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ざまぁ(階段落ち)

 さあ、それでは仕込みを回収していきましょうか。いわゆる「ざまぁ」ですわね。


「彼女が階段から落とされたという時間、私と妹たちは、彼女たちと第3マナー室にいましたわ」

 ここでまず名を上げたのは、平民や下級貴族に属する、あまり裕福ではない子たち。ふふ、せっかくの楽しみですもの。少しずつ味わせてもらいましょう。


「は? 彼女らでは侯爵令嬢たるお前に脅されれば、事実でなくともそうは言えまい」

「いかがですか? どう言われているか分かりませんが、真実を語っていただけるなら、私どもがお守りしましょう」

「そうだ。それにお前たちはいつもの部屋にいたと、なのに階段での目撃証言も」

 やっぱりそう来ますわね。


「目撃については分かりかねますが、いつもの部屋にいたという件についてはお詫びしておきましょうか。私から貴方方には内緒にしておくよう口止めをしておりましたの」

「は?なぜそんなことを」


「私が<カレイド>というドレスや装飾を扱う店に関わっていることはご存知ですわね? そしてこの卒業パーティは、一年で最も華やかな行事。

 ええ、友人たちとのお茶の時に、この場で着るドレスの支度が間に合わない、という方のお話がありまして。よろしければうちから提供を、と皆さんに声をかけてみましたの。

 そしたらそれなりに人数が集まりましたので、その日だけでなく1週間くらい第3マナー室をお借りて皆さんのドレス合わせをしておりましたの」


 ちなみに第3マナー室とは、ヒロインが落ちた階段とは別の棟にある部屋です。実技をするのでそれなりの広さがあり、お茶の支度もできます。ダンス室も近く、ドレスを抱えた人間が入って行っても不信がられないし、王子たちの行動範囲とは離れてます。


 あと遠まわしに説明しましたが、ぶっちゃけると経済的にドレスを準備できない方に、わけあり品でよければうちのレンタルしましょうか? という話です。とはいえレンタルは無料で装飾だけ買い取りを基本にしましたけど、着回しの効くタイプのドレスをサービスでその人に合わせてリメイクすることにしたら、皆さん買い取ると。まいど~。

 初任給1月分くらいですから安くはありませんけど、ブランドと質を考えるとお得ですからね。3年ローンまで承ってますよ。新品の個人オーダーは桁が違いますから。


「アリスや俺たちにはそんな話は来てないぞ!」

「ええ、アリスさんにも本来でしたら声をかけるべきなのですけど…」 ちらっ

 ヒロインちゃんを見ます。ピンクのフリルやリボンをいっぱい使った可愛らしい新品のドレスを着た彼女を。


「声をかける前に、殿下がプレゼントされるという話が耳に入ってきましたの」

 ええ、うちの店の人間から。いやぁ、ラースィーって、私は勝手に用意してたからこういうことにうといし、うちくらいしか知らないから何も考えずに頼んだんだろうけど… 言ってきた人、困り果てたたからね?


「だからといって、彼女をのけものにするのか!」

 (はぁー、やれやれ)さすがに、バカすぎる主張なので、あからさまにため息をついて首を振って見せます。逆上して文句を口に出す前に、目力を込めて一睨み。よし、黙った。


「殿下、私が提供するドレスは、あくまで好意の範疇ですから、やはりその人に合わせて作った1品物よりは落ちますのよ。

 あと、女心を分かっておりませんわね。たとえ似合わなくとも好みでなくとも、好きな方から贈られた、ということが、恋する女にとって何より嬉しい事なのですわ」


 ちょっと、似合わなくとも好みでなくとも、のところを強調してみると、ラースィーがヒロインの方を不安げに見る。


「大丈夫ですわ。好みは分かりませんが、今の彼女の可愛さを最大限に引き立て、この場で輝かせる最高のドレスですわ」


 うん、私が作ったんだから。ゲームで着てたはずのドレスに、外見で分からない程度改良して。

 ゲームの中で私に似たヒロインが着飾ってたの、こんなの作りたいなあ、でも私ならもっと、とか思ってたからね。けっこう覚えてるよ。多分ヒロインよりは。それぐらいの眼福はいいよね。


 あ、ちなみに最高って、嘘は言ってないけど… ピンクでフリフリだからこの世界だと着られるの10代が限度? 町レベルのパーティーだと浮くし、正式な舞踏会には可愛らしすぎるシロモノ。パートナーも選ぶよね。この場ではこの上なくヒロインだけど。


「ですのに、そこで私がドレスを勧めればどうなるかお分かりかしら」

「『お前ごときが王子からプレゼントされたドレスを着るなどおこがましい。お前ごときにはこれで十分です』と言ってると思われかねませんわ。というか普通はそうとりますの。

 かといってこの話を知られれば一応勧めないわけにもまいりませんし」


「ということで、全面的に耳に入らないようにしてもらいましたの。

 なお皆さんのドレス選びには、マナーの教授のライン夫人と歴史文化教授のユニー夫人にも手助けいただきましたわ」

 ええ、内緒にするのにも一役ね。そもそも教室使うのって教授の許可と場合によって監督いるから。


「ええ、私たちが監督をしながらアドバイスもさせていただきました」「ええ、第3マナー室で」

「はい。卒業パーティーにふさわしいデザインや装飾をアドバイスいただき、ありがとうございました」


 教授たちは王族が通うこともある学園の教授だけあって、それなりの家柄です。侯爵家の令嬢であっても脅しや買収はまず無理。厳しいですが話は分かる方なので今回お付き合いいただきました。


「し、しかし…。そうだ、途中で席を外したりはしなかったか?」

 それなりに事実は認識したようですが、往生際が悪いですわね。まあ、こちらにもまだ切り札がありますけど。

「……。 ええ、たしかに途中で外しはしましたが…」

「ほらみろ! やはり 」


「ラースィー、それはこの兄が、コランディア嬢がその御嬢さんを突き落としに行くのを見逃し、庇っているとでも言うのかな?」


 第二王子のトーヴ殿下が現れました。金髪に青い目の、少々地味ですが整った顔の、第一王子共々、人格能力的に問題の無い方です。

「兄上?それはどういう?」

「教授たちがいなかったときは、私たちが彼女たちといたということだ」

「なぜですか?」

「うん、ドレス選びに男性の意見も欲しいということで、友人たちと一緒にね。彼女たちと選びながら話しているうちに、この場でのパートナーとなった者もいるが」

 と、見やった先には初々しい少女と少年のカップルが。


 ええ、彼が彼女に好感を持っていると言うのは分かりやすかったので有名でしたわ。彼女も彼のことを悪くは思ってませんでしたが、彼の方が草食系といいますか煮え切りませんでしたのでね。

 あの場に彼をお呼びして、プレッシャーをかけ、いえ、後押しをして申し込ませましたわ。彼女がつけてる髪飾り、その時にプレゼントされたものですの。

 ドレス姿を見て真っ赤になってわたわたしてる彼に、彼女が、気に入ったけど値段が、と見ていたものを教えて。


 彼は第二王子のご友人でしたので、本命のあの日に彼女を入れて、第二王子にこの話を持っていきましたの。口実の段階では不思議そうでしたが、彼と彼女の名前を出すと、一瞬で理解して乗ってくれましたわ。

 もちろん他の日の方にも、男性の意見は聞きましてよ。相性もリサーチの上、それなりに身分の高い相手を入れて。

 パートナーも何組か決まりましてね。若いっていいですわ~。


 さて、教授と王族によるアリバイ保証ですわ。これ以上文句がありまして?

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