清潔を保つ為なら労力はとはない勇者(ばか)
「フゥ。気持ちがいいな」
川の水を手で掬い顔を洗う。
冷たい水が身も心も癒してくれる。
「カルロ。お前もどうだ。気持ちがいいぞ」
「ああ。もう少しで終わるよ」
カルロは少し離れた所で座っていた。
「何だ。まだ磨いているのか?」
「いや。それはもう終わった」
「ではどうした?」
ルシはカルロの方へ近寄る。
「・・・何をしてるんだ?」
「見ればわかるだろ」
火の上で鍋の中の水を沸かしていた。
「朝食か?」
「違う。殺菌してるんだよ」
「・・・・・・殺菌?」
「ああ。水にも菌はいるからな。熱湯にして殺さないと顔も洗えねぇ」
「そこまでする必要があるか?」
「え?しないのか?」
驚きの表情でカルロはルシを見た。
「普通はしないぞ」
「・・・皆汚れてるな」
「お前が異常なだけだ」
鍋が沸騰しグツグツ煮えだした。
「もういいかな」
カルロは鍋を火から遠ざけ鍋の湯を冷ます。
「面倒ではないか?」
「面倒なんて思ったことはないな。清潔を保つのには必要な事だ。・・・出来ればろ過もしたかったが・・・持ってくればよかったな。ろ過装置」
「それなら魔法を使えばいいだろ。あれなら菌もいなし」
その発言を聞いたカルロは真剣な表情になり
「ルシ。お前はわかってない。そんな簡単に出来た綺麗で清潔なもの喜ぶと思うか?許される行為だと思うか!?」
「私は嬉しいし、許せるが?」
「馬鹿なことを言うなよ!許される行為じゃない!目を覚ますんだルシ!!」
「先ほど顔を洗ったから覚めてるぞ」
「クソ!もう手遅れか!!」
「何がだ?それよりもちょうど火もあることだし朝食の食料でも調達してくるか」
「ルシ!まだ話は終わってないぞ!」
「カルロ。川から魚を捕っておいてくれ」
「・・・・・・わかったよ。あ、もうお湯冷めたかな?」
「戻ったぞ」
「おかえり」
「色々といい物が採れたぞ」
ルシは袋に入れていた食材を取り出した。
「お~結構な量が採れたな」
カルロはその中身を見て喜んだ。
「そっちはどうだ?」
「ああ、ちゃんと釣ったぞ。今火で焼いてるところだ」
「そうか」
「え~っと・・・ウサギに、木の実に山菜。それにこれは野いちごか。なつかしいな!・・・ん?・・・なぁルシ」
「どうした?」
「これは何だ?」
カルロが指をさした。
「キノコだが。それがどうし・・・あ、そうだったなお前はキノコ苦手だったな」
その言葉を聞いてカルロの震え始めた。
「苦手とかそんなもんじゃない!これは食い物ではない!」
いきなり怒鳴りだした。
「何でこれを採ってきた!これはカビじゃないか!!」
「カビではないぞキノコだ。毒キノコでもない普通に食べれるキノコだぞ」
「いいや!これはカビの塊だ!!なんておぞまし姿をしているんだ・・・」
後ずさるカルロ。
「キノコを見ただけでここまでなるとはな・・・」
呆れ果てるルシ。
「この森は駄目だ。・・・燃やそう」
カルロは詠唱魔法を唱え始めた。
「やめんか。この潔癖馬鹿」
カルロの頭を叩く。
「だって、だって、だって!!」
今にも泣きそうな顔でこちらに顔向ける一人の大人がそこにはいた。
「子供かお前は。・・・確かにカビではあるが体にいいぞ。見掛けだけでそこまで拒絶するのは良くないな。・・・ほれ」
ルシはカルロの口にキノコを無理やり入れた。
「ムゴ!!?」
「安心しろ。生でも食べられる。よく噛むんだ」
吐き出そうとする口を手で押さえて阻止する。
「ムガ・・ムム・・・フガ!」
「少しはその性分を治せ」
「・・・・・・」
「うまいか?」
「・・・・・・」
「・・・気絶したか・・・」
「・・・ん」
「気がついたか」
「・・・俺は一体・・・あ」
朦朧とする頭で記憶を思い出した。
「思い出したか。その、すまなかったな」
そう言って俺に頭を下げる。
「お前がここまでキノコを嫌いだとは知らずに・・・」
誠意の篭った謝罪が伝わる。
「・・・あ~・・・もういいよ。だけど、次はしないでくれ。それと俺にはキノコを入れないでくれ」
「ああ、わかった。そうだ。今朝食が出来たんだ。食べるよな?」
「ああ。頂くよ」
「では、皿に入れるぞ」
「あ、ちょっとタンマ」
ルシが皿にスープを入れようとしたのを止めた。
「どうかしたか?」
俺はルシが持っている皿を取り上げ
「おい。何をすr」
「綺麗に洗ってから使わないと駄目だろ?」
俺は川の水を鍋に入れ火にかけた。
「・・・・・・」
「ふんふんふ~ん♪」
「・・・・・・ハァ」