていたけど。


「あの、一応魔物ですので過信されるのは危険ですよ……?」


「もっと他に報酬の高い依頼はないのか?」


「申し訳ないんですが、規則ですので……この依頼を終えていただければもう少し難易度の高い依頼を取り寄せられないか掛けあってみますね?」


 受付嬢はそう言って苦笑いを浮かべた。


 まあ、依頼自体が少ないし駆けだしの俺たちに紹介できるのはこれくらいか。とりあえず明日この依頼を終わらせれば三万ディールほどは稼げるのでそれでよしとしよう。


 ひとまず依頼を受けることにして案内所をあとにするとユーリは魔導屋に行くことにした。


「俺は結晶を売ってくるからお前らは宿の部屋を取ってきてくれ。ナーガ、場所はわかるだろ?」


「はい」


「ベッド使うつもりがないんなら二人部屋にしておいてくれ」


「わかりました」


「え、ちょっと待って二人部屋なの? できたら別々がいいんだけど」


「だめだ」


「えぇっ……また一緒の部屋で寝るの……? 男女で何日も同じ部屋で寝るっていかがわしくない?」


「金がないのはアイリスもわかってるだろ」


「そうだけど……でも落ち着いて眠れないよ」


「めちゃくちゃ無防備に寝てたじゃん」


「む……」


「どちらにしても部屋は一つだけだ。嫌なら廊下で寝てろ」


「はあ……」


 あきらめたように小さくため息をつく。彼女なりに気にするところもあるのだろう。けれど仕方ないと受け入れてもらうより他になかった。


「店行ったらそのまま銭湯行くからお前らも来てくれ。そのあとどっかで食事にしよう」


「……そうだね。お腹ぺこぺこ」


「ではまた後ほどお会いしましょう」


 まだ日は高く昇っており夕暮れまではかなり時間があった。一旦二人と別れユーリは魔導屋に向かった。

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