いろいろと種明かし
「で、あなたたちはどうしたいのかしら?」
満を持して現れたのは、金髪に青い目の美しい女性。そして少し後ろに、赤い髪の豪奢な女性。後ろに騎士団長やら宰相やらもいますけどね。
白の聖女様だ‥、白の女王だ‥、断罪の聖女、赤の女王様だ‥、王妃様だ‥。 こんな間近で見られるなんて…
というざわめきがあたりに広がります。
新しく現れた人物を虚ろに見つめたヒロインちゃん、なんだか引っ掛かりを覚えたようですね。ふと見やった先にうちの双子。
何かに思い当たったように目立つ2人の女性に視線を戻して、思わず、
「アリス・ワンダー!? クイーニア・ハート!?」
はい、気付いたね。アリス・ミラー嬢。ええ、金髪の女性、アリス・(旧姓)ワンダー。
現在の『鏡の国での恋物語』の前作ゲーム『不思議の国での恋物語』のヒロイン。そして私たちの母親にして転生者。
ほら、家族って今の私にとって特別って言ってたでしょう。特別ですよ~。同じ転生者。しかもまとも。
ちなみに、赤い髪のハートの女王様は、ラースィー達の母親の王妃様。前作での悪役令嬢ポジの方ですけど…、母がシナリオ無視で好きにやった結果、問題なく当時の皇太子(現国王)と結婚して、他の婚約者たち共々、母の親友(悪友?)。
ええ、ヒロインちゃんへの対処、コネと権力の限りを使って、って言ってましたけど、所詮未成年の女性にいくらチートでもそこまでの権限あるわけないじゃないですか。
ある意味最大のコネのお母様が実質的にはね。同じ転生者って話早いですよね。しかもお互いゲームと認識出来てると。
全力で情報収集や協力要請掛けてくれましたよ。
白の聖女って呼び名から連想できるかもしれないけど、治癒術を極めて、身体欠損や死ぬ寸前のものを回復させたり、ついでに食糧状況改善したりしましたからね。聖女様のためならって(狂)信者があちこちにね。
学園には私の付添いってことで来て、ヒロイン特待生だから、私、特待生だったから懐かしいですわ~部屋ってどうですの~思い出に浸らせて~ ってフリーパスでふらふらと。そしていろいろと。
というか、そもそもゲーム自体がね…。本来のシナリオだと、この舞台は前回より30年後、トランタ王国より始まって、婚約破棄すると、ジャーヴォ帝国に行くんだよね。で、そっちがメイン。
この2つの国、10年くらい前に戦争になってね、シナリオだとトランタは負けて、属国っていうか立場弱くて貧しくなるんだけど…。
何となく察する人いるだろうけど…、身体強化の術ね、系統立てて完成させたのお母様なの。その関係で騎士団にも関わって実力を底上げしたり、モンスター大量発生があったりしてそれを殲滅するために戦術や兵器を進化させたり。他、魔術を組み合わせて効果を増大させる研究とかしたり…。
そしてトランタ王国はジャーヴォ帝国に勝ちましたとさ。国民としてはめでたくはあるのかな…。
ちなみになんだか物騒な呼び名あったでしょう。赤の女王はね、当時皇太子妃だったクィーニア様、本来なら魔力に体が耐えられなくて大した実力無いはずなんだけど…。お母様は何でしたかね? そう聖女。そのフォローを受けて、トップクラスの実力者となり…、当時の戦争で最大火力を発揮。それでまあ、そういう二つ名に。
お母様も1つの術自体の威力は劣るんだけど、趣味で始めた研究の成果で最大戦力となり…、セットで白の女王。
さらにそこから、身分低いのいいことに前線に突っ込んで、ジャーヴォの砦消し飛ばして、城に穴開けたと。
いや、タネはあったらしいんですよ。先に穴掘って砦に行って構造柱のところに爆薬仕掛けたり、術の軌道補正、中継・増幅器を使ったりと。で、エフェクトたっぷりにやらかした結果、白き断罪の聖女…。
そういえば当時、白の改造軍服っていうか神官服っていうかそんな服装だったらしいね。ディアーナのって血筋かな?
で、隠しキャラのバンダース、これ本来ならすっごく性格悪いというかヤバイタイプなんだよね。千夜一夜物語のシャフリアール王みたいな? 我を楽しませよ。さもなくば死ね、的な。
ジャーヴォ帝国って、北方に位置する自然環境の厳しいとこなせいで、力が全てのような全体的に殺伐とした国家。
そこのあまり権力の無い側妃の子だから、嫌がらせは基本。正妃に男が生まれてからは毒殺暗殺にさらされ、性格が歪む。
実力的に皇太子には認められたけど、死ねばそれまで。ヒロインを連れ帰るのも、3人も権力者たらしこんで狂わせたのを面白がってだから、恋はありません。
バンダースのルートは少しでも失敗したら即死亡。いや、奴隷に払下げとかもあったかな。
ちらっと出てきてた救国ルートってのは、帝国に行くと、城で潜入捜査してたレジスタンスの青年と出会うの。それと意気投合して町に出て地下活動して、ジャーヴォ帝国を民主主義に導くと。
ちなみにこれだと、バンダースや他の王族は処刑。
でも本来なら、だからね。ええ、お母様がやらかしましたからね。
10年前の戦争って、当時帝位に就いたばかりの若い帝王が調子に乗って仕掛けてきたんだけど…、女性陣を筆頭に叩きのめされて…、ええ、最終的にお母様、城をちょっぴり崩して帝王を直接脅したそうですわよ。それはそれはにっこりと美しい笑みを浮かべて。
エメロードの性格は此処からか?
なんかそのせいで帝王トラウマになってダメになったらしくって…、え?何ってまあナニが…。それで正妃との弟も発生せず…。おかげでバンダースの生活、割と平和にね。
乙女ゲーム情報が入った後は、お母様がそこそこお気に入りという扱いをしてますから、帝国内でも気遣われて。
本人? 帝王を吊し上げながら微笑んでるお母様見て一目惚れしたそうで、ワンコのごとく懐いてましたよ。おかげで隠しキャラにもあっさりなって。
ええ、お母様が勧めたんですよ。私ではなく。
変身グッズもお母様謹製ですよ。顔が売れている分、隠密行動するのに作ったそうで。ちなみに渡したのは、結界・治癒・状態異常回復付。魅了とかあっても対抗できるはず。
そもそも乙女ゲームの世界で2作目に入ってるっていうの、バンダースに会って気付いたんだもの。
お母様は前作だけしかプレイしてなくて、2作目は出てることしか知らなかったからね。
王子たちは名前憶えるほど出てきてなかったし。年が近いからって王城で引き合わされたんだけど、黒髪はともかくオッドアイってそういないし。とはいえあの人格破綻者が、幼いとはいえ、お母様に気付くと、ぱっと表情を明るくして子犬のようにまとわりついてるの見た日には、信じられなかったけど。
それでお母様と情報交換して状況確認したら…
お母様… 2作目、始まる前に終わってますわね…