侯爵家双子姉妹
「まあ!その方が殺されそうになったとは怖ろしい事ですけど、私には全く身に覚えがないことですわ。
何の証拠もなしに犯人扱いされて、そのような根拠のないことを理由に婚約破棄と申されても?」
とりあえず身の潔白を王子たちに主張してみます。目的は別ですけどね。
ここで意味の分からないことを言っている子供に言い聞かせるように話しかけるのがポイント。
まずは、ヒロイン。 逃・が・さ・な・い。
「ふざけるな!確かにお前に突き落とされたと本人が言っているんだ!」
あははははー、いや、言ってませんから。ヒロインちゃん表情は崩してないけど一気に顔色悪くなってますから。
いやぁ、攻略する分にはチョロイですけど、その分コントロールするにはやりにくいんですよね。私?まあ一応10年以上の付き合いですからそれなりに~。
王族が衆目の中で断言しちゃってるけど、いつも発言に伴う責任やその影響力を考えろって言ってるし、私は悪くないで~す。
「そうだ!彼女が突き落とされた時間に、お前たちがいつものように姉妹で閉じこもっていたことはみんな知っている!」
「なのに階段の近くで貴女の姿が目撃されてます。どういうことでしょうか」
「しかし姉上が彼女を殺そうとしたということなどはありえないな」
ここで我が妹(上)、ディアーナの参戦。といっても本人は単に分かり切った事実を述べているだけでしょうけど。
「は? そんなことをするような人間ではないとでも言いたいのか? 信じられるものか!」
それに、婚約者であるルディーがますますのエキサイト。
「いや? 姉上が殺す気なら彼女が生きていることはありえない。落とした後に3秒もあれば止めを刺せよう。
それとも彼女が落ちてから即座に駆け付けたのか?」
「い、いや…」
微妙に青ざめて顔を見合わせる婚約者ども。うん、まあ事実だし、可能ということは知ってたはずなんだけど…。
「それとも奇跡的に息を吹き返したのか?しかしそれにしてはダメージは残っていなそうだしな。治癒術は誰が?」
アリス嬢をしげしげと見つめながら、さらなる追い討ち。うん、単なる天然発言なんだけどね。
「な、ならば脅しだけのつもりだったんだろう!」
「それならば他の方法をとりますわ。直接手を下し、しかし警告だからと殺さず、生かしておて殺人未遂を証言されるなど何の意味がありますの?しかも階段から落とすなど、殺す気はなくても死ぬかもしれませんのに。
脅しというのは目的のためにするものでしょう。貴方がたとの交流が目障りなのならば、それで泣き付かれるなど逆効果ですわ」
今度は、妹(下)、エメロード、言いがかりをさっくり叩き落とす。
ちなみにお気づきでしょうか。この子、そんなことやらないとは言ってません。やるならもっと効果的にやると言っています…。
改めて我が妹たちのことを紹介させてもらうと、
侯爵家次女のディアーナ。金髪に青い目の凛々しい美少女。
今はさすがにドレスを着てますけど、普段は軍服モドキで騎士の訓練に混ざってます。平たく言うとリアルオスカル…。喋り方もね。
とはいえこの国、女性の騎士や兵士も一定数はいますので、そんなに変ってわけではないです。子供の頃はカワイイ服着てくれてたのにな~
ちょっぴり脳筋寄りで、必要と理解してはいても貴族らしいやりとりは少し苦手。のわりには意外と天然に撃退していたり。無自覚にいろいろ助けたり憧れられたりで、お姉さまと慕うファンをホイホイ中。
すでに騎士団の部隊長クラスの実力はあり。まだ伸び代はあると思いますし、方向性を決めてこのまま研鑽していけば、いずれ二つ名持ちにもなれると思っています。(ちなみに、国によって一軍に匹敵する実力者と認定されたり、国家レベルの成果を挙げた者は、二つ名を貰っていろんな特権を受けることができます)
侯爵家三女のエメロード。金髪に緑の目の嫋やかな美少女。
ディアーナとは双子なのに、性格は正反対。こっちはまさに貴族の女性。手芸が趣味で、私もいっしょにやったり店にも連れてったりしてたんだけど…。
にこにことすぐにみんなと仲良くなるのはいいんだけど…、え? ちょっといつの間に私の情報網、掌握しちゃってんの? 困った方がおりましたので対処しておきましたわ~、とか、えええ~っ?
前世とか無いはずなのにこれって、産まれながらの貴族ってコワイ。戦闘はちょっぴり苦手なのはもはやご愛嬌。防御にはそれなりの能力あり。